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消えた治癒士への執着は棄てて下さい  作者: みん


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19/45

19 聖女ナナカ①

「聖女様、お待ちしておりました」

「え?」


私の目の前には、恭しく頭を下げている人達が並んでいる。


ーここはどこ?ー


私が居たのは病室のベッドの上だった。

ずっと入院生活が続いていて、1週間前から体調が悪化して起き上がる事ができなくなった。


七菜香(ななか)、しっかりして」

「姉ちゃん!!」

「…………」


私の名前を呼んでいるお母さん。いつも生意気だった弟が、今は泣きながら私を呼んでいる。返事をしたいのに、声を出す事すらできない。


ーあぁ……もうダメ……なんだー


高校生活を楽しみたかったのに、入学前に入院。まだまだこれからだったのに。まさか、親よりも先に逝く事になるなんて思わなかった。


ーごめんなさいー


「「七菜香!」」

「姉ちゃん!」


そうして、私は静かに目を閉じた───








はずなのに、目が覚めると、そこはお城のような綺麗な大きなホールの真ん中にある台の上だった。


それは、まさかのラノベ展開だった。


もともと、私の体が適応するのはこの世界だったらしい。それが、違う世界で生まれてしまった為、身体が適応できずに早逝したと同時にこの世界に召喚された。


「貴方には光属性の魔力があり、ネアン女神様により、聖女として召喚されました」



私はラノベ王道の、女神に選ばれた聖女だった。


それからは、夢のような時間だった。

病気で体が不自由だったのに、体が軽くて自由に歩けて魔法まで使える。魔法は教えてもらうと、特に困ることも無く扱えるようになった。


「流石は聖女様」


と、皆が褒めてくれる。褒めてくれるのが嬉しくて、人を助ける事ができる事が嬉しかった。だから、『この世界の亀裂を浄化して欲しい』と言われた時は、勿論喜んで受け入れた。

そうして、私に魔法の指導とこの世界でのサポート役として紹介されたのが、治癒士のジルダ=イデリアルだった。


ー魔法の指導役なのに、何故治癒士?ー


と疑問だったけど、ジルダさんはただの治癒士ではなかった。勿論、治癒士としても優秀だった。それ以上に、二つの属性の魔力持ちで、魔法の扱いも魔道士並み……以上の実力者だった。おまけに伯爵令嬢で、この国の王太子の婚約者。でも、容姿は……普通。カラフルな緑色の髪には驚いたけど、水色の瞳は綺麗だなと思った。


ジルダさんは優しかった。あまり表情の変化はないけど、私を見る目はいつも優しくて、こんな人がお姉ちゃんだったら良いな──と思っていた。



本当に、そう思っていた。







「聖女ナナカ、ここでの生活は慣れて来た?何か、不便な事や困った事はない?」

「あの……大丈夫です。ありがとうございます」

「困った事があったら、いつでも私やジルダに言ってくれ」


ノーザンディア王国の王太子セオドリク様。私と同じ黒髪だけど、瞳はハチミツみたいな金色。高い身分の王太子なのに、偉ぶったりする事がなく優しい。特に、婚約者のジルダさんを見つめる目が甘い。ラノベだと、王族の婚姻は政略的なものが多いけど、この2人は純粋に思い合ってるという事が分かる。


ー羨ましいー


私も、普通の高校生活をして恋愛もしたかった。


「あ……」


ー『したかった』じゃなくて、『今からできる』んだー



そう思ってからは、色々と早かった。

私はそれなりに可愛い容姿をしているようで、私がにこにこ微笑んでいると、色んな人が私の周りに集まるようになった。聖女というのは特別な存在でもあるから、私に敵意を向けてくる人も殆どいなかった。


恋愛というものが、どんなものかいまいち分からなかったけど、私が憧れているのは王太子様とジルダさん。


ーあの2人みたいに、お互い想い合って優しい時間を過ごしたいなぁー



2人は、私にとって憧れだった。




本当に、憧れだけだった。








「もう少し早く召喚されていたら、殿下の婚約者は聖女様だったかもな」

「まぁ、今のジルダ嬢も能力的には問題無いんだろうけど……冷たいっていうか……」

「それに比べたら、聖女様は可愛いし、何と言っても聖女だから、聖女様が将来王妃にでもなったら、この国は安泰だよな」


「…………」


城内を1人で歩いている時に、偶然耳にした騎士数人の会話だった。休憩中のようで、人気の少ない回廊で、騎士達も気が緩んでいたんだろう。殿下や女官達に聞かれると罰せられるような話をしていた。


ー私が、王太子様の婚約者?王妃?ー


想像した事もなかった。私は、二度目の人生を歩めている事だけでも幸運だと、女神様には感謝していた。


セオドリク様


彼は王太子でジルダさんの婚約者で、でも、私の憧れで───


もし、私がもっと早くこの世界に来ていたら、王太子様の婚約者は私だった?ちゃんとこの世界で生まれていたら、聖女として生まれて、病気で苦しむ事もなかった?

私の生まれる所が間違ったのは、女神様の失敗なのに?


「本当は、私が手に入れるものだった?」


ジルダさんはただ、私が居なかったから、代わりに選ばれただけ……じゃないの?

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― 新着の感想 ―
その考えはダメだよね。 今までの人生を否定することになってしまう。
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