17 忠告
*ルベール視点*
『それ以上、ジルダに関係する詮索はやめなさい』
「「「っ!?」」」
「誰だ!?」
いち早く反応したのはアーニー。ラドルファスを護るように前に出て剣を構えている。
その剣の先には、琥珀色の髪と瞳をした女の子が居た。
ーどこから入って来た?ー
この邸は、バズラス王国の王子ラドルファスが借り上げている邸。傍から見ると普通の小さな民家だが、幾重にも結界が張られていて、そう簡単に侵入できないようになっているはずだ。使用人も限られた者だけで、今はこの部屋に近付かないように言ってあった。
扉が開いた音すらしなかった。
「ジルダを探すのはやめなさい」
「嫌だ──と言ったら?」
「やめさせるだけよ」
「「「「っ!!??」」」」
その女の子が目をスッと細めると、体がズンッと重くなり動けなくなった。
ーどう……なっているんだ?ー
ここに居る4人ともが床に膝をつく。声すら出せない。
「安心して。貴方達を始末するつもりはないから。ただ、ジルダに関する事から手を引いてくれるだけでいいの。ジルダの事を本当に思っているなら」
ーその言い方だと、やはりジルダは生きているという事か?ー
もしそうなら、何故手を引かなければいけないのか?ジルダは、何かに巻き込まれているのか?それなら、ジルダを助けなければいけない。手を引くわけにはいかない。
グッと力を入れて顔を上げて、目の前に居る女の子に視線を向ける。
「流石は、この世界の大陸一の魔道士と言ったところね。でもね、それでも今はまだ動いてもらっては困るのよ。彼女を……助けたいと言うのなら」
ーやはり、ジルダは生きているのかー
「今はまだ貴方達にできる事は無いわ。ただ、“ジルダを大切に思っている”という事は分かったわ。あの者達と違ってね」
「「「「…………」」」」
「時がくれば、貴方達には手を貸してもらうわ。それまでは、大人しくしているように。でなければ──」
と、その女の子は部屋全体を青色の火で包み込んだ。
『跡形もなく……消すだけよ』
その青色の火が大きく膨らみ、熱さに耐えられず身を屈めた──が、それは一瞬の事で、気付けば青色の火も女の子も消えてなくなり、体も普通に動くようになっていた。
「あれは……一体…………」
珍しい青色の火。あれは、リヴィアンナと一緒に居るミツが扱っていたものと同じだった。という事は、今の女の子もミツと同族である可能性が高い。あのミツも、かなりの手練だと思っていたけど、それ以上だ。大陸一と言われている俺ですら何もできなかった。それほどの者がジルダを護っている。
「あれは、ただの獣人じゃないですね。ミツさんどころの比じゃないですよ」
アーニーの顔色は真っ青だ。
「そうだね。俺達が動いた方が危険になると言われたなら、一旦引いた方が良いだろうね。それに……やっぱり生きてるという事が分かった。今は、彼女達に任せておこう。きっと、俺達では何もできない何かがありそうだから……」
ホッとしたような、悔しいような複雑な表情をするのはラドルファス。
「青色の火………」
何故か、青色の火が気になっているマサト。
「とにかく、分かった事は、やっぱりジルダは生きているという事と、今は動くべき時ではないという事と………」
“リヴィアンナがジルダだ”
という事だけど、これは口に出してはいけないと、本能が訴えかけている。それは、ラドルファスとアーニーとマサトも感じているんだろう。誰もがそれを口にする事はなかった。
「ミツさんと今の女の子が居るなら大丈夫でしょう。俺達よりも……」
それはそれで、複雑な思いはあるが仕方無い。ジルダの安全が最優先だ。
ージルダが生きているー
それを確信できただけで、心が少し明るくなり軽くなったのは確かだ。
“あの者達”とは、ジルダが姿を消した──ジルダを危険に追いやった者が複数居るという事だ。真っ先に思い浮かぶのは、王太子セオドリクと聖女ナナカ。
王妃は何も知らない様子だったが、国王は“ジルダを護る為に死亡判定を早めた”とも“目障りだから消した”ともとれる。
ジルダの存在を知られてはいけない。とは言え、“リヴィアンナに近付くな”とは言われていない。彼女はあくまでもリヴィアンナだ。効能の良い塗り薬を生産販売している薬師リヴィアンナ。見た目は全く違うのに、何となく興味を惹かれるのだから、これは──
ー認めるしかないなー
認めてしまえば後は簡単だ。
婚約者だった王太子は、聖女ナナカと結婚したから、特に問題は無い。ならば、俺は俺で落としにかか──距離を縮めるだけだ。
「ルベール、分かってると思うけど、動き過ぎると消されるからね?」
「分かっている」
「本当に、気を付けて下さいね……」
「?」
俺が何を考えているかを分かっているラドルファスとアーニーは顔を引きつらせ、分かっていないマサトは不思議そうな顔をしていた。




