15 ルベールの考察
*ルベール視点*
「リヴィアンナを見て、どうだった?」
「見た目も魔力もジルダとは全く違っているのは確かだな」
見た目は何とか変える事はできても、魔力まで変える事は不可能。その魔力までもが違う。それに、ジルダの魔力はもっと強いものだった。
あのリヴィアンナと言う者の魔力は弱々しいもので、おそらく属性も一つだろう。ジルダとは全く違う。違うが───
ーあの瞳は……ジルダと同じだったー
怯える事もなく真っ直ぐに向ける視線。媚びる事は一切ない。意志のハッキリした瞳。
「迷惑がっているという事は分かった」
「そりゃあ、王子と英雄と公爵まで揃ったら、嬉しいよりも迷惑になりますよね……あのミツさんの威圧が、今日は更に凄かったですよね……」
遠い目をしているのはアーニー。そのアーニーの言う通り、ミツとかいう者は普通の獣人じゃない。俺と同等?ほどの魔力のような力を持っている──感じがする。それに、あの青色の火は初めて目にした。
「リヴィアンナと言い、ミツと言い色々と気になるところだな……」
あの森に関してもだ。
「暫くここに滞在するか……」
「あー……問題は起こさないようにして下さいね……」
と、アーニーが呟いた。
そうして、俺はラドルファスが借り上げている小さな家に滞在する事にした。
王都とは違って夜にもなると人通りは無く、街灯も少ないせいか、より一層暗闇が深く感じる。朔の日が近いせいもあるだろう。
朔の日は、魔力が少し弱くなる事がある。特に、聖女特有の光属性の魔力は影響を受けやすい。ナナカもそうだった。そうだったはずが、旅が終わってからは影響を受けていないようだ。それは何故か?
本当は、光の魔力を失っているからでは?
そうだとしたら、今のナナカの魔力の弱さに納得だが、それならどうして、失った今でも弱いながらに治癒ができるのか?そこで、ふと気付く。
ーナナカは、病気を治癒していたか?ー
力が弱くなったからと、毎日ではなく、1日数名の怪我人を治癒していた。怪我の治癒は水属性でもできる。病気を治癒できるのは光属性だけ。でも、ナナカは水の魔力は持っていない。
「アウイナイト………」
ラドルファスとアーニーが、アウイナイトから感じたというジルダの魔力。
「そう言えば、王太子宮にネズミが出たそうだ」
と告げると、ラドルファスがニコッと笑う。
「どうだった?」
「どうやら、王太子夫婦の部屋の奥に、何かを閉じこめているみたいだね。何かまでは分からなかったみたいだけど」
夫婦の部屋で、新たに結界を張り直したとなれば、それ以上調べるのは難しいだろう。
「でもね、ソフィアから手紙が届いたんだ。ルベールも読んで良いよ」
何故ソフィアから?と思いながら、差し出された手紙を受け取って読む。
なんと、ソフィアは結界を張り直した後、気になるところがあったようで、結界の定着具合の確認をするという名目で、再度王太子宮に向かい、王太子夫婦の部屋にリサーチをかけたようだ。その結果が──
“部屋の奥に、精霊らしき気配アリ”
「ナナカが、精霊と契約したという話は聞いた事がない」
「うん。それに、契約していたとしても、契約している事を隠す必要はないよね?」
妖精や精霊と契約できるのは稀な事だ。魔力が強いから契約できる訳じゃない。妖精や精霊に選ばれて初めて契約が成り立つ。そもそも、誰もが妖精や精霊が見える訳でもない。ナナカも聖女ではあるが、妖精や精霊は見えていなかった。妖精や精霊を見る事ができていたのはジルダだった。
「ジルダは、精霊と契約していたよね?」
ラドルファスの問いかけにこくりと頷く。精霊と契約している事は周知の事実だが、実は、ジルダは二つの異なる属性の精霊と契約を交わしていた。それこそ稀な事で、色んな意味で危険だからと極秘扱いになり、そこから王太子との婚約が決まったのだ。
「その精霊が、アウイナイトに閉じ込められていたとしたら……結婚式の時に、ジルダの魔力を感じた説明がつく」
契約を交わすと、同じ魔力になるから。
ただ、それが本当だとすると、違う疑問が出てくる。
どうして閉じ込めているのか?
もしジルダの精霊なら、ジルダの生死を確認できるのに、ナナカはそうしなかった。
契約を交わしていたジルダが、精霊をアウイナイトに閉じ込めるはずがない。精霊もまた、ジルダの危機にジルダから離れるはずがない。
「そのネックレスを直接触れて確認できたら、きっと何か分かるんだろうね」
もし、本当にそのアウイナイトにジルダの精霊が閉じ込められているとしたら──
ー大暴れする未来しか見えないー
ジルダと契約を交わしていた精霊達は、おそらく上級。しかも、ジルダに過保護すぎるほどの過保護だった。そのジルダを危険に晒したとなれば───それに、聖女ナナカが関わっていたとしたら──
なんて考えていると
『それ以上、ジルダに関係する詮索はやめなさい』
と、どこからともなく、酷く冷たい声がした。




