第1話:『現実世界から』
君は異世界を信じる?
何故、こんなことをいきなり問うのか。
これについては深い意味はない。
正直なところ、私がそう望んだからだ。
1人の人間の、ちょっとした独り言だと思って聞き流してくれて構わない。
キーンコーンカーンコーン
放課後を告げる鐘が鳴る。
鐘が鳴ると同時に各教室から生徒たちがぞろぞろと出てくる。
「今週も終わった〜っ」
少年は教室を出て軽く伸びをする。
『一条零士』という少年は普通の学生だった。
これと言った特徴はなく、身長は平均的、体格はゴツいわけでも細いわけでもなく、ちょうどいいくらい。容姿も『まあまあ悪くはないけどあんまパッとしないよねー』レベルで、言ってしまえば“どこにでも居る男子高校生”のような雰囲気だ。
すると、隣を歩いていた友人が声を掛けてくる。
「おーっす、今週はこれで終わりだな」
「ということで帰ったらゲームな」
この少年は『佐藤圭介』。零士の高校でできた友達の1人だ。
こちらも零士同様、突出した特徴はないが、『クラスの盛り上げ担当』のような立ち位置である。
「あー、いいよ」
「なんだそのダルそうなノリは」
「ダルノリ?」
するとそこに別のクラスから合流した友人もその話に乗ってきた。
「ポケモンかよ」
この少年は『高橋創真』。学年の中でイケメンに分類されるような容姿を持ち、運動神経も高い方で、女子からの人気が高い。ちなみに零士とは中学校で知り合った。
「おー 創真」
「おっす零士」
「……と圭介」
「なんだその『ついで』みたいな言い方は!」
「ははっ、冗談だよ」
「で、ゲームの話は?」
「いい質問ですねぇ」
「池上彰かよ」
「聞くのは野暮ってもんだぜ……」
圭介は両手を広げてやれやれといった素振りをする。
そして圭介は話を続ける。
「ここは一つ、スマブラといこうか」
「……」
3人の間に沈黙が流れる。
「……おいなんだよ、気まずいじゃあねぇか」
「ぃんや別にぃー?」
「良いとは思いますけどぉー?」
「とか言って、零士も昼休み中ジョーカーのコンボ動画見てたじゃん」
そんな感じで、他愛のないいつも通りの会話をしながら俺たちは足を進める。
いきなりだがここでこの世界を少し紹介しようか。
この世界は所謂オタク大好き、異世界と現実が合体した世界だ。
過去の話だが、50年以上前までは魔法も何もない、そちらの“地球”と変わらない星だった。
だがある日、異物は迷い込む。
その日を境に異界への扉は開き、同時に『マナ』と呼ばれる物質も出現した。
現にこの世界は今、モンスターやらダンジョンやらが常識となってしまった。
だが、同時に『覚醒者』と呼ばれる人間が現れ、異能力を持った者として『ハンター』と成り、瞬く間にこの世界はありきたりな、終わらない戦いを繰り返す世界線と化した。
簡単に言ってしまえば、そういう系の界隈が現実に舞い降りたと言えば分かるだろうか。
そして俺、一条零士はその界隈で言う「非覚醒者」に当たるモブ一般市民であった。
「あーあ、俺も覚醒して無双してぇな〜」
圭介は頭の後ろで手を組み、圭介はそう呟く。
「……どした急に」
圭介の隣を歩いていた創真はジトッと見つめた。
「もしもの話よ」
「もしチート級の固有スキルとか手に入れられたらとか考えてるわけですよ」
「お前らも少なくとも一回は思ったことあんだろ?」
創真は質問され、少し考える素振りをした。
「……まぁ、確かに」
「だろ?」
「ちなみにどんな能力とか希望あったりする?」
「えぇ?特にはないよ」
「ふーん、そうか」
「で、零士はどうなんだ?」
圭介は少し後ろを歩いていた零士に声をかけたが、零士は少し考え事をしていたようで、反応が少し遅れていた。
「……え?」
「……話聞いてた?」
「もちろんサ……」
「そう?」
「もちろんぼーっとしてて話が全く耳に入って来なかったなんてことはないサ」
零士は少し棒気味な口調でボケてみせた。
そこにすかさず圭介と創真が息ピッタリなツッコミを入れた。
「「ほぼ答え言ってるようなもんじゃねぇかバーロー」」
「……えーと?どんな能力が欲しいかだっけ?」
「なんだよ話聞いてんじゃねぇかよオイ」
「矛盾してるって」
創真と圭介は少し呆れた表情をしながら零士を見る。
「大丈夫だって、俺耳いい方だし」
「それあんま関係ないだろ」
「確かに」
零士は少しハッとした表情をした。
「いや納得すんなって」
それを見て創真は微笑し、圭介も釣られて笑っていた。
「なんかもうどうでもよくなったな」
「それは一理ある」
「ははっ、おもしれー奴らだよ全く……」
『あjsぢhが9g7さhghdjfんしうgn』
零士が話した直後、突然どこからか恐怖や吐き気を覚える魔力と、寒気を感じた。
「ーー!!」
突然のことに思わず口を塞ぎ、その場にしゃがみ込んだ。
体は冷や汗をかいており、心臓は大きく鼓動していた。
突然零士が立ち止まったので、違和感を覚えた2人は零士に近づいて顔を覗き込んだ。
「おい、どーした零士」
「って大丈夫?顔色悪いしめっちゃ汗かいてるよ」
「っ、ああ、大丈夫大丈夫……」
そうは言っても、声は震えていた。
「いや……全然大丈夫には見えないし」
「本当にどうした?体調悪い?」
零士は吐き気を抑えてゆっくりと立ち上がった。
「本当に大丈夫だから……」
(コイツらは感じていないのか?)
(この気味悪い感じを……)
パキッ
何かが割れる音が聞こえてきて頭を上げると、目の前には“裂け目”としか言いようがないナニカが空中を裂いていた。
それを見た3人は固まった
「……は?」
「え、これって……」
「ゲート、だよな」
「早く通報したほうがいいんじゃ」
創真がスマホを取り出し、ハンター協会へと連絡しようとした瞬間、零士の様子がおかしくなった。
「……呼んでる」
急に零士が喋り出したので、2人は零士の方を見た。
「……呼んでるって、誰が……?」
「分からない」
「けど、“声”が聞こえる」
「『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(発話不可能)』って」
「え、今なんて……」
すると零士は荷物を落としたまま、“裂け目”に向かって飛び込んでいった。
「「!?」」
「おい、零士!!」
圭介が手を伸ばして零士を追いかけるが、零士はすでに“裂け目”に入ってしまい、圭介も入りそうになるが、見えない壁によって弾かれてしまい、大きく尻餅をついた。
「痛っ!!」
「大丈夫か圭介!」
「それよりも零士が!」
2人は空間の“裂け目”を見上げた。
「一体、何が起こってるんだ……?」
一方“裂け目”の中
零士が“裂け目”に飛び込んだ後、眩しい光に包まれ、着いた先は古びた廃城の広間のような場所だった。
「なんだここ……」
「なあ、お前ら……」
後ろを振り返るが、創真と圭介の姿は無かった。
「あれ、2人は……?」
すると突然目の前にゲームのステータスウィンドウのようなモノが浮かび上がった。
ヴンッ
『試験体 No:??? が「test:999」に参加しました。』




