彼女と別れて
自分にとって、彼女との別れは、何より大きなものであった。
彼女の別れの言葉を、そのまま受け入れたのは、納得したからではない。
「私とは合わない」 という言葉に、自分を全否定された気がしたからだ。
まるで、冷酷なスナイパーという感じで、自分を切り捨てた。
仮に、「一度だけ許して」 と言っても、頑なに彼女は拒否しただろう。
20代の頃は、就職・多くの転勤など、前を向いて生きてきた。
田舎から出て、どんなことも一生懸命だった。
彼女との悲しい別れを、前を向いて生きる考えで、覆い隠してきたのだと思う。
スーパーの入り口での別れ、怒り・裏切られた思いも強かった。
しかし、彼女との別れは自分にとって、ショックが大きすぎた。心が壊れていた。
やはり、彼女への怒り・裏切られた思いよりも、恋しい気持ちの方が圧倒的に勝っていた。
我慢していた。彼女に会いたい気持ちを。
彼女と知り合う前にも、恋愛は多少してきた。
しかし、彼女との交際は、そういうレベルでは無かった。
彼女と付き合い、結婚を意識し、プロポーズをしていた。
彼女も、結婚を前向きに考えてくれていた。
時が経つにつれ、表面上の傷は少しずつ癒えていった。
しかし、彼女との別れを、自分の心は受け入れることが出来なかった。
何年経っても、普段意識することの無い、心の奥深くには大きな亀裂が残ったままだった。
そのことに気づくのは、はるか後になってからだった。
彼女と行った所を通ると、心が痛んだ。それは消えなかった。
彼女にプロポーズした日、彼女の誕生日、いつまでも忘れられなかった。
その日が来るたびに、彼女の年齢を数えていた。
自然とそうしている自分がいた。
その心で、その後の人生を歩んでいた。




