想い出の喫茶店
昼食を取り、先ほどの国道に出た。来た時の山道を通ることは止めた。
かなり大回りになるが、反対方向の道を選択した。
反対方向の道を進むと、広い道のまま帰ることが出来るからだ。
この町の中心部を抜けた。しばらく走ると、峠道にさしかかった。
マイカーの音楽は、座席下に設置しているCDチェンジャーに、はやりの音楽のCDを入れていた。
CDチェンジャーの音を、FMで受信するシステムだった。
彼女と付き合っている時は、この音楽を流していた。
彼女が退屈しないように、色々な音楽を入れていた。
長い峠道を走った。ヘアピンカーブがある急な下り坂だった。
一人なら、コーナリングを楽しむが、彼女がいるので、大人しく走った。
ギアを低めにし、滑らかなコーナリング、速度は抑えめで走った。
やがて、平坦な場所に出てきた。
少し大きな町があるが、帰りの時間が遅くなるので、そのまま帰ることにした。
2桁国道を走り、峠を一つ越えた。
住んでいる町から県内を移動するには、何度か峠を越える必要があった。
今では、高速道路が整備されているので、極端なアップダウン無しでたどり着くことが出来る。
この時は、ひたすら国道を走っていた。
左右に蛇行する道が続く途中、道沿いにあった喫茶店に入った。
アップダウンの多い長いドライブで、彼女も疲れたと思う。
やはり、無理なプランだったと反省した。
この日のデートは、長距離ドライブだった。
移動は大変だったが、彼女と長い時間一緒にいることが出来た。
そのことは、嬉しかった。ずっと、一緒にいたかった。
その喫茶店は、今は無くなっている。その国道沿いの場所には、今では別の施設が建っている。
その後、その場所を通るたびに、彼女と来たことを思い出した。