笑顔の彼女
町の中心部に着いた。自分や彼女が住んでいる町からすると、かなりこじんまりとしていた。
最初の目的地は美術館だ。走ってきた国道を右折して、県道を少し進んだ。
その県道のそばに、美術館はあった。県道より小高い場所で木立の中にある美術館だった。
それまで、絵画などを見る趣味があったわけではなかったが、デートコースに入れておいた。
絵自体について、その時の印象は薄かった。
しかし、静かな雰囲気を楽しんだ。デートをしているという感じはした。
ただし、彼女の印象は薄かったので、興味が無かったのかもしれない。
美術館を出て、更に県道を進んだ。
アップダウンのあるつづら折りになった道を通り、しばらく走ると、古民家などがあるキャンプ場に着いた。
山の斜面を利用して、施設が作られており、キャンプ場など自然を満喫できるものだった。
車を降りて、彼女と斜面を歩いた。食事のできる店を通り、更に奥に歩いた。
そこには、博物館があり、階段を上がると歩いてきた施設などの風景が一望できた。
日差しを浴び、爽やかな風を感じた。
ここで、彼女の顔を見た。笑顔で自分を見てくれた。喜んでくれた。良かった。
キラキラした笑顔の彼女、まぶしかった。
「今日、妹も連れ合いと別のところでデートしているんよ」彼女がそう言った。
この時のことは、特に自分の心の中に記憶されている。幸せな時だった。
29歳になっていたが、付き合い方は19歳くらいという感じで、そばにいるだけという
意気地のない男であった。本当は手くらい握りたかったのに。




