表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/50

彼女が住む町へ

 今から33年前の平成4年(1992年)


インターネット、パソコン、携帯電話、液晶テレビなど


今では当たり前のものが、まだ一般的に普及していない頃だった。


今の若い人から見れば、考えられないほど情報が入らない時代だった。


それでも、生きていく中で不自由さは感じていなかった。


情報がリアルタイムに入り、その点では便利な世の中になってきた。


その反面、窮屈な空気を感じ、心のゆとりが薄れている気がする。


ひょんなことから、あの時代がよみがえり、あの人を想い出していた。


あの時に経験したことは、私の人生の中で大きな意味を持っていた。


私は過去を振り返らずに生きて来た。振り返りたくないことがほとんどだったためだろう。


それでも、あの人のことは心の奥深くに刻まれていた。


不自由な人生を歩み始めた今になってそのことに気が付いた。


誰しもそうだが、あの頃に帰ることは出来ない。


心に問いかけ、あの時の想いを、これから少し書いていくことにする。


 私の名前は、田部康史という。昭和38年9月生まれだ。


大きな産業も無く、人口も少ない県の田舎で生まれ育った。


人付き合いが下手で、内気な少年だった。そんな人間が生きていく場所は、田舎にはなかった。


地元で働くことを考えず、ある国家資格を取って外で生きる道を選んだ。


地元の高校を卒業し、国家資格取得のため故郷を後にした。


多くの失敗を重ねたが、何とか就職前に資格を取ることが出来た。


故郷には帰らず、そのまま国家資格を取った場所で就職した。


ある組織の地方機関で働くことになった。転勤は何度もある職場だった。


20代は1~2年くらいの間隔で転勤を繰り返した。


自分が希望した転勤でないこともあったが、新しい土地で暮らし、少しずつ経験を積んでいった。


20代半ばには、生まれ育った田舎と大きく違う大都市が仕事場になっていた。



 そして、平成4年、私はある地方都市に住んでいた。


前年の平成3年10月、その地方都市に転勤していた。


私の所属している組織の出先機関が、その地方都市にあった。


母親の実家が近く、小さい時から幾度となく訪れていた所だった。


町自体はコンパクトにまとまっており、買い物など生活に不自由となることはなかった。


環境的にも、海・山・川があり、自然豊かであった。


それまで住んでいた大都市を考えると、人の流れも緩やかで、のんびりしていた。


最初は、「何もなく田舎やな」と思っていたが、元々田舎者なので直ぐにその生活にも慣れていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ