蛇足!
「……きゅぅ」
あの日、脳がオーバーヒートを起こしたリリーは、告白に答える前に気絶した。
真っ先に駆け寄り、抱きかかえるアーシャ。
そういう役割は、昔から彼女の領分だったのだ。
もちろん、他の面々も心配そうに顔を覗き込む。
「あら、リリーちゃん気絶しちゃったわぁ。刺激が強すぎたのかしら」
「なんてこと……わたくしたちが追い詰めてしまったせいでしょうか」
「リリーには荷が重かったみたいだね、困ったな……」
「一番困ってんのはリリーだと思うけどな。でもこれじゃあ答えがわかんねえだろ。どうすんだ?」
「ではこうしたらどうでしょうか」
フローラは一歩後ろに下がり、両手を広げて、聖母のように慈悲深い笑みを浮かべて言った。
「リリーさんをみんなで共有するのです! 私たちの幸せより、リリーさんの幸せのほうが優先なのですから、私たちが争ったって意味なんてありません。全員でリリーさんをたっぷり愛でて、たっぷり甘やかして、ダメにしちゃいましょう!」
「なるほど……フローラの言う通り、八人がかりなら、リリーを誰よりも幸せにできるわ!」
「ふむ、一理あるな……姫が賛成したら、の話だが」
「わたくしは構いません」
「誰も悲しまないし、団長や姫と同じで、私も賛成よ」
「というわけで、決定です! リリーさんは今日から、ここにいる全員のものということで! この世界の他の誰よりも、たっくさん幸せにしてあげましょうねっ」
『おーっ!』
――リリーの知らぬところで、勝手に決められた共有という結論。
結局、彼女はそれを一生知ることはなく、もやっとしながらも――誰よりも幸せに、毎日のようにでろんでろんに甘やかせながら生きたのだという。
なお、魔王は彼女たちの生活を観察するために侵略をやめた。
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