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異世界で奴隷になったからご主人様を王にする  作者: 九番空白
第二章 はじまりの迷宮
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食喰総司郎の手記 5

 レッテンへとたどり着き、私が始めにしたことはC.C.Cを含む装備の調達だった。

 資金はあるので何の問題もなくC.C.Cを購入。

 どうやら私は魔術師と僧侶のクラス適正を持っているらしい。まあ、体を動かすのは昔からあまり得意ではない。仕方の無いことだろう。

 装備もそれにあわせて最上のものを購入した。……といってもこの街にそんな大それた装備など売っていないのだが。

 金に物を言わせるようなカタチだが、私は自分が体育会系ではないことを重々承知している。慎重に慎重を重ねなければあっという間にお陀仏だ。




 次の目標は冒険者ギルドで仲間を募ることだった。

 当然だ。私には前衛が必要だからだ。

 僧侶のクラスは盾職でもあるそうだが、私には無理だ。絶対に。

 傷くらいなら喜んで治してやるから私を守ってほしい。


 実際に仲間を募集してみると、これがなかなか難しい。

 新人(ルーキー)が有名パーティに入れる可能性はかなり低い。

 どんな者かもわからない新人同士で組むにはギャンブルすぎる。


 私はそんな歯牙にもかからない新人たちやソロ冒険者たちの中では、注目という意味では頭一つ抜きん出ていた。

 まずは、装備を持っていること。C.C.Cを既に持っているのは大きなプラスポイントだ。だがあまり大金を持っていることをバラすわけにはいかないのが難点だ。

 そして適正クラスが二つしかないことは、とんでもなく珍しいらしく、かなりのマイナスポイントであった。

 あとは年齢か。たしかに冒険者としてスタートするには多少歳を取っているかもしれん。いや、だがまだ三十二だぞ。


 総合的に見て、今は様子見だが、あと一歩あれば引く手数多という感触だ。

 ならば実績を上げるしかない。

 だが実績を上げようにも前衛がいなければ話にならない。ジレンマだ。

 そんなわけで私は奴隷を購入することにした。

 普通の新人にはこの選択肢は取れないが、私は金はあるのだからな。




 何件かの奴隷商を巡ったが、どうにもピンとくる人材がいない。

 そもそも、私は盾職が可能な者を、と考えていたが、それはあまりに漠然とした判断基準であった。

 どんな者が良いか、考えていなかった。

 ううむ、悩ましいな。


 そんな中、たずねた奴隷商はなかなか気の利く商人であった。


「そうですね、お客さんにはあまり気の強くない者がオススメですねぇ。失礼ですが、お客さんは気の強い奴隷を従えて、俺についてこい、ってタイプには見えませんからねぇ。ああ、もちろん奴隷紋があれば言うことを聞かすのはわけない事ではあるんですが、理屈を言っても理解できん奴隷はお客さん向きではないでしょう。それなりに頭の良い者か、体はデカイが大人しい男か、……いっそ女が良いかもしれませんな」


 なるほど、たしかにそのとおりであった。こちらの指示にいちいち難色を示されたり理解が足りなかったりされると困る。


「女というのは前衛もこなせるのか」


「はい。もちろん数は少ないですが、こなせる者はおりますよ。基礎ステータスは男に劣りますが、レベルさえ上がればその差も気にならないほどになります。当然、女としても使えます。家事は奴隷ならば男も女も仕込んでおりますのでご心配なく」


 女として、か。……私もそこまで若くは無いとは言え、この生活が長引けば(うるお)いも必要にはなってくるか。――いや、別にそうなったら花街にでも繰り出せばよいだけのことだ、無理にそれを判断基準にすることもないだろう。

 役に立ちそうかどうか、この基準をぶらしてはならない。


「とりあえず見せてもらえるか」




 結局、保証人になった友人に逃げられ、借金を背負わされて奴隷になった気の優しい男ジョシュアと、若くして夫に先立たれ次の男にだまされて奴隷に落ちた女ブーカを買った。

 ジョシュアは身長が一八〇センチ強と高く、いままで鍛えてきたわけではないというが、骨が太いのかガッシリしており、将来性が期待できる。気の優しさがにじみ出ており、しゃべり方ものんびりしている。飯の量は気にせず食べていいと言うと嬉しそうにしていた。

 安い飯だ。レッテンではボアの肉がとても安く手に入るのだ。多少量を食っても大した金額にはならない。ジョシュアは味より量といった感じで、私も食にはあまりこだわる方ではなく、きちんと栄養を摂取できれば良いという考えだ。ブーカも気にしなかった。


 そのブーカだが、あまり見栄えのする女ではない。

 とくに女として選んだわけではないので、冒険者として前衛を張れることを重視した。あと家事だ。私も家事はできるが得意というわけではないし任せられるなら任せたい。

 そんなわけで、顔は普通、少し小柄だが体は結構ガッチリしている。女なのでそれほど外から見てわかるほどではないが、細くはない。

 そしてきちんと話せば理解するだけの知性を持っているのが大きかった。


 どこかのパーティから誘われるとき、これ以上メンバーがいれば不都合があるだろうし、二人までにしておいた。これでも多ければどちらかを解放してやればよい。



 さて、これからはじまりの迷宮を攻略していくとしよう。

 なあに、私にかかれば楽勝だろう。

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