胸が苦しい すごく苦しい
おっぱいだ。
肺からまるで勝手に酸素がでていってしまうような息苦しさを覚えながら、同時に俺の顔をもにゅんとやわらかく、すごくいいニオイのする重みが2つ、左右から包み込む。
触れているだけで安心して、元気を直接与えられるような興奮する甘い感触…なのだが、俺は今、呼吸がそれどころではない。
「もっと鼻を押し当てて、ゆっくりと、呼吸してくださいませ 落ち着いて」
後頭部にはおっぱいの主の手が添えられて、押し込まれるようにおっぱいに包みこまれて、もっちりとした触感を直に感じさせられる。 すごく甘い匂いがする……
おっぱいすぎる……
「服がジャマでしょうか… やはり勇気を出して、ここは脱がないと…!」
おっぱいが脱ごうとしている……
それはマズいっすよォ……70代ぐらいの掠れた田舎の誰にでも挨拶する知らんジジイみたいな声が聞こえる……
いや、今の俺か……
「マズくなんかありません! きっと……美味しいハズです!」
「そういう意味ではなく……」
だめだこの人、なんか変なおっぱいだ…… あ、でも今度はちょっとだけ声が出る。
俺はもう一度すっ~……と息を吸い込み、その甘い香りを感じながら、息を整える。
「おっきいですよ!」
「おっきいです……」
「! 大きいのがお好きですか?」
「大好きです」
「それは良かったですっ」
「ちょっと良すぎて……」
イキそう、普通に。
「大丈夫です……あなたは私が生かします……」
マジで別の意味に聞こえる…… だが今はともかく、と俺は顔を埋めて呼吸をし続ける。
「そうです…… ゆっくりゆっくり……焦らなくても大丈夫です……ずっとこうしていても、いいですから……」
なんでそこまで?と真っ当な疑問が頭を過ぎりながらも、俺は大人しくおっぱいに甘えていた。
段々と、思考も戻ってくる。
俺は確か……昨日まで、大学から帰ってきて、自分の部屋の自分のベッドで寝たはず……だったよな?
ここはどこなんだ? 視界は殆どおっぱいに埋められていて、目線を上げると真剣な顔でぱふぱふする、長い黒髪の丸みを帯びた瞳をした女性が真剣に自分の胸を左右からゆっくり俺の顔に押し当てている。
かわいい…… 素直にそう思った。 おっぱいしか見えなかったのがもったいないくらいだ。
谷間を開いた修道服が、よく似合っている。
横目にはどこかの田舎の山のような、見覚えのある草木が生い茂っている。 耳を澄ませば、静かなチチチチ、というようなさえずりも谺している。
なんか、異世界じゃ…ないっぽい…? ピクニックでシスターにぱふぱふされるシチュのコンカフェに俺、飛び入り入店してる?
ピクニックでシスターにぱふぱふされるシチュコンカフェって何? 不安が止まらなくなってきた……
「あの……」
「はい、どうされましたか?」
「ここって……どこですか?」
「ここはハゼリアです。」
「ハゼリア……」
離島とかだったらあるのかもしれないが、聞き覚えはない。 日本……ではないみたいだ。 日本語通じてるのに。
「ハゼリアの、イオウヤマの森です。」
イオウヤマ…? 日本語通じてるのがちょっと納得できるようになったな…
「近くには、洋服のアオヤマがありますよ」
「洋服の青山があるのは日本だろ」
ついツッコんじゃったよ。
「に、ニホン?何がですか?」
「俺はそこから来たはず……だとは思うんですけれど……」
「外からいらした方なのは、知っていますよ だからあなたは呼吸ができないのです 世界樹様の加護がなくて、エーアの侵食を解毒しきれないのですから」
「なるほ……ど……?」
この人がめちゃくちゃ徹底した演技のコンカフェ嬢とかでもなければ、やっぱりこれ、異世界転生……いや、死んでないから、異世界転移ってヤツ、なのか。
知らない単語が急に出てきたぞ。
知らない単語と概念をスラスラ解説されながらぱふぱふされるのって、なんかめちゃくちゃ怖い。
「えっと……この胸は?」
「自慢のおっぱいです」
そうでしょうけれど。
やめてくれ、優しいシスターさんがどや顔でおっぱいって言うの、可愛くてすごいエロいからやめてくれ。
「じゃなくて……あの、なんでこの……サービスを……」
「元気になりますよ」
元気になるけれど。
元気になりすぎるんだよ。男の子は。おっぱいで甘やかされすぎたら。
「も、もう大丈夫ですよ……」
ひとまず、思考はだいぶできるようになってきたし、帰る方法……があるのかはわからないけれど、夏休み開けたら大学行かなきゃだし、おっぱいで甘やかされてるヒマは……
「大丈夫じゃありません。 あなたはまだしばらく、こうしていないと」
もっぎゅっ と頭を抱きしめられて、おっぱいに押し当てられる……
う、うおっ――
「これから、私と過ごして、定期的におっぱい しないといけません 頑張りましょう」
「え……?」
おっぱい中毒にされてるってこと?
「最悪」
頭が悪すぎる危険を感じていると、そんな俺の思考を叱るように響いた。
柔らかなシスターの声ではない、冷たい知らない声が背後から聞こえる。
「トゥーナ……」
見上げれば、シスターは先程までとは変わらない瞳のまま、瞳孔だけが遠くを見つめる。
俺が振り返ると、そこにはかなり幼く見える少女が俺を冷たく刺すように、嫌なものをみたかのように見つめていた。
声の主はどうやら、彼女だったらしい。
えぇ… な、なんか。
気まず…。
俺は呼吸がまた、苦しくなってくるのだった。
10年ぶりくらいにログインして書こうと思ったらログインできなくなったので、新しく1から書くことにしました。
認識阻害系の催眠作品が好きです。 よろしくお願いします。




