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倫理観の破綻した世界で作者の都合しかない作品から生まれたならあり得るだろう。
幼くして両親や母親を亡くし、叔父一家に乗っ取られて虐待される日々。
防壁の効果により死ぬことはないものの、悲惨な状態で表舞台に登場させられて、珍獣を見るような好奇な視線を向けられる。
学園生活で孤独を感じ、日々の生活では心をすり減らし。
自分自身がつくった断罪回避など、生きる気力すら失いかけている(他称)悪役令嬢に出来るはずもなく。
【ある日、恋愛シミュレーションゲームの悪役令嬢同様にヒロインに危害を加えてしまい……最悪な結末を迎えています】
世界の平穏と調和を維持するために用意される必要悪の存在は分かる。
その役目を、作者に近しい誰かが負わされて、不幸になり……最悪、死を迎える。
国や世界に溜まった負の感情を吐き出すための標的役は、転生しようと終わることがない。
【世界の仕組みを知らない作者が不幸な人生を生きる主人公を生み出し続けるから】
なぜ、主人公を不幸のどん底に落としたいのだろうか。
もしも自分がその人生を生きるとしたら…………「不幸な生い立ちだけど最後はハッピーエンド♡」の人生に満足できるのだろうか。
ある作者に「なぜ主人公を不幸にしたり酷いことをして殺すのか」と聞いたことがある。
返ってきた言葉は「だって現実でやったら罪になるじゃん」だった。
「酷い目にあってきた主人公が、王子や幼馴染みに救われてハッピーエンドって、最高のざまぁじゃん」
そんなこと言っていた、悪びれることなく。
「一番辛いときに助けてもくれない男たちが?
学園でも『だって主人公には婚約者がいるから』と理由をつけて助けず。
自分可愛さから見捨てておいて、大衆の面前で婚約破棄されたら『実は前から好きだった』って?
精神的に弱ってる主人公の心の隙をつく卑怯な男が好きなんか~。
私とは相容れない思考だわ」
そう感想を伝えたら縁を切ってきた作者が数人いるけど…………
そっかー。
あの人たちの作品世界には調和が必要になって、家族や親戚、友人や知人にペットまで送られているのか。
ペットも召喚獣ではなく、『聖女作品上、必要な討伐対象の魔獣役』らしい。
新作が投稿されなくなったとき、そのときが巻き込まれた人たちが救われるチャンスなのだと。
作者が死んでも作品は生き続ける。
しかし、一度でも転生者に犠牲を強いたその作品は繰り返されない。
せいぜい、作者本人が作品の世界観を追体験するために再演されるだけだ。
すべてが終わった結果、その世界が崩壊を免れることができれば、ようやく世界は安定に向かい、転生させられた人やペットたちに安らぎがやってくる。
世界が修復不可能になれば、新たな作者の世界がつくられ、その世界に移されていく。
転生者も、その世界で新たな作品の出演者として生きていくか、ただのモブとして生きるかは本人次第。
神の采配により崩壊の始まった世界で徳を積んだため、新しい世界では数段幸せな人生を送ることができる。
しかし……ふたたび私たちが生きるこの世界に生まれかわることはできない。
……疲弊しているからだ、役を演じ続けてきた魂魄が。
落とされるのは一瞬だが、戻るには段階が必要らしい。
まあ、魔法のある世界に馴染んだ魂魄が科学の発展した世界にすぐ馴染めないからだろう。
ちなみに、たくさんの人々を不幸に巻き込んだ作者は、自作の責任を持って滅びゆく世界で終焉の日まで彷徨い続ける。
終焉を迎えたとき、悪役や憎まれ役の演者としてでも作者を受け入れてくれる世界があればいいが…………
異世界の破滅と同時に消えてなくなる作者もいるようだ。




