⒊
置かれていた現金はすでに5億円に手が届く。
それでも、玄関を開けたら現金の詰まったダンボール箱がかわらずに届いている。
宅配を頼んで届いたから玄関を開けた場合は届いていない。
買い物でもゴミ捨てでも、どんな理由でも『外出した』場合にのみ置かれているようだ。
そんなある日、新聞受けに一通の封書が入っていた。
その内容を要約すると……
私が投稿した小説が異世界を生み出し、繁栄しているのだと。
これまでに届いた現金は、異世界から私に支払われた報酬とのこと。
だから届いた現金はどう使ってもいいそうだ。
そしてこのお金は非課税対象……というより、不課税にあたるらしい。
『国内取引』ではないからねぇ~、異世界なんだから。
だいたい、この世界ですらないもん、取引相手って。
そもそも消費税は発生していない。
だから課税対象外になる。
✮ ✮ ✮ ✮
リストアップされた、国として誕生した小説は複数あり、これからも少しずつ国は興り発展していくようだ。
手紙に同封されていた異世界の地図によると、いくつかの大陸に分かれて国という形で点在していた。
【ほかの異世界のように、不幸になる人や理不尽な目に遭う人は生まれていません】とのことだった。
異世界そのものは作者による世界観で統一されているため、私の作品から生まれた異世界(というか国家)は概ね生きやすい環境になっているらしい。
確かに『奴隷制度廃止』を掲げる作品は多く、奴隷は借金などの身売りや連座・縁座の犯罪奴隷なら、人権は残されているか釈放後に復権が可能。
犯罪奴隷にしても、日本でいうところの懲役だ。
犯罪者本人は無期、連座・縁座の場合は有期。
身売りの奴隷は、まあ『奉公』ってところかな。
借金完済というか年季が明ければ解放されるから。
修道院もねー。
雨露をしのげて、衣食は与えられて、ベッドで寝れる。
質素倹約な生活は、貴族の生活に慣れた子息令嬢には辛いだろう。
まあ、『住めば都』というくらいだ、慣れてもらうしかない。
平民でもなー。
現代の日本ほどの文化はないかもしれないけど、『昭和の良き時代』と言われた昭和50年代の水準かな。
だから、真面目に働けば生きていける。
巷では没落貴族が物乞いとかで飢えを凌いで行き倒れる、なんて作品があるけどね。
神殿や教会がある世界なら、神殿や聖女や貴族による売名行為があるでしょ。
子どもなら、やはり偽善者の偽善者による孤児院経営があるから、そこで貧しいながらも生きていける。
……死ぬよりかはマシでしょ。
正しい孤児院経営をしていなければ、その貴族は名声に泥水ぶっかけることになる。
よく勘違いされるけど、領民は国民。
貴族の所有物ではなく、国王の民。
つまり『国民をお預かりしている』ってわけ。
その領地も、国王から『預けられている』だけ。
貴族は、というか貴族当主は『国王から預けられた国民の生活が脅かされないよう守る』ための管理者。
そして領民は『日々の生活を守ってもらう対価に、働いて税を納める(生産者は物納)』。
まあ、日本で例えると、国王=天皇陛下。
貴族(主家)=都道府県知事、貴族(寄家)=市長。
領民=国民、都道府県民、市民、区民、町民。
これで分かるかな?
世襲制なのは国王。
貴族以下は世襲制ではないの、本当は。
貴族制度でも、次期貴族当主は『国王に許可をいただいて(許されて)、ようやく他家へ認めてもらえる』ってわけ。




