友達
家は樹の根元の隙間を利用したしっかりしたものだった。活発少女一人で暮らすにはもて余す程度の大きさだ。同居人がいる可能性は高い。
「どうぞどうぞ、お入りください~」
活発少女は玄関に立つと扉の前でうやうやしくいってきた。
俺が先に入るのはまずい。先に奴等が客として来ているのならなおさらだ。
「ちょっと待って、お客さんがいるのなら先に入って僕のことを紹介してくれないかな。こんな見た目だからビックリしてしまうと思うんだ。」
事前の説明があるのとないのでは警戒のされ方が全く違う。下手をすればあの魔法をいきなり放ってくる可能性がある。それは避けたい。
「確かにそうだね、私も最初はビックリしちゃったもんね。」
活発少女は少し気まずそうに言った。
「そうだろう?君が先に入って僕のことを紹介してくれないかな?そうだな、紹介の仕方は(友達の欲しいさみしがりや)でお願いしたいな。」
これであれば、今までの行動に説明がつく。我ながら良い案だ。
「うん、わかった! あ、まだ名前聞いてなかった。あなたは名前は何ていうの?」
名前か、確かにコミュニケーションの場では必要になってくるな。適当でいいか。 …いや、まて、この世界の名前のニュアンスが俺のいた世界とずれているかもしれない。
「僕に名前はないんだ。よかったら君がつけてくれると嬉しいかな。」
この場合は自分でつけるよりこの世界の住人につけてもらえば間違いないだろう。
……センスが壊滅していないことを願う。
「え、 うん、いいよ! えーとね、ゾルディアはどう?」
どちらかと言えばニュアンスは西洋に近い気がする。東洋では無さそうだ。
「いいね。今から僕はゾルディアだ。ありがとう。君の名前は何て言うんだい?」
「私はね、アムディアって言うの。えへへへ、あなたの名前、私とお揃いにしちゃったの。」
アムディアは照れながら言った。
なんだこれ、かわいい。食べたい。
・・・冗談は置いておいて。非常にありがたい。個人的に違和感は感じない。この世界ではゾルディアと名乗ろう。
「そうなんだ、僕は嬉しいよ。よろしくね。アムディア。」
「うん!よろしくね!じゃあ、説明してくるね。」
そう言うと、アムディアは先に中に入って行った。
そして、しばらくすると「入って~。」とアムディアの声が聞こえた。俺は、ゆっくり玄関から入って行った。




