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武人ゴルメスの友語り5



それは平民の理屈だ。初めはそう思った。

我らは誇りを持って戦っている。戦士であれば皆そう思っているはずだと…


まどか殿が召喚した骸骨達は、王国軍を追い払い、隊列を組んで皇子様の前に居並ぶ。その姿は精悍で、兵士の誇りを感じられた。その骸骨に向けて、皇子様の労いの言葉が掛けられる。


「大義であった!」


骸骨の兵士達は声を上げ、打ち震えている。

その時不意に、ジョーカーの言葉を思い出す。

まどか殿にとって、命とは皆平等で、等しく尊い…まさか、死んで行った兵士達の誇りまで守ったというのか!

朝日に照らされ、灰になって行く骸骨達。表情など無いはずなのに、満たされた思いが伝わってくる…


まどか殿は、敵対者でも命は奪わないと聞いた。例え自分の命を取りに来たものでも…

慈悲、慈愛、人外の強さ、カリスマ性…まどか殿とは、神の使徒なのか…もしくは聖女…そうであれば、全ての話しが繋がる。

まどか殿は、国という枠を考えていない。生きとし生けるもの全ての生命、それを奪う権利は、誰にも無いと。最初に打ち明けられた言葉を 私は平民の理屈だと思った。だがそれは違う。我らが誇りだと言っているそれこそが、貴族の理屈なのだ。それを押し付けて、大義名分の元、殺生与奪をする…確かにそれは、愚かな行為だ…

『そうか…まどか殿ならば、一滴の血も流さず、国を纏めてしまうかもしれんな…』

そんなことを思い、すぐにやめた。そもそも国という枠組みすら、まどか殿には無用なのだから…


数日後、ケーニッヒ卿より手紙が届く。私は男爵となり、卿のお屋敷を出て、領地を与えられた。まだまだ至らぬ所も多く、しばしば卿には助言を頂いている。だがその日の手紙には、まどか殿の事が書いてあった。


皇子様がまどか殿にも爵位をと仰せらしい。あの方のことだ、きっと断わるであろうと。既に旅立ちの準備をしている。見送りには行かぬのか?と。


こうしてはおれん、私は家の事を全て後回しにして、取るものも取りあえず馬を走らせた。

貴族街を抜け富裕街を抜ける。まず初めに駅に向かった。

『居ないようだな…』

周りを見回していると、機関士が声を掛けてくる。


「どなたかお探しですか?」


「其方、冒険者のまどか殿を知っておるか?」


「まどか様ですか?まど…あぁ、ケーニッヒ卿の護衛でいらした方ですね。」


「おぉ!知っておるか!」


「あの日以来、お見かけいたしませんが…」


「そうか…ここではないか…」


「なんでも帝都を救った英雄と言われているようですが、本当なのですか?」


「あぁ、本当だ。私もあの御仁に救われた。」


「そうでございますか。あの日差し上げた魔晶石、お役に立っていれば良いのですが…」


「きっと役に立っているさ。そうだ、その魔晶石、少しばかり譲ってくれんか?代金は払う!」


「それは構いませんが…五つほどで良いですかな?」


「それでいい。すまんな。先を急ぐゆえ、金はここに置くぞ。足りなければ、我が屋敷へ参れ。ゴルメスだ。」


私は魔晶石の袋を掴み、再び馬を走らせた。

門を抜ける馬車がある。あの馬車は…戦場へ向かった時の商人の馬車だ!あれに違いない!

私は馬車を止め、ようやく追いつく事が出来た。


友の旅立ちに、下手な言葉はいらぬ。私は剣の飾り紐を切って渡した。

『結局、恩は返せなんだなぁ…だが誓おう!私はこの国を、民が涙を流す事の無い国にしてみせる!それをもって、まどか殿の恩に報いるとしよう!』

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