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武人ゴルメスの友語り6



友と言うものは、こちらが紛糾している時にフラッとやって来て、手を差し伸べてくれる。

私が男爵になり、仕官欲しさに友達面で擦り寄ってくる者とは、雲泥の差である。


帝都復興の人手不足を 罪人に条件付きで仕事を与える事で補っている。反対意見も多かったが、仕事や住む家を失った者達が、野盗になり略奪を行うくらいなら、職を与えた方が治安は維持出来ると押し通した。


ただ言った手前、もしもの時に兵の練度が引く、鎮圧が出来ないでは済まない。各貴族のコネで入隊した者達は、はっきり言って使い物にならなかった。


(せめてコイツらに、本物の強さを見せる事が出来たら…地位に驕らず、上には上がいるものだと、日々鍛錬を欠かさぬ向上心を植え付けるには…)


いくら私が叩きのめしたところで、男爵様に負けるのは仕方ない…などと、ここまで登って来ようと言う者は居なかった。


「オラオラ!その程度では帝都は守れんぞ!殺す気で打ち込んでまいれ!」


そんな時だった。空耳ではない、確かに私の名を呼ぶ声がする。


「ゴルメス!」


高々と紫の飾り紐を巻いた腕を掲げ、およそ強者とは思えぬ可憐な立ち姿、


「まどか殿!」


頭で考えるより先に、身体が自然と剣を構えている。それに呼応してまどか殿も身をしずめる。この御仁は、いったいどこまで強くなるのか…まるで竜と対峙しているようだ。


「断頭迅雷!」「炎陣、フルスロットル!」


まどか殿は僅かな首の動きと肩の捻りで私の剣を躱し、片手で鍔を押さえ、もう片方の拳を私の胸にピタリと付けた。


(本気であったならば、私の心臓は打ち抜かれていただろう…)


「流石だな、ゴルメス。」


「俺の剣を平然と止めておいて、流石はないだろう、まどか殿。」


まどか殿には挨拶程度の事であろう。だが若い兵士達には、良い刺激になったようだ。


その後まどか殿が語ってくれた【心·技·体】の教え。我が心中を見透かされたかのような教えだった。まさに今足りないのは心の鍛錬。高き頂を目指す折れぬ心。自分達より若い少女が、自分達より遥か高みにいる事実を知り、奮い立って欲しいものだ。


まどか殿が死ぬなと言う理由が聞けたのも良かった。察するに、本意では無いと思われるが、我が意を汲んでか、心の鍛錬に繋げて話してくれた。

我々騎士や兵士というものは、国を守る為ならと自らの命を軽んじる傾向がある。確かに、覚悟という面では必要な事であるが、粗末にするのとは違う。何者にも屈しない強き盾として、強者の前に立ち塞がる。その為の技であり身体でなければならない。我等の目指す高みは、未だ遠い。


男爵となり、事務的な仕事が増える中、より強くなろうという気概を忘れかけていた。私はもっと強くなる。民を守ると誓ったあの日、背負う命の数に見合うだけ強くならねば…私に気付かせてくれた友に感謝しなくては。


間もなくまどか殿は、帝都を去った。後日戻った魔導師によると、古の封印術を四日で習得し、数百年の時を生きるバンパイアを封印したと言う。友の窮地に駆けつけられなかった悔しさはあったが、王国が更なる動きを見せている以上、帝都を離れる訳にはいかなかった。その事をまどか殿に告げると、


「こっちは片付いたし、ひとつ王国に乗り込んでみるか…んじゃ、ゴルメス、またな。」


と、笑顔で去って行かれた。既に返しきれぬ恩を 私はいつになったら報いる事が出来るのだろうか…友とは、斯く在りたいものだ。

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