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第二話『大変ってにゃんにゃのにゃん!』のその②

 第二話『大変ってにゃんにゃのにゃん!』のその②


『ええっ!』

 周りに居るみんにゃが揃って叫んにゃ驚きの声。ミーにゃんの、ごろごろ、の音をかき消してしまうくらいの大音響にゃ。加えて誰もが身動き一つしにゃくにゃる。これらが事態の大きさを物語っているのはいうまでもにゃい。

 ここで誤解のにゃいよう、はっきりとさせておかねばにゃらにゃいことがある。

 というのも……、ウチらが動けにゃくにゃったのは、ミーにゃんの話があまりにも突拍子もにゃかったせいに他にゃらにゃい。いわば誰しもが陥るであろう当然の帰結にゃ。それに引き換え、ミーにゃんが動けにゃくにゃったのは恐らく、ウチらの叫んにゃ声にびっくりしたせいと思われる。にゃもんで、ことの重大さをミーにゃんがどれほど把握しているかについては……、希望的観測を見い出せにゃい、といわざるを得にゃいところが悲しいかにゃ、現実にゃ。そしてもし仮ににゃ。本当の本当にそうにゃったとしたら……、ウチが説明しにゃければにゃらにゃくにゃるかもしれにゃい。これまた悲しい現実にゃん。

(ネコにプレッシャーをかけてはいけにゃいのにゃよぉっ!)

 ウチより愛を込めて。切にそう願う次第にゃん。


「大変でありまああああすっ!」

 しばらくして発せられたミムカにゃんの声に、『大変』騒ぎがまたまた勃発。束の間の静寂は、いともあっさりと破られたのにゃん。

「大変だわ……んぐっ!」

 周囲の興奮に煽られたのかもしれにゃい。またもや緑色の光弾とにゃって飛び立とうとしたミーにゃん。ウチの背中からわずかに離れた瞬間、他の仲間が寄って集って取り押さえることが出来たのは、本当、奇跡としかいいようがにゃい。

(でもにゃあ。とほほ。おかげでウチまで下敷にゃん)


 ごろごろごろごろ。 ごろごろごろごろ。

 背中であやしたところ、効果てきめんにゃ。ミーにゃんの気が静まったとみえて、いつものように、『きゃきゃきゃ』と楽しげにゃ声が聞こえてきたのにゃもん。

「どういうことなの? 説明して、ミーナ」

 またまた出番のミストにゃん。両腕を組み、睨みを利かせた姿での問い質しにゃ。相手の気迫に圧されたのにゃろう。ミーにゃんも、ごろごろ、をやめ、ちょこん、とお座りポーズに。

「アタシも今聞いたばっか、なんだけどね」

 そう前置きをしたあと、イオラにゃんから伝えられたらしい話を喋り出したのにゃ。

「天空の村がガムラの力で浮上している孤島だっていうのは、ミストんも知っているわん?」

「もちろん。天空の村に棲む者であれば誰もが知っていることよ。……ああでも、実際に孤島を浮き上がらせる役目を担っているのは精霊のヴィーナスだって話だけれど」

「ついでにいえば、孤島全体の姿勢を安定させようと、常にバランスをとっているのもね。

 ヴィーナスは『天空の村』そのものを身体とする霊体。だから、当然といえば当然なんだけどぉ。ただ、それもこれも霊力の源である地霊ガムラ……神霊とも呼ばれているけどね……から直接供給される力があればこそ、の話にすぎないわん」

「まっ。それはそうね」

「力を放つ者と、その力を村の為に役立てることが出来る者。これら二つの両軸があって初めて村の平和と安定は成り立つの。ところが……、

 実はね、ミストん。今回、問題になっているのも、両軸の片っ方的存在、ヴィーナスなのわん」

「というと?」

「ヴィーナスの核って、本来であればガムラと同じ霊山『亜矢華』の奥深くに潜んでいるはずなんだけど……、どうやら今はお留守らしいわん」

「どこかに出かけてしまったっていうの?」

「みたいね」

「ガムラ様がいじめたのかしら。それとも、自分探しとやらで……」

「ミスト殿。幾らなんでもそれはない」

 ミロネにゃんの言葉に、『いってみただけよ』と、くすっ、と笑うミストにゃん。『理由はさっぱりなんだけどね』とミーにゃんの話はまにゃまにゃ続く。

「おかげで天空の村は今、バランスが取りにくい状態になっているんだって。

 さっきの地震もそのせいみたい。取り敢えずはイオラが代役を担うらしいんだけど……、どこまで出来るかはイオラ自身にも判らないんだって」

「だろうな。ヴィーナス殿は『天空の村』という孤島自体を守護する精霊。それに対し、イオラ殿は『天空の村』に棲む命を守護する精霊。同じ守護神とはいっても役割が違うから、無理もない」

「そうね。ミロネのいう通りだわ。となると……、ぐずぐずしてはいられないかぁ。

 ことは村の一大事。早急に探し出さないといけないわね」

「というわけで、はい」

 ミーにゃんがミストにゃんに手渡したのはペンダントつきのネックレスにゃ。

「ええとぉ……そうそう、『ゼノン』とかいうものらしいわん。直接手がかりになるどうかは別としてね。ヴィーナスに会いたいならそれが是非とも必要らしいわん」

「これがねぇ」

 きらりん。

 ペンダントの一カ所が煌めきを放っているのにゃ。

「うん。でもってね。ほら、緑色に光っているものがあるでしょ?

 これって宝玉なの。イオラが持っていた分よ」

「綺麗ね。あらっ? 周りにくぼみが四つもあるわ」

 ミストにゃんが両手に持って、しげしげ、と見つめているもの。それは逆三角の形をした銀色のペンダントにゃ。真ん中で光っているのが、どうやらイオラにゃんの宝玉らしい。これを囲むように縦長の菱形に溝が刻まれていて、四つの角に位置するいずれもがミストにゃんのいう通り、くぼんでいるのにゃん。

「さっすが。目のつけどころが違うわん。宝玉は全部で五つ。持ち主は全て森の精霊だったらしいわん」

「森の精霊? でも確か、今では」

「五体とも滅びている。……表向きはね」

「表向き?」

「まっ、それはともかくとして。

 イオラが持っていたのって、シャナから譲り受けた宝玉なの」


 ここから、どうしようもにゃい話し合いがしばし続くのにゃ。聴いた耳ごと、ごみ箱に捨てたくにゃるようにゃ内容にゃん。

「シャナ……」

 ミストにゃんは呟きともとれる声を発したあと、『両腕を組み、両目をあさってのほうに向けて』といった、いかにも記憶を辿っているようにゃ仕草に。

 でもにゃ。それもほんのひとときにゃん。

「そういえば」

 はっ、とした表情を浮かべたと思ったら、

 くるっ。

 友にゃちのひとりを振り向いたのにゃん。

「ミムカ。あなたを造った森の精霊じゃなかった?」

「そうそう、そうなのでありまぁす!」

 指摘を受け、ここぞとばかりに勢い込んで喋っているのにゃ。

「だから、ミムカは『森の妖精』。間違っていませんでしょう?」

「くどい子ね。一体何遍そのセリフをいえば気が済むの?

 ……ああでも、それなら、どうしてこの宝玉をもらえなかったのかしら?」

(ミムカにゃんったら、痛いところを突かれたのではにゃあい?)

 ウチは、ちらっ、と顔を覗いてみたのにゃ。ところがにゃ。どうしてどうして。そんにゃ言葉ぐらいで窮するようにゃミムカにゃんじゃにゃい。

「決まっていますですよぉ。『これを与えたことで、災いが降りかかっては』と考えたに違いありませんです。ミムカを危険な目に遭わせてはいけないという親心でありまぁす」

 さらり、と答えを返されたので、ミストにゃんは、『これ以上の追及は時間のムダ。やっても面白くない』と判断したのにゃろう。『はいはい』と軽く受け流したあとは、『じゃあ、ミーナ』と視線の向きを変えたのにゃ。ミムカにゃんとの話を打ち切ろうとして、とは思うのにゃけれども、『ああぁぁん。ミムカはもっともっと話したいことがぁ。このまま置き去りはイヤでありまぁす』と食い下がってきたのにゃ。にゃもんで、『ごめん、今はそれどころじゃないの』との言葉で無理矢理、口を噤ましたのにゃん。

「待たせて悪かったわ。じゃあ、ミーナ。話を続けて」

 ミーにゃんが『うん』とうなずいてくれたことで、このどうしようもにゃい話し合いは幕を閉じたのにゃん。


「ワタシ、自分探しに出かけます!」

「アタシも自分探しに行くわん!」

「ウチも自分探しにゃあ!」

「ミーナちゃんもミアンちゃんも……ねぇ、どうして誰もとめようとしないの?」

「だってイオラはイオラの木に宿る精霊じゃない。イオラの森の外には出られないわん。

 つまりぃ。イオラのいう『自分探し』とはぁ」

「お散歩ってことじゃにゃいの。にゃら、ウチらも行くにゃん」

「……ふぅぅん、だわ」

 くるっくるっ。

「あっ。しゃがんで、床に『の』の字を書いているぅっ!」

「イオラにゃん。その齢でスネにゃくても」

「うるさい。だまれ。

 ……うふふっ。なんてね。フィーネちゃんならそう怒鳴りつけているところよ」

「怒鳴るものですか。お姉さまとは違います」


『ぎょっ! いつの間に!』


「はい。揃いも揃って、大変良いご返事、いえ、驚き方です」

 にこりっ。



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