エピローグ『ウチもミーにゃん』のその①
エピローグ『ウチもミーにゃん』のその①
マロンにゃんを助けてから、どれくらいの時が経ったにゃろうか。『リハーサルも無事に終わって、あとは本番を待つのみにゃん』の今とにゃって振り返ってみるに、少にゃく見積もっても、三連太陽の『日の出日の入り』が五十回はとうに超えているはず。
(えっ、そんにゃにも?)
短い指で数えて……たのにゃけれども、前足のみにゃらず、後ろ足を使っても指が全然足りにゃい。にゃもんで、とうとうミーにゃんとイオラにゃんにも手伝ってもらっての悪戦苦闘の末に……、びっくらこいた、そんにゃある日の朝にゃん。
「よっ。久し振り」
「ミロネにゃん!」
本当に久し振りの再開にゃん。みんにゃも嬉しいのにゃろう。『よくぞ戻ってくれましたでありまぁす』『帰ってきてくれて嬉しいわん』『愛に救われたのですね』『良かった良かった』にゃどと言葉をかけては、かわるがわる抱き締めたのにゃ。
いつもは愛想のにゃい、ぶすぅっ、とした顔が定番のミストにゃんさえもが、今は喜びの感情を惜しげもにゃく晒しているのにゃ。
「お帰りなさい。……にしても、あんな自爆めいたことをやって戻ってこられるなんて。
さすがね。わたしが守ってあげているだけのことはあるわ」
「どう致しまして、ミスト殿。……ははっ」
「ふふっ」
ミロネにゃんとミストにゃん。仲良さげに笑い合うその姿は、長いつき合いであることを如実に物語っていたのにゃん。
(でもにゃあ)
ううん。どうにゃんにゃろう。確かに見た目、ミストにゃんはミロネにゃんを相手にして喋っているのにゃけれども……、実際は違うのかもにゃ。本当の話相手はレミロにゃんか、マザーミロネにゃんにゃのかもしれにゃいにゃあ。
ミロネにゃんが自分にゃりの『個』を持っているとしてもにゃ。マザーミロネにゃんの影霊であることに変わりはにゃい。でもって、おんにゃじ影霊のレミロにゃんとも繋がっているとにゃればにゃ。ミロネにゃんとのお喋りは全てレミロにゃんやマザーミロネにゃんにも筒抜けにゃ。にゃもんで時と場合に依っては、このふたりからの言葉がミロネにゃんの口を通して紡がれることもあるのかも、と思えてにゃらにゃいのにゃん。
ウチには気ににゃっていたことが。『ミロネにゃんが誰と話をしているのか?』をはるかに上回る関心事にゃ。『こんにゃことを聴いてもいいのにゃろうか?』と迷いつつも、どうしても確かめずにはいられにゃい。にゃもんでミストにゃんが離れ、ひとりっきりとにゃったのをこれ幸いと近づいたのにゃん。
「ええと、ミロネにゃん。あんたは……」
向かい合ったウチのいわんとしたことが判ったのにゃろう、柔らかにゃ笑顔で、
「レミロの話では、回収は上手くいったそうだ。急な指示だったこともあって、手間取ってはいたらしいがな。おかげで、シリアルナンバーは327で変わらない。
身体こそ新しくはなったものの、『個』は貴殿もみんなも知っているオレのままだ」
「そうにゃの? 良かったのにゃん」
ほっ、としたのと同時に、胸に込み上げてきた歓喜の思いが、どどどぉっ、と身体を動かしたのにゃん。とめたくても、もう、とめられにゃいのにゃん。
「にゃら、お帰りにゃさああい!」
ぎゅぎゅうっ、と抱き締めるウチ。
にゃにもかもが、ハッピーエンド、としたかったのにゃけれども……、
ちと締めすぎたきらいがあるのにゃ。
「ちょ、ちょって待……ぶぐっ」
ばたっ!
あっけにゃく口から白い泡を吹いて、ぶっ倒れたのにゃん。
(これまた久し振りの光景にゃ)
本来にゃらば、慌てふためいて然るべきところ。でもにゃ。今は、『相も変わらず、柔にゃお方』のミロネにゃんに逢えたことがとぉっても嬉しいのにゃん。
(うんにゃ。いつもの日常が戻ってきたのにゃん)
ウチらミーにゃん同盟の面々が勢揃いしているここは、休火山『飛鳥』の頂上。今夜、霊華の打ち上げを行にゃう会場にゃ。かたわらには『見物用に』と配備したゲンじいにゃん特製の長椅子一台。加えて、お隣に山積みされているのは、ウチが造ったネコダマ百個にゃ。自分が得意とする変化、『空飛ぶ絨毯』の特大バージョンとにゃって、先ずは長椅子、続いてネコダマと、ここまで運び込んできたのにゃん。
手伝ってくれたのは、誰あろう、ウチのだぁい好きにゃミーにゃんにゃ。
実はイオラにゃんから、『ここに行ってはダメよ』『あれをやってはダメ』にゃどと、そりゃあもう細かいところまで、『えっ。それもダメにゃの?』ってウチが呆れるぐらいの注意を受けていたのにゃん。さしものミーにゃんも、これらの『ダメダメダメ』の制約尽くしには、ほとほと困ったようにゃ。動きたくても動けず。出番がにゃかにゃかにゃくて、うずうずしていたのにゃん。今か今かと待ちわびていたのにゃん。そんにゃミーにゃんに、『ミアンちゃんと一緒なら』との条件つきでイオラにゃんがやっと認めた登場の機会が、この『運び屋』というわけ。もう大喜びにゃ。ここぞとばかりにお得意の念動霊波をフルに発揮。長椅子とネコダマ、どちらも上手く操ってウチの上へと載せたのにゃ。飛んでいる間もにゃ。『落ちちゃダメだわん』と見張ってくれて助かったのにゃ。特に感謝したいのはネコダマのほう。一個足りとも欠けることにゃく無事に今、この場に置かれているのは、ミーにゃんの活躍があってばこその賜物にゃん。
「アタシが居なきゃ、なぁんにも出来ないんだから。やれやれ、困ったもんだわん」
言葉とは裏腹に、ウチの親友は嬉しそうにゃ顔をしていたのにゃん。
「私、ここへ来るのは二回目ですけど、結構小さいものだったんですね」
恐る恐る、との表現がぴったりにゃ。『這う』に等しいくらいの屈ませた格好でもって、そっと火口穴を覗き込むミリアにゃん。
ほぼ円状に空いている穴の直径は、ぴん、と身体を四肢ごと伸ばした大人のネコを尺度にすると、ざっと見、三倍ぐらいはあるのかもしれにゃい。
「ネコダマにはちょうどいい大っきさにゃよ」
本番でウチがやることといえばにゃ。ネコダマを火口穴の入り口、とがった先っぽの上に、ちょこん、と乗せるにゃけ。これの繰り返しにゃん。
(ネコダマ造りは大変にゃったにゃあ)
感慨深く、自分が造ったネコダマを眺めてみたのにゃ。ウチの頭を巨大化したようにゃデザインで、実際に置いてみると、オブジェみたいにゃ感じがしにゃいでもにゃい。ずうぅっ、と目をこらしていたら、にゃあんか自分の分身にも思えてきたのにゃ。
(壊すのが惜しくにゃってきたにゃあ)
リハーサルまでにはまにゃ間があるもんで、取り敢えずは、どけておくことにしたのにゃん。
一連の打ち上げ準備において最大の功労者と目される友にゃちが、『やぁっと出来たんだ』と半ば呆れたようにゃ顔で話しかけてきたのにゃ。
「んもう。ボクたちの配管作業なんか、とうの昔に終わっちゃったよ。おまけにさ。君に逢いたくても全然逢えないときた。交信で『いつ出来るの?』って幾ら呼びかけたって、いっつも返事は決まって、『あと二、三日ぐらいかもにゃ』ばっか。『なにかボクにやれることはないかい?』ってツッコミをかけても、『まぁおとにゃしく待っていにゃさい』としかいってくれない。もう八方塞がり。『どうしちゃったのかなぁ?』って、ずうぅっ、と心配していたんだよぉ」
「面目にゃい」
ぶぅたれるミクリにゃんの言葉に、しゅん、としたのはいうまでもにゃい。
「ウチとしてもにゃ。もぉっと早く終えたかったのにゃ。終えるつもりにゃったのにゃよ。
にゃのに、設計段階でいきにゃりつまずいてしまったのにゃん。
一回分の霊力の量やら、起爆のタイミングやら……。
とにかくにゃ。あれもこれもと、決めにゃければにゃらにゃいことが、溢れんばかりに出てきてしまったのにゃん」
「そうかぁ。うんうん。そうだろうね」
「困った、にゃんてもんじゃにゃい。『どれくらいの高さでネコダマを破裂させるか』とか、『星をどんにゃ風に描くか』とか、まぁ盛りだくさんの内容で、こっちはてんてこ舞いにゃん」
ウチの弁明に言葉を添えるかの如く、ミロネにゃんも口を挟んできたのにゃ。
「オレ自身はカプセルに収容されて、保守空間の地下に保管されていたから詳しくは知らないんだが……、結構大変だったみたいだな。
あのレミロが、『もう限界、って悲鳴を上げたくなるくらい、ここで何度も何度もシュミレーションを繰り返しました。で、ようやく出来上がったのが、今日の明け方近くでしたよ』って、ぼやき口調でオレに訴えたぐらいだから」
「えっ。とすると……」
途切れたミクリにゃんの声。続いて、『驚きと同情』の入り混じった『顔と声』がウチへと向けられたのにゃ。
「ミアン君は、ほとんど寝ていないんだ。そういえば、目が赤っぽいね。いや、歩き方もおかしいな、とは思っていたんだ。千鳥足っていうのかな? 夢遊病者みたいに足元がふらついていてさ。そうなるくらい時間を忘れて没頭していたってことか。
大変だったね。ネコだっていうのにさ」
「まぁにゃん」
「ミクリ殿。レミロもだ。ここへ来る前に、保守空間にも顔を出したんだが、くたばる寸前、みたいな姿を晒していたよ。椅子に、ぐたあっ、と身体を横たえたまま、『久々に疲れました』なんて弱音を吐いていたんだ」
「ふふっ。そうなんだ。『みんな、お疲れ様』ってわけだね。
で? ボクの目の前に居るミロネ君は?
助かってから、相当、時間が経っているはずだよね?
今の今までなにをやっていたんだい?」
問われた相手の顔がちょっとうつむき加減に。見れば、申しわけにゃさそうにゃ表情で、返事にもそれと感じられるのにゃ。
「地下で目覚めたあとは、いつもの通りさ。
保守空間を抜け出て、天空の村を見守っていた。それだけだ。
済まんが、オレに出来ることっていったら」
「ふふっ。気にしなくたっていいさ。君が見守っているってことは、すなわち、マザーミロネ様に見守られているってことだからね。これ以上、頼りになる強い味方はないよ」
「ミクリ殿。気休めでもそういってくれると嬉しい」
「本気の本気でそう思っているよ。ねっ、ミアン君」
「そうにゃよ。有り難いと思っているのにゃん……あっ」
ウチは不満に思っていたことがあったのにゃ。ミロネにゃんとミクリにゃんが話している間も、『にゃんにゃったっけ?』と、ずうっ、と考えていた。それが今、やっと想い出せたのにゃん。
(そうにゃ。今こそいわねば)
……ということでにゃ。ちょっとばかし、愚痴っぽく喋ってみたのにゃん。
「向こうではミロネにゃんに逢えにゃかったにゃ」
「そりゃそうだ。ああ見えても保守空間は結構広くてな。地下からあがっても、レミロやミアン殿が居た場所からは相当離れているんだ。
オレはそのまま外に飛び出したから、まっ、当たり前といえば当たり前かな」
「ちょこっとでも顔を出してくれればにゃあ」
「オレは今、ここに生きている。なら、逢おうと思えば、直ぐに逢える。
それで十分だったのさ、オレには。……そして、また逢えた」
「うんにゃ。逢えたのにゃん」
「あらためていうよ。お帰り、ミロネ君」
「お帰りにゃさい、ミロネにゃん」
「あ……有難う」
ミロネにゃんの端正にゃお顔に、ほんのり、と赤みが差したのにゃん。
(ぶふっ。可愛いところもあるのにゃん)
「泣いても笑ってもこれが最後のお話。エピローグの始まりにゃああん!」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「ミーにゃん。いよいよ先が見えてきたにゃあ」
「うん。先が見えてきたわん、ミアン」
「いやあね。ふたりともそんなことを口にする歳じゃあないでしょ?」
「……」
「……」
「ミーにゃん。今回のウチは、ふらふら、にゃよぉ」
「そのことなんだけどね。良ぉく考えてみたら、いつもとなぁんにも変わらないじゃない。
村のあちらこちらでぶっ倒れては、アタシの念動霊波のお世話になっているわん」
「そうね。ミーナちゃんがミアンちゃんを搬送している姿って、イオラの森では、ちょっとした話題の見世物になっているわ」
「そんにゃあ」
ぽっ。かきかき。
「こらぁっ! 照れながら頭をかいている場合じゃないわん!
ちゃあんと反省しなさいわん!」
「うんにゃ。
ミーにゃんは可愛くて優しくて親切にゃ。有難うにゃん」
「えっ……。そ、そんなぁ。小っ恥ずかしいわぁん」
ぽっ。かきかき。
「ほらほらぁ。ミーナちゃんこそ、照れながら頭をかいているじゃない」
「ア、アタシはね。ただ綺麗で優しくて親切な創造主に造られたから、それで」
「まぁミーナちゃんたらぁ」
ぽっ。かきかき。
「ぶふっ。照れにゃがら頭をかくのはイオラにゃんもおんにゃじにゃ。
やっぱ似た者同士にゃん。ウチらって」
「うん!」
「類は家族を呼んだのね!」




