第十五話『マロンにゃんを助けるのにゃん!』のその⑥
第十五話『マロンにゃんを助けるのにゃん!』のその⑥
マロンにゃんに近づくと、にゃあまん様のお腹が光り始めたのにゃん。
(ウチらの時とおんにゃじにゃ。マロンにゃんを取り込もうとしているのに違いにゃい)
「マロンにゃん。早くその光の中に入るのにゃん」
「ええと、大丈夫にゃのでちゅにゃ?」
「もちろんにゃよ。ウチが保証するのにゃん。にゃ、ミクリにゃんもにゃろう?」
「えっ。……そ、そうだね」
ウチとミクリにゃんの声を聴いて安心したのにゃろう。いわれるがままマロンにゃんは光の中へと消えていく。……やがて。
「ミアン。マロンがアタシのそばに来たわん。
元気一杯みたいだから、なぁんにも気にしなくていいわん」
ミーにゃんが教えてくれた。続けてマロンにゃんも、
「はい! まだまだ元気でありまちゅよぉっ!」
にゃんとも張り切った声。ほっ、と胸を撫で下ろしたのは……、
にゃあまん様に乗り込んにゃウチらみんにゃ、にゃったのに違いにゃい。
ウチは妙にゃことに気がついたのにゃ。
「にゃあ、マロンにゃん。マロンにゃんはどうやってここまで来たのにゃ?
確か、もっと奥のほうに居たんじゃにゃかったっけ?」
保守空間のパネルを見たウチの記憶が正しければ、そのはずにゃ。
「それがでちゅね。もがいていたら、あたちゅを包んでいるこの、ずぶずぶっ、としたモノと一緒にここまで来てしまったのでちゅにゃ」
「ダマラと一緒に? はて?」
どうにも状況が良く呑み込めにゃい。にゃもんで、
くるっ。
ちゃあんと説明してくれると思われる相手を振り返ったのにゃ。
「にゃあ、ミロネにゃん」
期待して声をかけてみたのにゃけれども、予想に反して首は横に振られたのにゃ。
「いや、こちらではなにもしていない。
しかし、マロン殿がここまで来ているのは事実だ。となると、なにかのせいでダマラ全体が動いていることになるが……、果たしてそんなことがあり得るのか?
そもそもダマラを造っているのは保守空間だ。今まで行なったどのテスト結果を引っ張ってきても、ダマラが勝手に動くなどという現象が発生したことは一度もない。何者かが故意に操ろうとしたってそんな簡単には…………待てよ、もしかしたら」
ミロネにゃんは両目を大っきく見開いて前方を凝視したのにゃ。
「そうか。奴なら」
ミロネにゃんの考えを聴くまでもにゃかった。ウチらはみにゃ、自分のお目目でダマラ以上の脅威が待ち構えていたのを知ったのにゃ。
『ふっふっふっふっ。はっはっはっはっ。あぁっはっはっはっ!』
聞き覚えのある高らかにゃ笑い声。近くまできてやっと目視出来るぐらいの淡い黄赤色の光粒子、ダマラの中に、あの黒い翼が現われたのにゃ。
『餌に釣られてまんまと引っかかったか』
「レイアにゃん!」
緊迫した雰囲気の中、ミロネにゃんから、この場にそぐわにゃい嬉しげにゃ声が。
「ははっ。そうか。原因は邪霊子か。
道理でシュミレーションと大きく違う結果になったわけだ。
前提条件には含まれていないのだからなぁ。無理もない」
顔もきらきらと輝いている。原因が判って、『ばんざぁい!』みたいにゃ感じにゃ。
「あのにゃあ、今はそれどころじゃ」
「だが、腑に落ちないこともある」
一瞬で困惑げにゃ顔とにゃってしまったミロネにゃん。あまりの態度の変化にウチは言葉を失ってしまったのにゃん。そんにゃウチの繊細にゃ心を知ってか知らずか、お喋りはそのまま続けられたのにゃ。
「一体全体、あんなところに陣取ってなんの役に立つというのか?
得られるものなどなにもないはずだが?
なぁみんなはどう思う?」
「ふにゃ?」
(いきにゃり聞かれてもにゃあ)
困ってはみるものの、ウチらは『アホ』という固ぁい絆で結ばれたミーにゃん同盟の友にゃち同士。話を振られたのに、『にゃにもいわにゃい』では格好がつかにゃいではにゃいの。にゃもんで、
「ウチ、知らにゃいにゃよぉ」とこれは当然ウチ。
「アタシも」とミーにゃん。
「べ、別に悪いことはしていませんよ、私は」とミリアにゃん。
「ふぅ。わたしに聞いてどうするの?」とミストにゃん。
「ぜぇんぜぇん、判りませんでぇす」とミムカにゃん。
「ふふっ。聞く相手を間違えているんじゃない?」とミクリにゃん。
マロンにゃんを含めて、みんにゃがみんにゃ揃って、首と、手もしくは前足を振っているのにゃ。そんにゃウチらの反応にミロネにゃんは一言。
「仲いいな。相変わらず」
ウチらがお喋りをしている間にも、事態は刻一刻と変わっていく。
「おっ、すごい! ミアン殿、あれを」
すごい、にゃどといわれれば、見たくてたまらにゃくにゃるのがウチの性分。にゃもんで、『にゃにごとにゃ?』と、ミロネにゃんが指差すほうを振り向いてみたらにゃ。
「にゃんと!」
ダマラがどんどんレイアにゃんの個体に吸い込まれていく。それにつれて、黒い翼もどんどん大きにゃものに。あっという間に霊穴路一杯のでっかさにゃ。
ミロネにゃんの疑問を解いたのは、レイアにゃんの言葉にゃ。
『確か、ミアンとかいったな。
我には見えるぞ。どんなものに身を包もうとも、貴様の気配だけはな』
「にゃんと!」
『先だっては良くも我の邪魔をしてくれたな。お礼はたっぷりとさせてもらおう。
貴様のイオラの命の欠片を奪い、滅ぼしてやるぅっ!』
迫りくる黒い翼の個体。増した赤い瞳の輝きは憎しみの光とも目に映るのにゃ。
『おや? それは』
瞳は、にゃあまん様の顔からお腹へと向けられたのにゃ。
『面白い。その個体の中にはもう一つイオラの命の欠片がある。
好都合だ。それも頂くとするか』
(まずいにゃ。ミーにゃんが見つけられてしまったのにゃん)
でもにゃ。やっぱり、ウチがターゲットみたいにゃ。再び瞳はにゃあまん様の顔へ。ウチを、ぎろり、と睨みつけたのにゃん。
(困ったにゃあ)
こうみえてもウチはれっきとした女の子にゃ。今の今まで、こんにゃすごみのある睨まれ方をした経験がにゃいもんで面食らっている。にゃんか金縛りにでも遭ったかのように身動きが取れにゃくにゃっているのにゃ。『どうするのにゃ? どうするのにゃ?』とネコ頭は既にパニック寸前。にゃのにレイアにゃんったら、こっちの事情もお構いにゃしで、好き勝手にゃことを始める始末にゃ。
『ダマラの力は既に我のもの。今度こそ、貴様らにトドメを刺してやる!』
ごおおぉぉっ!
突如、こちらへと襲いかかってきたのにゃん!
(そんにゃあ、心の整理もまにゃついていにゃいというのにぃ)
ぐわばっ!
「ふにゃん!」
動きようがにゃく、ウチ、いや、にゃあまん様は、レイアにゃんの身体に包まれてしまったのにゃん。
『このまま圧し潰してやる!』
気炎を吐いて、ぎゅうぎゅう、と身体に霊圧をかけてくるのにゃ。心配にゃったもんで、『みんにゃあ、大丈夫にゃああん?』と声をかけたら、みんにゃがみんにゃ、『なんともないよぉ』との意味の言葉を口を揃えて答えたのにゃん。どうやら、この感覚を味わっているのはウチにゃけみたい。にゃもんで思わず、がっくり。ひとりにゃけ貧乏くじを引いたようにゃ、そんにゃ気分にゃ。
(頭を占有しているからに違いにゃい。一体どうしたらいいのにゃん?
このままにゃと、本当に圧し潰されかねにゃいにゃよ)
危惧を抱くも、『困ったにゃあ』を連発するのが精一杯のウチ。
と、ここでにゃ。ミロネにゃんから助け船が。
「ミアン殿。マザーの記憶に依れば、にゃあまん殿は力の戦神なのだそうだ。
なら、力尽くでぶっちぎってみたらどうだ?」
「にゃあるほど。おばあにゃんもそんにゃことをいっていたにゃあ」
他に試す手立てもにゃい。ということで、一も二もにゃく採用にゃん。
(よぉし)
身を屈め、四肢を折り曲げた姿勢をとったのにゃ。全身が圧迫される中、ひたすら身体中の霊力を溜め込み溜め込み、……そして。
「いっくにゃよぉっ!」
ずばあぁぁん!
一気に開放! 全身を思いっ切り拡げたのにゃ。放たれた霊力はレイアにゃんの個体をを黒い粒子にまで分解。弾け飛ばしたのにゃん。
でもって、あとには……、周りを囲っている霊穴路の紺青の輝きと、その中に拡がっているダマラの淡い光。この二つにゃけが残ったのにゃ。
「さすがにゃ。戦神の力は」
終わったと思った。脅威は去った、と。
……でもにゃ。残念にゃがら違ったのにゃ。
飛散したはずの黒い粒子があっという間に集結。たちまちダマラの淡い光の中に黒っぽいシルエットを浮かび上がらせたのにゃ。
「そんにゃあ」
シルエットはくっきりとした姿に。またもやレイアにゃんが現われたのにゃん。
「どういうことにゃん!」
『ふっふっふっふっ。邪霊子を引っつかせることで、ダマラの特性を知ることが出来た。
我はどうやら思いも寄らない拾い物をしたようだ。はっはっはっはっ。
互いを引き合う力。元の状態に戻ろうとする性質。これら二つのおかげで飛散しても、また舞い戻って一つになれる。復活が容易に出来る、というわけだ』
「にゃんと!」
『この個体を壊したければ、幾らでも壊すが良い。
力を使い続けるのだ。最後の最後まで。霊力を一滴残らず、使い切るまで。
それからで構わぬ。我が貴様を滅ぼすのはな。
ふっふっふっふっ。はっはっはっはっ。あぁっはっはっはっはっ!』
ウチはレイアにゃんの嘲笑をどうすることも出来にゃい。そんにゃウチを見かねて、にゃろうか。ミクリにゃんから声がかけられたのにゃ。
「ミアン君。右腕を思いっ切り、振るってくれ。拳骨をあいつの瞳にぶつけてやるんだ。
ボクの力も合わせて使えば、なんとかなるかもしれないからさ」
「ミクリにゃん……。うんにゃ、判ったのにゃん!」
再び迫りくるレイアにゃん。ウチもにゃあまん様として、レイアにゃんに飛びかかっていったのにゃん。
黒と白の個体が交差する中、ウチは、
ががぁん!
ミクリにゃんのいう通り、瞳に渾身の力を込めて拳をぶつけたのにゃん。途端に、
ずばあぁぁん!
レイアにゃんは木っ端微塵に砕けた……と思ったのも束の間にゃ。性懲りもにゃく、再び目の前に黒い翼が現われてしまったのにゃん。
(さっきとおんにゃじにゃ)
「ちえっ。キリがないなぁ。これじゃあ」
ミクリにゃんの零す通り、何回やっても結果は変わらじ。次第にウチらは疲れてきたのにゃん。
「ダメにゃ。ミクリにゃん。これじゃあ、幾らやってもムダにゃ」
『そう、ムダだ』
ミクリにゃんじゃにゃい。この嘲笑うようにゃ声はレイアにゃんにゃ。
『だが、ムダと判ってもやめるわけにはいくまい?
滅びがくるまで楽しむことだ。この無限の生き地獄の中を。
はっはっはっはっ。あぁっはっはっはっはっ!』
「ちっくしょう!」
いかにも悔しそうにゃミクリにゃんの声。ウチの心もおんにゃじにゃ。
(こうにゃれば)
ウチは切り札を使うことに。もうひとりの友にゃちに尋ねてみたのにゃ。
「にゃあ、ミロネにゃん。にゃにかいい方法はにゃいの?」
「ない」
「そんにゃあ!」
「こともない」
「にゃんと!」
「実際にやってみたことがないから、どうなるかは予断を許さないが……。
しかしながら、このままでは自ずとオレたちは全滅だ。
とすればだ。一か八か、ここは勝負に出てみるか」
「にゃにをするつもりにゃん?」
「霊覚が閉じているなら、開いてくれ。そうすれば、説明をしなくても直ぐに判る」
「霊覚にゃらとっくに開いているのにゃけれども」
「結構だ」
この言葉のあと、ミロネにゃんの霊覚交信が始まったのにゃん。
「レミロ、聴こえるか?」
「もちろんです」
「レミロ。マザーの名をもって許可する。オレに、ミロネ・シリアルNo.327に、対邪霊子用ワクチンプログラムを直ちにロードするんだ」
「ミロネ……、本当によろしいのですか? アレを使えばあなたは」
「構わない。速やかにオリオンにて作業を行なってくれ」
「了解しました」
本当に、『速やかに』にゃった。交信が終わると同時に、ミロネにゃんが宿っているにゃあまん様の左腕の拳が銀色に輝いたのにゃもん。
ミロネにゃん自身の姿が見えにゃい。でもにゃ。霊覚に依る交信は出来たのにゃ。
「ミロネにゃん。一体にゃにを?」
「ミロネという影霊は、造ったあとでも手を入れやすい。
『これをするのに是非とも必要』と思われる特性や異能力を新たに付加したり変更したりが容易に行なえる。
ミアン殿。レミロからそう聴いたはずだ」
「うんにゃ。……ってことはにゃ。ひょっとして、レイアにゃんにワクチンを注入するつもりにゃん?」
「それしか手はない。マザーの許しも得たから、あとは実行するのみだ」
得体のしれにゃい不安にウチの心は襲われたのにゃ。『とめにゃくちゃいけにゃいんじゃにゃいの?』とにゃにかがウチに話しかけてくる。
「そんなことをやって、あなた自身は大丈夫なの?」
ミストにゃんも心配そうににゃ。ウチらの仲間では一番ミロネにゃんと近い間柄にゃもん。無理もにゃい。ミーにゃん、ミムカにゃん、それにミリアにゃんも心配げにミロネにゃんを見つめているのにゃ。そして、ミクリにゃんも、
「ミロネ君。あんまり無茶なことはするなよ」
男の子同士ということもあるのにゃろう。先ほどの影霊同士の会話と今のミロネにゃんの様子から、『これは危険を伴うのかも』との思いをウチ以上に抱いたのかもしれにゃい。
「ミクリ殿。困難を突破するには、無茶をやらなきゃならないこともあるさ。
それにな。これは宿命だ。いざとなれば無茶を承知がオレの生きざまだ」
いつものようにゃ静かにゃる口調で語られた言葉。ミクリにゃんへ、というよりかは、ミロネにゃんの身を案じるウチらみんにゃへの返事とも聞こえたのにゃん。
前方を見据えるミロネにゃんの双眸には固い決意が伺えるのにゃ。『もはや、口出し無用』と誰もが受け取ったのに違いにゃい。
「よぉし、これで準備完了だ。
ミクリ殿。あの瞳にヒビが入るくらいの力でいい。にゃあまん様の右手に与えてくれ」
「お安い御用さ」
「それじゃあ、ミアン殿」
「うんにゃ。いうに及ばずにゃあ!」
不安を払拭しようと、勢い込むウチ。
レイアにゃんとにゃあまん様が再び交差する中、ウチらはミロネにゃんの秘策に打って出たのにゃ。
「アタシも無茶を承知だわん。……わうっ」
「ワタシだって。……はうっ」
「意地を張り合って我慢にゃんかして……。
あのにゃあ。
いい加減にふたりとも、さっさとおトイレに駆け込んにゃらどうにゃん?」




