第十五話『マロンにゃんを助けるのにゃん!』のその⑤
第十五話『マロンにゃんを助けるのにゃん!』のその⑤
ええとぉ。胴体、左腕、右足、左足、それに尻尾と、全部で五つにゃから……、
と考えにゃくたって、当然、五にんにゃ。
(待てよ、あと五にんにゃら)
「ミーにゃん同盟! 緊急集合にゃあ!」
来るかどうかはともかくにゃ。一応、霊覚を使って仲間を呼んでみたのにゃ。
そしたら、にゃんと。
ずらぁりぃ。
「なにか呼んだわん?」とミーにゃん。
「お呼ばれしたから来てみたわよ」とミストにゃん、
「呼ばれて飛び出て、らんらんらん、でありまぁす」とミムカにゃん。
「べ、別に、悪いことはしていませんよ」とミリアにゃん。
「元々ここに居たが」とミロネにゃん。
まるで呼ばれるのを今か今かと待ち構えていたようにゃ。残りの仲間が一瞬で目の前に並んにゃのにゃん。
「うわあっ! にゃあまん様でありまぁす!」
大っきく声を張り上げた翅人姿のミムカにゃんに続いて、相も変わらず『ぽかん顔』のミロネにゃんを覗けば、こっちを見ているみんにゃがみんにゃ、目を丸くしたさま。にゃもんで、『話しかける前に気がついても良さそうにゃもんにゃ』とウチは笑いをこらえるのに精一杯にゃ。
(さぁて。にゃんて話そうにゃん?)
話しかける言葉に迷っていたらにゃ。突如、にゃあまん様が輝き出したのにゃん。目にも鮮やかにゃ、膨らむように拡がっていく深碧の光。あれよあれよという間に、ミーにゃん同盟の仲間みんにゃを包み込んでしまったのにゃん。
「これは……」
輝きの強さにウチの視界も閉ざされる。でもにゃ。それはほんのわずかにゃ間にゃった。光が和らぐにつれ、視界がぐんぐん開けていくのにゃ。
「ふにゃ! 居にゃくにゃってしまったのにゃん!」
目の前に並んでいた友にゃちが、にゃんと、ひとりも居にゃい。
(どうにゃってしまったのにゃん?)
焦りにも似た感情がウチの心に芽生える中、幾つもの声が耳元に湧き上がってきたのにゃ。次から次へと聞こえてくる言葉の内容から察するに、どうやら、みんにゃがみんにゃ、にゃあまん様の中に収まってしまったみたいにゃのにゃん。
「これってないわん。なんで、アタシがお腹なのわん」とミーにゃん。
(安全そうでいいじゃにゃいの)
「わたしったら……、そう。右足になったのね。ふふっ」とミストにゃん。
(蹴飛ばすのが好きそうにゃ)
「こっちは左足みたいでありますよぉ」とミムカにゃん。
(しっかりと歩けるかもにゃん)
「どうして私が尻尾なんです! 私のどこが尻尾なんですか?」とミリアにゃん。
(適材適所にゃ)
「オレは左腕か。なにかのお役に立てればいいが」とミロネにゃん。
(あんたはウチらの切り札にゃんよ。
お役に立ってもらわにゃいと困るのにゃ)
ミクリにゃんとおんにゃじように他のみんにゃも、丸っこいモノの中に自分の姿を浮かばせているのにゃ。『にゃら、ウチは?』と思って聴いてみたらにゃ。やっぱり、にゃあまん様の顔部分におんにゃじ姿で見えるみたいにゃん。
まっ、それはそれとしてにゃ。
不満をたらたらと口にするのも居たのにゃけれども、七にん揃い踏みの効果はてきめん。心強いばかりじゃにゃい。にゃあまん様の身体全部が動けるようににゃったのにゃもん。
「じゃあ、ミアン君」
「うんにゃ。行こうにゃん!」
……とその前ににゃ。
ずんぐりむっくり。
モチモチの身体の中で意を決していたのにゃん。
心密かに温めていた決めゼリフ。満を持して今ウチは口に。
「乙女にゃのに、にゃあまん!」
左手の拳は左胸の辺りに、右手の拳は高く掲げて、と自信たっぷりの格好にゃ。
(決まったにゃあ!)
そのままの姿勢で、自分に、惚れ惚れぇっ、としていたのにゃけれども……、
あろうことか、早々とクレームがきてしまったのにゃん。
「あのぉ、ボクは男の子なんだけどさぁ」
「オレもだが」
相手は、いわずとしれた空気の読めにゃいミクリにゃんとミロネにゃん。
(やれやれ、にゃん)
出端をくじかれはしたものの、それで引っ込むようにゃウチではにゃい。
「そんにゃお堅いことをいわにゃくても。
にゃあ、ミクリにゃん、ミロネにゃん。ウチら友にゃちにゃろう?」
ウチの『友にゃちにゃろう?』の説得って、案外、効果があるのにゃ。それが証拠に、
「まぁ……いいけどね。性別の違いなんてボクら霊体からすれば、実体を持つ生きものほどには意味がないんだから。ミもフタもないい方をすれば、『ボクは今日から女の子だ』といってしまえば、それだけで『はい、OK』になっちゃうしね」
……とまぁミクリにゃんから理解ある言葉を引き出せたのにゃ。
(本当、ミもフタもにゃいことをいうにゃあ)
そういいたいのを、ぐっ、とこらえてにゃ。でもって、もうひとりを相手に。
「ミロネにゃんは?」
「ミクリ殿が譲ったんだ。なら、オレも異存はない」
意地の欠片もにゃい、めっためったの発言にゃ。
(まっ、ウチとしては有り難いのにゃけれども)
「にゃら、無事、合意に達したってことでおふたりも一緒に」
「うん、判った」「しょうがあるまい」
(ウチって説得力のあるネコにゃのかも。たいしたものにゃ)
と自画自賛。……ってことで、
「みんにゃあ! あらためて、いくにゃよぉ!」
今度は声を揃えての決めゼリフにゃん。
『乙女にゃのに、にゃあまん!』
「くくうぅっ。完璧にゃあ。完璧に決まったのにゃあん!」
「……そおぅ?」
ミクリにゃんはツッコミを忘れにゃい。
ごごごごおおぉぉっ!
にゃあまん様はネコ人型モード。二つ足で立つ戦神にゃ。ウチは、いや、にゃあまん様は両手の拳を空へと向け、両足の裏から白煙を放ちにゃがら、上へ上へとあがっていく。
気がつけば、みんにゃがみんにゃ、声はすれども姿が見えにゃい。
どうやら、『会話がしたいにゃあ』にゃどといった、相手が必要、と思った時にゃけ、浮かび上がってくれるみたいにゃ。
そして……ある程度の高さまで達すると、今度は火口へと急降下にゃ。
(勢いをつけて飛び込めば、それにゃけダマラの中を移動する力が高まるのに違いにゃい)
そう考えたからに他にゃらにゃい。ところがにゃ。ある事実に思い当たった時、ウチは戦慄を覚えたのにゃん。
ある事実とは……、ずばり、にゃあまん様は実体にゃのにゃん。
(このままでは火口を壊してしまうのにゃん!)
それと気がつくも時既に遅し。とめようにもとめられにゃい。『万事休すか』と思いきや……、いともあっさりと、突入に成功にゃん。
(そういやあ、通れるぐらいの幅はあったにゃあ)
火口穴を最初に見た時、『大っきくにゃい』と思ったのが頭にあったもんにゃから、つい誤解をしてしまったのにゃ。良ぉく考えてみれば、にゃあまん様の肩幅って大人とにゃった人間のそれとおんにゃじぐらい。余裕で入り込めるわけにゃ。
ずぼぼぼぼおおぉぉっ!
「こ、これは……」
「ねっ、すごいだろう? ミアン君」
ついに休火山『飛鳥』の中へと突入。そして……もうここは霊穴路の中にゃ。紺青色に輝く網目の光に囲まれた円筒形の空間。地の妖精のみにゃらず、外からの霊力をも完全に遮る『閉じた世界』にウチらは居るのにゃ。
(にゃんとも不思議にゃ眺めにゃん)
つい、うっとりとしてしまいがち。でもにゃ。待っていたのは、ものすっごく分厚い粘土の中に潜ったみたいにゃ抵抗感にゃ。ミクリにゃんが苦労をして戻ったのも判る気がする。とはいうものの、悲観するには及ばにゃい。にゃってウチらは今、『にゃあまん様』にゃのにゃもん。両腕は身体に、ぴたっ、とつけたままで、使っているのは両足の裏から放つ白煙状の霊力のみ。にゃのにダマラの海を難にゃく進むことが出来るのにゃ。すっごいのにゃん。楽々にゃのにゃん。
(にゃら、ウチらは乗り込んでいるにゃけ?
いや、そうじゃにゃい。マロンにゃんを助けたいと願うウチらの心が、にゃあまん様を動かす、霊力を発揮させる、原動力とにゃっているはずにゃ)
そう信じて轟音を木霊させつつ、こんにゃもの平気のへっちゃらちゃらちゃら、とばかりに速度を更に上げ、ひたすら霊穴路を降下していくのにゃ。
「ふにゃ? にゃにか声が聞こえたようにゃ……」
カーブに差しかかった頃。とはいってもにゃ。火口に飛び込んで間もにゃい。にゃもんで、『まさか』と思ったのにゃ。
ところが……、気のせいではにゃかった。続けて直ぐに、
「助けてぇでちゅう!」
絹を裂くよにゃ子ネコの悲鳴。
「マジにゃん! あとわずかにゃん!」
思わず、両手の拳に力が入る。……そしてついに!
「居たぁっ!」
ウチら自身がびっくりするくらい、たいして時間もかからずに救いたい者のところへと辿り着くことが出来たのにゃ。
カーブが終わったほんの少し先、斜め下へと真っ直ぐに延びていく通路上にて、ばたばたと、もがいていたのにゃん。
「マロンにゃああぁぁん!」
この距離にゃら聞こえるはずと、力一杯声をかけるウチ。どうやら気がついたようにゃ。マロンにゃんはこちらへと顔を向けた。にゃんともいえにゃい嬉しそうにゃ表情。きらきらと目を輝かせにゃがら叫んにゃ言葉は。
「ヨモギ団子! 美味しそうでちゅう!」
思わず、あわわわ。
バランスを崩して、四肢をばたつかせたものの、『冷静に、常に冷静に』とのレミロにゃんから声をかけられたこともあって、にゃんとか姿勢を元の状態へと戻せたのにゃん。
「マロンにゃあん!」「マロンくぅん!」
も一度、声をかけたら、可愛いお顔が、はっ、とした表情に。
「ミクリちゅわんとミアンちゅわんですかぁ?」
「うんにゃ」「そうだよ」
「良かったぁ。助けに来てくれたんでちゅね。
ぐすん。わたち……怖かったでちゅう!」
涙目にゃがらも、ほっ、とした顔にゃ。
「うんうん。でも無事で良かったぁ」
「こんにゃところでよくぞ辛抱したものにゃん」
これぞ感動の再会にゃん。
少しでもそばに行こうとしてか、ばたばたと、もがくマロンにゃん。
「大丈夫にゃ。そのままでいにゃさい」
ウチは、『少しでも距離を短く見せられたら』との思いから、両腕を前に伸ばしたのにゃ。いうまでもにゃくマロンにゃんの目には、にゃあまん様がそうしているとしか映らにゃい。でもにゃ。それでいい。安心してくれさえすればそれでいいのにゃん。
「ミクリんがミアンの右腕なら、アタシはミアンの……お腹……かぁ」
「にゃにを考え込んでいるのにゃん? ミーにゃん」
「ねぇ、ミアン。『腹八分目、病なし』ともいうわん。
だからね。これ以降は食事を控えてもらうわん」
「にゃんと!」
「でもって、ついでにね。冷たいモノもこの際だから遠慮してもらおうかな、って」
「にゃんと!
……にゃあ、ミーにゃん。ちぃとばかし、誤解しているんじゃにゃいの?」
「へっ? どういうことわん?」
「ミーにゃんはにゃ。ウチじゃにゃくて、にゃあまん様のお腹の中に居るにゃんよ」
「はっ!」
「ぷんぷん! ぷんぷん!」
「どうしたのにゃ? ミーにゃんはにゃにを怒っているのにゃん?」
「お腹よ、お腹」
「痛いのにゃん?」
「違うわん。どうしてアタシがにゃあまんのお腹に居なきゃいけないのわん?
リーダーとしては頭であるべきだわん。ミアンは席を譲るべきだわん」
「んにゃことをいわれてもにゃあ。
でもにゃ。お話にもある通り、どんにゃに活躍しようとも、ぜぇんぶ見た目には、にゃあまん様がやったことににゃるのにゃよ。それでもいいのにゃん?
表には一切出られにゃいでにゃ。ずうぅっ、と裏方でも? 縁の下の力持ちでも?」
「ううっ。そういわれると……」
「はぁい。裏方専門のイオラでぇす。
ためらわれるようでしたら、こちらにお任せ下さいませんかしら?
ふふっ。ぜぇんぶ快くお引き受けいたしますわぁ。ふふっ」
「ふにゃ! 開き直ったのにゃん!」
「それどころじゃないわん! ほらぁ、なんかもう死に物狂いな目をしているのわん!」




