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第十三話『霊華作戦開始にゃん!』のその①

 第十三話『霊華作戦開始にゃん!』のその①


 ヴィナにゃんに逢えた翌日。

 ウチは今、眩しい朝日を浴びにゃがら森路を歩いているのにゃ。

 普段は落ち葉が目立つ地面。強風に煽られたせいにゃろうか。向こうのほうまで、乾いた白っぽい土がムキ出しとにゃっているのにゃん。

(しっかし……どうしたものやら。困ったにゃあ)

 ウチの頭を悩ましているもの。それはにゃ。ヴィナにゃんから放たれた霊力が行き着く先にゃん。

「外へと出すにしてもにゃ。そのままでは森に被害が……」

 あれこれと考えている間にふと気がついたのにゃ。ウチの頭に強い陽射しが照りつけているのを。自然と顔は見上げる格好に。

「今日はまた一段と暑くにゃるかもしれにゃいにゃあ」

 三連太陽……三つの小さにゃ太陽が、ごちゃ、と一つにまとまっているのにゃん……の陽射しが燦々と降り注ぐ地上から見る空は、どこまでも青く透き通っている。天空の村自体が雲海の上に浮かんでいることもあってか、雲はめったに姿を現わさにゃい。にゃもんで邪魔ものにゃしの美しさにゃ。

「今は星が一つも……うんにゃ、見えにゃいのにゃん。きっと太陽が出ているからにゃ。やっぱり夜ににゃらにゃいと。……ああでも、『見える』とはいってもにゃ。実際には、うぅぅん、と高いところにあるっていう話らしいしぃ…………うん?」

 ウチは自分の言葉に、にゃにか引っかかるものを感じたのにゃ。

「うぅぅん、と高いところ…………そ、そうにゃん!」

 ウチは閃いたのにゃん。

(これは是非とも確かめにゃいと)

 好奇心も探究心もネコ一倍旺盛にゃウチ。ネコ人型モードで立つと、近くの小石を拾って少しばかりの霊力を加えたのにゃ。

(さぁどうにゃることか)

「どこまでも飛んでいけにゃああぁぁん!」

 右腕を思いっ切り振って、手にした小石を真上に力一杯放り投げてみたのにゃん。

 ひゅううぅぅっ。

 でもって、小石が上へ上へとあがっていくさまを目で追っ駆けたのにゃ。

「おっ、見えにゃくにゃったにゃあ」

 このままはるか宇宙のどこまでも、……んにゃわけはにゃかったのにゃん。

 ひゅううぅぅっ。

「戻ってきたのにゃん……」

 ウチは忘れていたのにゃ。どうしてかは判らにゃい。空に放り投げても、また落ちてくるという単純にゃことを。

 ものすごい勢いで落ちてくる。『逃げる』という発想すら、頭に浮かぶ余裕もにゃいほど。

(ど、どうすればいいのにゃん!)

 ネコって、慌てふためいている時は自分でも予想にゃにしにゃいことをやるものにゃ。ウチは咄嗟に左右の前足で頭を抱え、その場にしゃがみ込んでしまったのにゃん。

 ごつん!

「ふにゃああぁぁん!」

 にゃんと! まるで狙い定めたかの如く、ウチの頭上、左右の前足が届いていにゃいど真ん中に命中したのにゃ。


 ……イオラにゃんにいわせるとにゃ。今のウチの身体って、実体波で造られたものの中では最上級の部類に入るとか。最高のクオリティで仕上げたそうにゃ。まっ、それはそれで大変有り難い話ではあるのにゃけれども……。


 実体にかぎりにゃく近いせいにゃろう。ご丁寧にも痛みを感じるのにゃ。しかも敏感にににゃ。にゃもんで、アホの頭が壊れた、みたいにゃ感覚が全身くまにゃく突っ走ったのにゃん!

 ばたぁん!

 為す術にゃくウチは仰向けに倒れたのにゃ。

「んもう! ぐすん。痛いのにゃん痛いのにゃん痛いのにゃん!」

 じたばたじたばた。じたばたじたばた。

 ウチは涙目で地べたを転げ回ったのにゃん。

 そして……痛みが多少にゃりとも引いた頃には身体中の至るところが土まみれのありさま。

「ぐすん。毛繕いをしたばっかにゃのに……。ぐすん。みじめにゃん」


 困ったことに毛繕いをし直す暇がにゃい。にゃもんで不本意ではあるものの、妖体にゃらではの奥の手を使うことに。実体波のリフレッシュにゃ。はた目には一瞬、白っぽい光に覆われるにゃけ。それで全てが完了する。幸いにゃことに、おばあにゃんからもらった額の花丸印は残ったままにゃ。小ざっぱりとした姿とにゃったウチは意気揚々と、ミーにゃん同盟が集まる予定の『遊びの広場』へ。

(誰か来ているといいにゃあ)

 そう期待しつつ、広場のど真ん中にあるウチらの『遊び場』へと辿り着いたのにゃん。


「にゃあ、みんにゃあ」

 くるっ。

 その場に居る全員の視線が一斉にこちらへと向けられたのにゃ。

「ひぃふぅみぃ……。あれっ、ミクリにゃんが居にゃい」

「ミアン君。ボクはここだよ」

「ふにゃん!」

 いきにゃり後ろから声をかけられたもんで、不覚にも、悲鳴のようにゃ叫びを張り上げてしまったのにゃ。振り向いてみれば、そこには赤と青の毛並みを持つネコの姿が。

「ミクリにゃん……」

 にゃんたること。化けネコとあろうものが、地中ネコにゃんかに背後をとられたのにゃ。しかもにゃ。全然気がつかにゃかったのにゃん。自分がいかに生温い生活を送っているかをあらためて思い知らされた次第にゃん。

 ウチを驚かせたことで、『さぞかし自慢げにゃ顔にゃろうにゃあ』と思いきや、さにあらずにゃ。どちらかといえば、悔しそうにゃ表情を滲ませているのにゃん。

(はて? どうしたのにゃろう?)

「ねぇ、ミアン君。ヴィーナス様に逢えたんだって?」

 レミロにゃんが『閉じた交信』にて報告したのにゃ。もちろん、ウチも聴いている。

「うんにゃ。それもこれもみんにゃが一生懸命、宝玉を探してくれたおかげにゃよ」

「今更こんなことをいっても愚痴にしかならないんだけどさぁ。

 実はね。ボクたち地中ネコも、残り四つの宝玉がどこにあるのか、あとヴィーナス様がどこにおられるのか、両方とも突きとめたんだよ」

「にゃんと!」

「ええと……、君と別れてからそれほど時間は経っていないんじゃないかぁ。ボクのところへ他のナワバリに棲む地中ネコからぞくぞくと情報が寄せられたんだ。もちろん、玉石混合だったけどね。その一つ一つを情報源の相手に直接、『本当かい?』って確かめていったら、探しているもの全部が、『これは間違いない』ってとこまで絞れたんだ」

 ぱちぱちぱち。

 ウチは思わずネコ人型モードとにゃって拍手をしてしまったのにゃん。

「さすがは地中ネコを総動員したにゃけのことはあるにゃあ。たいしたもんにゃ」

 ウチは心からの賛辞を。にゃのに、ミクリにゃんは浮かにゃい顔にゃ。

「でさ。手に入れようと思って向かったんだけどね。行く先々で、『ああ、それなら』って、君に渡したって話を聴かされてさぁ。そのたんびに、がっくり、だよ。そうやって君のお尻をずうっと追い駆け回した挙句が、『ヴィーナス様とのご対面』っていうゴールまでされちゃった。全くうっ。いいところなし。骨折り損のくたびれ儲けって奴さ」

(ウチがミクリにゃんの立場にゃったとしたら……、

 愚痴どころか暴れまくってしまうかもしれにゃいにゃあ)

 気持ちは痛いほど判るのにゃ。でもぉ。

「そうにゃったのにゃん……。お疲れ様でしたにゃん」

 ぺこり、と頭を下げたのにゃ。ウチに出来る『ねぎらい』といったら……、

 これしか思いつかにゃかったのにゃん。


「念願のヴィナにゃんとの出逢いも終わったのに、第十三話の始まりにゃあん!」

 ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。


「ふふっ。ねぇねぇ、ミアン。

 ミクリんにさ。お尻を、ずうっ、と追い駆け回されていたんでしょ?

 どんな気分? やっぱあれかなぁ。プレイガールとか、そんな感じわん?」

「モテモテじゃない。ミアンちゃん」

「あのにゃあ。にゃあんかふたりとも勘違いしてやしにゃいぃ?」


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