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第八話『霧の園。にゃんとも摩訶不思議にゃ世界にゃん!』のその③

 第八話『霧の園。にゃんとも摩訶不思議にゃ世界にゃん!』のその③


 見るからにさわやかにゃ顔がウチの直ぐそばに。

「ほら。ごらんなさい、ミアン。破壊のかぎりを尽くしたおかげで、こんなにも広々とした空間が出来たわ。それじゃあ早速」

「にゃんかやるのにゃん?」

「その為にやったの。まぁ見てて」

 ミストにゃんは開いた両手を前に差し出したのにゃ。『見てて』といわれたから、素直に見ていたらにゃ。左右の手のひらから、ものすっごい勢いで水流を放ち始めたのにゃ。

 ぐるぐるぐる。ぐるぐるぐる。

 水流は霊蛇のようにゃ細長いくねくねした姿とにゃって円を描いていく。まるで自分の意志を持っているみたいにゃ。みるみる間に幾つもの輪が造られ、らせん状……ミストにゃんにいわせると、『コークスクリュー型』にゃとか……のレールを完成させたのにゃん。

「水にゃのに、にゃんで固まっているのにゃん?」

「わたしたちが使える霊力の一つよ。液体から固体に至るまで、放った水の固さを自由自在に変えられるの。触ってみれば判るわ」

「にゃら」

 輪っかのレールを前足で押してみたのにゃ。

 ぷよんぷよん。ぷよんぷよん。

「見た目以上に柔らかいにゃあ」

「でしょ? わたしたちが一番良く使うのが、このぷよぷよレベル。壊れても安全だし、扱いやすいし」

「どうしてみんにゃ透明にゃの? 色をつければいいのにぃ」

「つけたくてもつけられないのよ。霧雨の見る夢自体は色がつくわ。わたしたちや、ほら、山のようにね。でも、わたしたち自身に色をつける力はないの」

「にゃら、しょうがにゃいにゃあ」

「ええ。しょうがないのよ。

 さて。しょうがない話をいつまでしてもしょうがないから、これくらいにして、と」

(にゃんかムキににゃっているようにゃ……)

「これで『ぷよぷよコースター』のレールのほうは完成。

 あとは……ふふっ、そうね。これがないと始まらないわね」

 またしてもミストにゃんの手のひらから水流が放たれたのにゃ。『次はにゃにをする気にゃ』と思っていたら、手をかざした先、足元近くのレール上に、一つの個体を造り出したのにゃん。

「わたしたちの乗り物。『コースター』よ」

 目の前に現われた四角っぽいボックスの中には、座席らしきものが大小二つ。どちらも背もたれつきにゃ。聴けば、予想違わず、幅の大っきいほうはウチ。小っちゃいほうはミストにゃん。ミストにゃんのほうが座席がだいぶ高くにゃっているのは、ウチと目線が合うように、と考えたからとか。他にも、落下防止の為、ということで、それぞれの座席の大きさに合わせて安全ベルトと安全バーが用意されていたのにゃ。安全ベルトは座席自体に、安全バーは座席の手前、ボックスの内壁に取りつけられているのにゃん。

 もちろん、これらもみんにゃ、透明のぷよぷよ、ばっかにゃん。

「さぁ乗って乗って」

(いきにゃりいわれてもにゃあ)

「これって大丈夫にゃの?」

 見上げれば、レールの一番上はかにゃりの高さにゃ。

「大丈夫よ。たとえ途中で落ちても、どこもかしくも、ぷよぷよだしね」

「にゃるほろ」

 思わず納得にゃ。にゃらば、とミストにゃんとともに座席に腰を下ろそうとしてはみたもののにゃ。

「にゃあ、ミストにゃん。狭すぎにゃのにゃけれども」

「あら、本当だわ。見た目以上に、もわんもわん、なのね」

「余計にゃお世話にゃ」

「実体波を造り変えて座席に合わせられないの?」

「あのにゃあ。どれほどの霊力を使うと思っているのにゃん?」

「それもそうね。だったら」

「にゃったら?」

「当たって砕けろ。実力行使あるのみだわ」

 とまぁそんにゃこんにゃで、『無理矢理』との言葉がぴったりにゃくらい、ぎゅうぎゅうぎゅう、と圧し込まれ、ベルトもきつく締められ、にゃどの悪戦苦闘を重ねた結果、ようやく座席に収まったのにゃん。

「ふぅ。やっとだわ。ねぇ、ミアン。そのもわんもわんな身体、なんとかならないの?」

「ミーにゃんが気に入っているもんで、これでいいのにゃん。

 んにゃことより、座席がきつくて。もちっとユルめられにゃいのにゃん?」

「我慢しなさい。乗れただけでもラッキーなんだから」

「にゃにがラッキーにゃ。ウチをこんにゃぎゅうぎゅうづめにゃ目に遭わせて」

 にゃどと口喧嘩をしていたらにゃ、コースターが動き始めたのにゃ。

 がたんがたん。がたんがたん。

「おっ。ゆっくりで、にゃかにゃか落ち着ける感じじゃにゃいの」

「今だけよ」

 がたんがたん。がたんがたん。

「ほぉらっ。一番てっぺんまで来たわよ」

 コースターがとまったのにゃん。待ってはみたものの、動く気配がにゃい。にゃもんで、『ひょっとして故障にゃの?』と尋ねようとしたまさにその時にゃ。

 急降下が……にゃんの前触れもにゃく始まってしまったのにゃん!

 ごおおぉぉっ! ごおおぉぉっ!

「ふにゃああっ!」「うわあああっ!」

 ウチばかりかミストにゃんさえもが悲鳴を上げている。高速にゃ走りの中、隣を、ちらっ、と覗けば、平べったい蒼白にゃ顔。風に吹きつけられているせいもあるとは思うのにゃけれども、恐怖に固まった、といったほうが、ぴったし、にゃ。

(造った当の妖精が怖がってどうするのにゃん)

 そうツッコミを入れたいところにゃ。でもにゃ。ウチとて心に余裕はにゃい。ミストにゃんとおんにゃじ形相をしているのにゃろうし、膝も既に、がくがく状態。

 ごおおぉぉっ! ごおおぉぉっ!

「ふにゃああっ!」「うわあああっ!」

 降下したと思えば、上昇。上昇したかと思えば、また降下。レールに沿ってらせん状に、ぐるぐる、と。ふたりして絶叫し続け、バーを握る手にも思いっ切り力が入る。身体も自然と硬直にゃ。『早く終点へ』とそれにゃけを願い、生きた心地もしにゃいありさま。

(妖体にゃって怖いものは怖いのにゃん)

 がたがたがた。がたがたがた……がたっ。

 一番下に着いてとまった時、どれほど、ほっ、としたことにゃろうか。

「誰よ! どこのアホが、こんなどうしようもないものを造ったのよ!」

「あんたにゃ! あんた!」

 泣いた。叫んにゃ。悲鳴にも似た声でののしり合った。そして……あとはいうまでもにゃい。『助かったのにゃあ』と抱き合ったのにゃん。生きている喜びに、全身が震えたのにゃん。


 がくがく。がぐがく。

 ミストにゃんもウチも膝が笑っていて、歩くのもままにゃらにゃい。コースターから降りると、ぺたん、とその場に腰を下ろすのが精一杯にゃ。

「ミストにゃん。あんたっていつもこんにゃにゃの?」

「ううん」と首を横に振るミストにゃん。「今日は特別」

「にゃんで特別にゃの?」

「判らない? お客様へのサービスよ」

 ウチは肩を、ぽん、と叩かれたのにゃ。つまり、お客様とはウチのこと。

「こんにゃサービスは要らにゃい!」

 心の底から湧き上がってきた衝動が言葉とにゃって口から飛び出した瞬間にゃ。


「こぉらあぁっ!」

(ふにゃ?)

 怒りを含んにゃようにゃ声がどこからともにゃく聞こえてきたのにゃん。

「でもどこから……あっ、あそこにゃん!」

 高くそびえ立つ山と山の間から多数の点々が。コースターでのうっぷんを晴らすが如く再び建物壊しを始めたミストにゃんへ、仲間と思われる妖精らが飛んできたのにゃ。

 ばしゃああん!

 教会らしき建物が、ぶっ壊れた直後にゃ。いつもの如く瞬時に再生を果たしたミストにゃんの前に、ひとりの妖精が立ちはにゃかったのにゃん。

「あら、ドン。なにかあったの?」

 ミストにゃんの言葉を聞くや否や、相手は、うんざり、とした顔に。

「何度いったら判るのよ。あたしはドナ。ドンじゃない!」

「あら、いやだ。『首領』って意味でいったんだけど」

「ああそれなら……って、誰が首領なのよ!」

「あなた」

 びしっ!

「こらぁっ! いかにも当然、といった感じでこちらを指差すなぁ!」

 今にも噛みつかんばかりの妖精に対し、ミストにゃんは沈着冷静といった態度で接しているのにゃ。

(多分、顔見知り、いや友にゃち同士にゃのかもしれにゃいにゃあ)

 自分を『ドナ』と呼んだ相手もまた翅人型妖精にゃ。肩より少し延びている髪は黒髪で、全身の色は茶色がかった白。霊服と二枚翅の地の色はともに赤茶けた色にゃのにゃけれども、二枚翅のほうには光沢のある水色の帯も走っているのにゃ。

 さもリーダーといわんばかりの、『鼻筋の通った、つんとお澄まし顔』が、いやがおうでも目につくのにゃ。勝気にゃ仕切り屋としての性格が伺える顔にゃん。

(ミストにゃんと、いい勝負かもにゃ)

 会話からも、ウチの予想が的中した、と容易に察せられるのにゃ。

「こんなに散々荒らして。一体どういうつもりなの?」

「文句があるの? なら勝負といこうじゃない。負けたらおとなしく聞いてあげる。

 でも勝ったら、わたしのいう通りにしてもらうわ」

「いう通りに? なによ、それって」

「ここのおさが大昔に、どこぞで拾った、とかいう紫色の宝玉。

 もう譲り受けたんでしょ? あれを渡して頂戴」

「冗談じゃないわ。どうしてあなたなんかに」

「そう思うなら勝てばいいのよ。そうじゃない? それとも」

 ミストにゃんの顔に、せせら笑うようにゃ表情が浮かぶ。

「これだけ大勢居るのに、わたしひとりに勝てないとでも?」

 挑発らしきセリフに、ドナにゃんはまんまと乗せられてしまったのにゃん。

「判ったわ。その言葉、忘れないでね。

 さぁみんなぁ! 行くよぉっ!」

 おぉうっ!

 ドナにゃんの後ろに群がっていた男女混在……と思うのにゃけれども……の妖精らが揃って拳を振り上げ、雄叫びの声を。さしものミストにゃんもびくつくかと思いきや、どうしてどうして。『怖いもの以外に怖いものはない』といわんばかりの不敵にゃつら構えにゃん。

「どこからでも」

 右手の親指とネコ差し指をおっ立て、いかにも余裕綽々といった感じにゃ。むしろ、こっちのほうが不安ににゃってきたのにゃん。

(どうするつもりにゃろう? どうにゃってしまうのにゃろう?)


 ウチが戦々恐々とする中、ドナにゃんが闘いの火蓋を切ったのにゃん。

「ミスト、直ぐに吠え面をかかせてあげるわぁ。みんなぁ! 戦闘開始よぉ!」

 ずばばばばあぁっ!

 集まった色とりどりの妖精らから一斉に水流波が放たれたのにゃ。放たれた大量の水が荒れ狂う波と化してこちらへと向かってくる。慌てて、『大変にゃあ』と頭を抱えてしゃがむ込むウチに対して、ミストにゃんに動じた様子は欠片もにゃい。腕を組んで、あたかも『来るなら来い!』といわんばかりの迎え討つ姿勢にゃ。

(女の子をやらせておくには、もったいにゃいほどの勇ましさにゃん)


 それからあとのことは……いうまでもにゃい。すさまじい水圧がかかったのにゃろう。ウチの頭上に浮かんでいた友にゃちは、あっけにゃく霧とにゃって飛散したのにゃ。

(おいたわしや、にゃん)


「ミアン。アタシがぐったりとしていた時に遊んでいたわん?」

「ミアンちゃん。村の一大事なのに遊んでいたの?」

「……面目にゃい」


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