第七話『お姫様は大変にゃのにゃん!』のその②
第七話『お姫様は大変にゃのにゃん!』のその②
今ウチは、薬園内を勢い良く流れる赤い川の渦中にゃ。
にゃんらかのきっかけで大量発生したネモンにゃんの姉妹……ラモアの木の実のことにゃ……が燥ぐ力ってものすっごいのにゃけれども、それも束の間にゃ。決して長続きすることはにゃい。無理矢理、みたいにゃ形で生まれた木の実は、実体としても霊体としても不完全。どっちつかずの存在にゃからにゃ。ウチもそれを知っているから急ぎはするものの、慌てず騒がず、救助に当たっているのにゃん。
「ずいぶんと流されてしまったみたいにゃん」
ミーにゃんが生まれたのも、ウチが完全にゃ霊体として復活出来たのも、みんにゃイオラにゃんのおかげ。イオラにゃんが自分の命を分け与えてくれたからにゃん。とまぁそんにゃわけで、ミーにゃんとウチはイオラにゃんの命の欠片で繋がっているのにゃ。にゃもんで直ぐ近くにゃらば、心を澄ませるにゃけで相手の居場所が判るのにゃん。
「ええと…………あっ、ミーにゃん!」
意識を失っているのにゃろう。木の実に揉まれにゃがら抗うこともにゃく漂っているのにゃ。ウチはもう無我夢中でミーにゃんのところへと泳いでいく。
(あともう少し……あとわずか……あと……やったにゃぁん!)
ようようの思いで辿り着いてその小さにゃ身体を抱くと……、あとは木の実らが造り出した川の流れに身を任せたのにゃ。
(もうしばらくの辛抱にゃ)
予想通り、赤い実らの勢いが次第に衰えてきたのにゃ。でもって次々と土に沈んでは消えていく。干上がったかの如く赤い川は消え、ラモアの落ち葉で彩られた地面が露わとにゃる。赤と黄色がせめぎ合うその中に、ウチは足を下ろすことが出来たのにゃん。
「静かににゃったにゃあ」
「でも、ほんのひとときにゅ」
ネモンにゃんがウチのそばへとやってきたのにゃ。
「赤い川がなくなれば、逃げた生き物たちが次々とここへ舞い戻って、また賑やかににゃるのに決まっているのにゅ」
「にゃろうにゃぁ」
「わたにゅもそろそろ消えるにゅ。
次にラモアがたくさん実らせるまで、さよならにゅ」
「そうにゃん? これでお別れとはにゃあ。
ネモンにゃん。今度はちゃあんとした木の実が生る中で生まれるのにゃよ。
そしたら、もっと長くお喋りが楽しめるのにゃし」
「また逢いたいにゅ。それじゃあ」
ぽとん。
好奇心のみで生まれた木の実の末路はあっけにゃいもの。ネモンにゃんも姉妹らとおんにゃじに、土の中へと沈んで消えたのにゃ。
(さよにゃら、ネモンにゃん)
ウチと別れる際にネモンにゃんが見せてくれた一瞬の表情。ちょっとのつき合いにゃったのにゃけれども、ネモンにゃんもウチとおんにゃじ思いにゃったのに違いにゃい。
『さみしいにゅ。さよならは』
そう顔に書いてあった……と思えてにゃらにゃいのにゃん。
「ふぅ。助かったわん」
意識を取り戻したもののにゃ。ミーにゃんは落ち葉が敷き詰める地べたに身体を横たえたまま。いかにも、ぐったり、とした様子にゃん。
「大変にゃ目に遭ったものにゃ。……にしても、どうしてあんにゃに?」
察しはつくのにゃけれども、一応、聴いてはみたのにゃ。
「それがさぁ」
さも、『呆れた』といわんばかりの顔にゃ。
「ラモアの木って、単に数が多いっていうだけじゃなくってね。イオラと同じくらい長く生きている者も中には居るの。つまり、精霊が宿っているってわけ。もちろん、イオラやアタシともお友だちよ。だから話し相手になってもらうことも度々なんだけどぉ。
彼女の子供たち、っていうか、木の実のことだけどねぇ。これがまぁ大変なのわん」
ウチはネモンにゃんを脳裏に浮かべたのにゃ。
「おとなしくしていられにゃい者ばっかにゃと?」
「そういうこと。ふぅ」
ミーにゃんは再び深いため息を。目の前に居るのは幼児期真っ盛りのお年頃にゃ。こんにゃにため息ばかりさせて良いものかと、密かに心痛めるウチがそこには居たのにゃ。
「幾らも喋らないうちによ。ありとあらゆる枝から、ぱっ、ぱっ、ぱっ、と実が顔を出してきてね。『イオラよ! イオラの子よぉ!』って燥ぎ出したの。『厄介なことになったわん』と思って逃げ出そうとしたら、そうはさせじとばかりに、アタシに引っつくわ、囲み込むわ、でね。『きゃあきゃあ』って黄色い声を張り上げて、もうどんどんどんどん群がっていく始末なの。んもう、手がつけられないったらありゃしない。気がついてみれば、赤い激流のど真ん中で助けを求めていたわん」
にゃんとも不運にゃ話と、同情の念が絶えにゃい。と同時に、にゃんとにゃく、ではあるものの、ネモンにゃんら赤い実の気持ちも判るようにゃ気はするのにゃ。
「それは仕方のにゃいことにゃのかもにゃあ。
ここはイオラの森で、ミーにゃんは、村の守護神とも女神とも称される精霊イオラにゃんの一粒種。造り子にゃ。どうしたって引っ張りだことにゃらざるを得にゃい。いわば運命みたいにゃものにゃもん」
「気持ちは判るわん。でもねぇ。ふぅ」
(またため息にゃん)
「本当、『お姫様』はつらいわん。『有名妖精』の身って過酷だわん。
……って、モワン。それは」
ミーにゃんが目をパチクリさせて指差した先はウチの額にゃん。
「うんにゃ。おばあにゃんの花丸印にゃん」
「そ、そんなぁ。アタシだって、イオラだってもらっていないのにぃ。
うわあぁん。悔しいわん悔しいわん、悔しいわんったら、悔しいわん」
疲れた様子はどこへやら。盛んに悔しがるミーにゃん。
気の済むまで……多分にゃ……喚いたそのあとは、
「こうなったら、束の間の癒し、と洒落込むしかないわん!」
ぱたぱたぱた。ぱたぱたぱた。
ぴたん。
にゃにかが背中にくっついた感じをウチは覚えたのにゃ。
「翅を仕舞って、と」
ミーにゃんら翅人型の妖体は、翅を身体の奥へと引っ込められるのにゃ。翅人型から翅が消えるわけにゃから、その姿も人型とにゃるのにゃん。
「よぉし、これでいいわん」
ごろごろごろ。ごろごろごろ。
(やっぱりにゃん)
ミーにゃんの、ごろごろ、が始まったのにゃ。
一頻り、ごろごろ、をしたあとのことにゃん。
ぴたっ。
(おや? ミーにゃんの動きがとまったようにゃ。どうしたのにゃろう?)
「どうしたのにゃん? ひょっとして飽きたとか?」
(児童への第一歩を踏み締め始めたのかもにゃ)
期待を胸に聴いてみたのにゃ。ところがにゃ。
「許せないわん!」
そういうと、ミーにゃんはウチの目の前に降り立つ。見ればにゃんか怒っているみたいにゃ。
(はて? 何事にゃん?)
理由は……直ぐに判ったのにゃ。
「モワンの花丸印は、いずれアタシも直談判でもらうとして」
(幼児の言葉とも思えにゃい過激にゃ発言にゃ)
まっ、それはともかくにゃ。次いで口にした言葉が疑問を氷解。
「アタシは弄ぶ側であって弄ばれる側ではないわん!」
「あのにゃ、ミーにゃん」
児童への第一歩どころか、たにゃの手に負えにゃいダダっ子にゃん。
「だから、モワン」
「ウチはミアンにゃ」
「どっちでもいいわん。仕返しをするわん」
(どっちでも良くはにゃいのにゃけれども)
「でも仕返しって、どうやって?」
これまた直ぐに判ったのにゃん。
「アタシは弄ぶ側であって弄ばれる側ではないわん!」
「けだし、名言にゃ。……でもにゃあ。イオラにゃんはどう思うのにゃん?」
「けだし、名言……には違いないと思うわ。けれどねぇ……」
「ウチとしてはにゃあ。弄ぶ側よりも、弄ばれる側でいいのにゃ。
それで、みんにゃが幸せににゃるのにゃら」
「そうね。ワタシとしても弄ぶ側よりも、弄ばれる側でいいわ。
それで、みんなが幸せになるのなら」
たじたじ。
「ええと……ねぇ、ミアン、イオラぁ。今の文句はね。アタシの本意じゃないわん。
お話で喋ったことを繰り返したにすぎないわん。
ううん。お話の中だってね。成り行きで喋っちゃっただけ。そこんところをゼえぇったいに間違えちゃダメだわん」
「いつににゃく弁明しているのにゃあ」
「しかも長いわねぇ」
「それにぃ……。
ミーにゃん。顔に汗がびっしょりにゃよ。ずいぶんと焦っているのにゃあ」
「本当にね。もう涙か汗か判らないぐらいよ」
「んもう! 当然、焦るわん! 泣きもするわん! ……ぐすん」




