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第四話『地中ネコへ愛を込めて、にゃのにゃん!』のその①

 第四話『地中ネコへ愛を込めて、にゃのにゃん!』のその①(休)


「取り敢えずはあそこまで行こう」

 眼下に拡がるは、沼底に連なる岩礁群。水面を通して射し込まれた陽の光が、藻にたかられていにゃい黒っぽい岩に含まれている『きらきら』をいやが上にも映えさせるのにゃ。

 ミクリにゃんのかけ声に応じて、ごつごつとした岩の上にウチも降り立つ。

「どれ、下はどうにゃって」

 岩の縁ぎりぎりから身を乗り出して覗いてみたのにゃ。

「やっぱりにゃ。沼底まであともう少しにゃん」

 と、ここでいきにゃり、

「じゃあ、ミムカはここまででありまぁす」

 そういって、にこやかにゃ顔つきで手を振った連れのひとりは、くるっ、と背を向けたのにゃ。そして……ウチらの返事も待たずに、『泳ぎ出した』と思う間もにゃく、すぅっ、といずこかへ消えてしまったのにゃん。

(んもう。とりつくしまもにゃいにゃあ)

 てっきりウチらと一緒に行動してくれると思っていたので、肩透かしを食わされた感じがしにゃいでもにゃい。

「さっきのことをまにゃ根に持っているのにゃろうか?」

「いや、違うと思うよ」

 ミクリにゃんの話に依れば、一回は入ったとのこと。でもにゃ。自分には合わにゃかったとかで、それっきり、にゃのにゃそうにゃ。

「ミムカにゃんって見かけに依らず気難しい性格にゃのかもしれにゃいにゃあ」

「まぁあそこは好き嫌いはあるよ。君だって初めはまごついていたろう?」

「まごつくもにゃにも、そもそも入ろうとして入ったわけじゃにゃいもん」

「そういやあ、そうだっけ」

「居たのにゃってほんのわずかにゃし。にゃから今もおんにゃじにゃよ」

「今も、って……。じゃあ、ちょっとは緊張しているんだ」

「うんにゃ」

 恥ずかしにゃがら……、実は想い出そうにも、『ああ、確かそういうこともあったにゃあ』ぐらいが精一杯。それでもにゃ。当時、『無我夢中』ないし『パニック』並みの状態に陥っていた覚えはあるのにゃ。にゃもんで、ためらいもあるにはある。でもにゃ。やめようとは思わにゃい。当たり前にゃ。『行ってみにゃければ判らにゃい。にゃらば行こう』という単純明快さこそがネコの信条にゃもん。臆病にゃところがある反面、探究心や好奇心も旺盛にゃ生き物にゃのにゃ……てにゃことで。

(もはや行くしかあるまいにゃん)

 思いを伝えるのに言葉は要らにゃい。ウチの『にゃら行くにゃよぉ』の視線をミクリにゃんが受け留め、ミクリにゃんの『了解』の視線をウチが受け留めたのにゃもん。これでもう十分。あとすることっていったら、せいぜい、うなずき合うことぐらいにゃん。


 うずうず。うずうず。

「さぁ地中へ突入にゃん!」

 前に入ったのは一度っきり。まにゃまにゃウチには未知にゃる領域にゃ。とても泰然としてはいられにゃい。早速、実体波を解除。霊体本来の、ぼぉっ、とした姿へとにゃっていく。

(面倒くさいにゃあ。でもまぁこればっかりは仕方がにゃいしぃ)

 どうして霊体とにゃるのか? 答えは簡単。地中は土砂や岩でびっしりにゃ。これらをかき出しにゃがら進んでいく、にゃどという芸当は、とてもウチらネコには無理にゃ話。たとえ、やれたとしてもにゃ。一体どこへ行くというのにゃん? 四方八方、埋め尽くされているというのに。霊体にゃからこその棲み家に出来る世界にゃ。地中ネコたちも霊体の身体がゆえに、縦横無尽に泳げる。郷にっては郷に従えにゃ。こちらもそうにゃるのが自然というもの。

(いよいよ、にゃん)

 ぶるぶるぶるっ。

 緊張感が身体中を貫いていく。にゃもんで思わず武者震いにゃ。

「まぁまぁ。そんなに気負わなくたって。地中だってイオラの森の中。なんにも心配なんて要らないよ」

「それはまぁそうにゃのにゃろうけれども」

「ミアン君らしくないなぁ。

 ほら、いつもみたいにさ。『ゆったり』とした気分で構えていなよ」

「ゆったりとした、にゃあ」

 ばたあっ。

 ウチは全身の力を抜く。するとどうにゃる? 当然のことにゃがら、倒れたのにゃ。うつ伏せか、仰向けか? 今回はうつ伏せという結果に終わったのにゃん。『実体波を解除しておいて良かったにゃあ』とつくづく思う。おかげでウチの美貌を潰さずに済んにゃのにゃもん。

「それは『ぐったり』。ふふっ。相変わらずだねぇ。

 じゃあ、行くよぉ、ミアン君」

「ま、待つのにゃん!」

 ボケをかましている暇はにゃいらしい。あたふたと立ち上がると、ミクリにゃんの横に並んにゃのにゃ。

「ふぅ。ミクリにゃん。いつでもいいにゃよぉ」

「うん。迷うことはないと思うけど、なるだけ離れないほうがいいかもしれないねぇ。

 よぉし。出発ぁぁっつ!」

 ミクリにゃんは岩礁を蹴って軽くジャンプ。ふわっ、と身体が浮いた、と思った次の瞬間、姿勢を転じて頭を下へ。真っ逆さまに降下していく。身体をくねらせて泳ぐ先には沼底が。

『ぶつかるのにゃん!』と思いきや、ネコの頭が、胴体が、そして尻尾が、音一つ立てずに、まるで吸い込まれるように……沈んでいったのにゃ。


 続いてウチも、というところにゃ。でもにゃ。一緒に潜らにゃかったことが心に微妙にゃる変化をもたらしたのにゃ。

「にゃんかにゃあ」

 さすがにここまで来ると、眼下に見えるは白っぽい砂に覆われた沼底。『にゃにか居るにゃ』と思ったら、ごっつい岩礁の脇に水草がゆらゆら踊っているにゃけ。

「これぞ、殺風景というに相応しい眺めにゃん」

 ミムカにゃんもミクリにゃんも今は居にゃい。にゃんかさみしくにゃってしまった。霊覚を研ぎ澄ませてみる。泳ぐ小魚や真下を這う小動物の気配がしれた。まばらにゃがらも命の息吹はあるようにゃ。でも……所詮はウチとは違う生き物。あっちもそう思っているのにゃろう。直ぐそばを通ってもそっぽを向いているのにゃ。気分転換に、『お食事を』と思ってもみたのにゃけれども、先ほどのミムカにゃんの言葉が頭にちらついてしょうがにゃい。にゃもんで食欲が湧かず、獲る気分にもにゃれにゃい。

「はぁう」

 やるせにゃい思いで大っきにゃため息を突いたあとは、ミクリにゃんが消えた辺りに目をこらしてみたのにゃ。均したみたいにゃ沼底には、まるで『ここから先はなにもないよ』といわんばかりに白いのっぺらぼうの砂場がどこまでも拡がっていて、地中という存在を神秘のベールで覆い隠しているかのようにゃ気さえしてくるのにゃ。

「にゃあんか不気味に思えてきたにゃあ」

 ぐずぐずしている間に、自分がにゃんでここに来たのか記憶が定かじゃにゃくにゃってきた。もとよりネコは忘れやすい生き物にゃ。『ミクリにゃんを見送ったらしい』まで覚えているにゃけでも満足すべきにゃのかも。

「ここで、『また明日』って別れたのかもしれにゃいにゃあ」

 仮にそうにゃら、ぼぉっ、とここに留まっている理由はにゃにもにゃいことににゃる。理由がにゃいのに、こんにゃさみしいところに居るのはアホ以外の何者でもにゃい。でもって、ウチはアホではにゃい。ぎりぎり手前にゃ。そう信じている。にゃもんで、

「さぁてと。ミクリにゃんも居にゃくにゃったし、ウチもそろそろ帰るのにゃん」

 そう呟いた時には水面のほうに頭が向いていて、今まさに泳ぎ出そうとしていたのにゃ。

「にゃん!」

 ウチは岩礁を蹴った。ところがにゃ!

 しゅるしゅるしゅるしゅるしゅるしゅる! まきまきまきぃっ!

「うわっ! にゃんにゃこれはぁ!」

 にゃにかが右の後ろ足に巻きついたのにゃ。見れば、ミクリにゃんが良く使う霊糸……霊力で造られた糸にゃ……にそっくり。青い光を放っているのにゃん。

 殺風景にゃところのイルミネーション。いやが上にも引き立つ。いつもにゃら、『とても綺麗にゃん』とうっとりするところにゃ。でもにゃ。今は……、

 それどころじゃにゃい!

 ぐいぐい。

 地中から延びているそれは、にゃかにゃかの曲者にゃん。引っ張って解こうとしても絡みついたまま。いや、それどころか。

「ぎゃ、逆に引っ張られているのにゃあああ!」

 ずぶずぶずぶ。ずぶずぶずぶ。

 ウチもまた地中へ。不本意にゃがらも、ミクリにゃんのあとを追う形とにゃらざるを得にゃかったのにゃん。


「第四話始まって早々、魔の手がウチを! といったところにゃん」

「まさに、手に汗握るシーン。深夜に並んじゃうくらい、次回が待ち遠しいわん」

「判るわぁ。ミアンちゃんの気持ち。二百年以上も生きているから仕方がないのよ。

 なぁんとか、『ぼけ』ぐらいで済むように祈っているわぁ……って、

 あら。どうしたの? ふたりとも。迷惑そうな顔をして」


「ねぇ、ミアン。お話の中に、『ウチはアホではにゃい。ぎりぎり手前にゃ。そう信じている』ってあるけど……」

「ぐすん。本当の本当に、そう信じていたのにゃよ。この時まではにゃ。ぐすん」

「ミアン……」

「ぐすん」

「うわっ。ちょちょっとぉ。イオラまでなんで涙ぐんでいるわん?」

「判るわぁ。ミアンちゃんの気持ち」

「待たぁ?」

「ぐすん。今度はにゃにをいうつもりにゃの? ぐすん」

「いつまでも若い。足腰、それから頭も達者だって、そう信じていたのにぃ。

 ふぅ。現実ってなかなか厳しいものねぇ……って、

 あら。どうしたの? ふたりとも。迷惑そうな顔をして」



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