第三話『探すのは遊びの広場からにゃん!』のその①修正01
第三話『探すのは遊びの広場からにゃん!』のその①
……実はにゃ。『それがいいわん。で? 誰がどこへ行くの?』とミーにゃんがいい出してから実際に捜索範囲が決まるまでには、こんにゃいきさつがあったのにゃ。
宝玉探しの手始めとして先ずは自分らの居る『遊び場』を中心に『遊びの広場』を探し回ったのにゃ。草むらの茂みの中を覗き込んにゃり樹木を登ったりもしてみた。でもにゃ。どこにもそれらしきものが見当たらにゃい。まぁここはウチらのホームグラウンドみたいにゃ場所にゃから、あればとっくに気がついていたはず。元々たいして期待はしていにゃかったのにゃん。
(それでも一応、念の為ににゃ)
ミーにゃんもウチとおんにゃじ思いみたいにゃ。
「ねぇ、モワン。これ以上探すのは時間のムダよ。他を当たったほうがいいわん」
「そうかもしれにゃいにゃあ」
再び草むらの真ん中に集まったウチら。ウチとミーにゃんが話しているのを耳にしたのにゃろう。ミクリにゃんが声をかけてきたのにゃ。赤と青の二つの毛並みを持ち、境目のみ紫の筋入りという、ミーにゃん同盟の中でも、にゃんともまぁネコ目を引く艶やかさ。『男の子にゃのに、どうしてにゃ?』と憤慨したくにゃるくらいにゃ。
「ミアン君。まだ探していないところがあるよ。しかもさ。うぅんと大きなところがね」
「大きにゃとこ? はて? どこのことにゃん?」
「もうずいぶんと探し回ったと思うわん。本当にまだあるの?」
「イヤだなぁ。気がつかないのかい? ボクやミムカ君の棲み家をさ」
「そうですよぉ。忘れちゃうなんてつれないじゃありませんですかぁ」
ミクリにゃんに続いて声をかけてきたのは……。
(またネコ型に変わったのにゃん)
白地に黒の縞模様という、これまたネコ目を引く姿のミムカにゃん。こちらは女の子にゃので、まぁ許せるのにゃ。
おしゃれっぽい毛並みの妖精ふたりが、揃って口をとがらしているのにゃん。
「そういえばそこもあったわん。ああでも……」
ミーにゃんは口を噤んで、うつむてしまった。表情を見てもにゃにげに暗いのが見てとれるのにゃ。
(あっ、そうか。ミーにゃんは)
気がついたウチは前足で優しく、ぽん、と肩を叩いたのにゃ。
「イオラにゃんからとめられているのにゃろう? 水の中に入ることは」
ウチの声に頭を上げたミーにゃんは、こくり、とうなずく。
「そうなの。イオラの森の中でも今のアタシが動けるのは陸から上だけ。温泉に入るのは別だけどね。水の中を潜れるまでになるには、まだまだ時間がかかるって。残念だわん」
「今はやっと、『精霊の間』から外へ飛び出したばかりにゃもの。しょうがにゃい。そもそもミーにゃんの幼児期が終わるのにゃって少にゃく見積もってもあと百年ぐらいはあるのにゃ。ここは気長に待つしかにゃいのにゃよ」
ウチが化けネコに生まれ変わったのと、ミーにゃんが生まれたのとは、ほぼおんにゃじにゃ。あれから二百年くらい時がすぎたとはいっても、ウチとは違って、ミーにゃんが棲み家から出ることは許されたのは、ほんの半年ぐらい前。にゃもんで自分の家の庭といっていい、イオラの森にしてもにゃ。まにゃ行ったことがにゃい場所、行けにゃい場所はたんとある。当然、出逢いも少にゃい。ミーにゃんにとっては、まにゃまにゃ未知の領域にゃのにゃん。
(まぁウチもエラそうにゃことはいえにゃいのにゃ。ちょくちょく精霊の間から外へ飛び出してはいたものの、幼いミーにゃんが気ににゃってあまり長くは出かけられにゃかったのにゃもん。たいしてミーにゃんと変わらにゃいのにゃん)
「そうかぁ。それじゃあ仕方がないねぇ。でもさ、ミーナ君。今は無理でも」
「いずれは入れますですよぉ」
地中ネコに続いて森の妖精……としておこうにゃ……が口にする慰めともとれる言葉に、ミーにゃんは思いっ切り、『うん!』とうなずいたのにゃ。
「イオラも約束してくれたわん。だからいつになるかは判らないけど、必ず。それまでは辛抱するわん」
「ボクも待っているからね」
「ミムカもその日が来るのを楽しみにしていますですよ」
「ミーにゃん。潜れるようににゃったら一緒に行こうにゃん」
「うん、モワン。有難う、ミクリん、ミムカん」
ミーにゃんが笑顔ににゃってくれてウチは、ほっ、としたのにゃ。と同時に、目の前に居るふたりのようにゃ優しく気遣ってくれる友にゃちに巡り逢えたことが、たまらにゃく嬉しかったのにゃん。
「わたし、『棲み家』の言葉を聞いて思ったのよね」
ミストにゃんが突如、口を開いたのにゃん。
ぎくうっ。
「うわんにゃあ!」
「ど、どうしたのよ、ミアン。急にびっくりなんかして。こ、こっちが驚くじゃない」
胸を撫で下ろすようにゃ仕草をしている。息遣いもちょっと荒い感じにゃ。
(やっぱり、ミストにゃんは怖がりにゃのかも)
「いやあ、にゃんでもにゃい、にゃんでもにゃい」
喋る前までは、両足を前に投げ出し、両手のひらを後ろの地面に着けての上半身を支えた格好。ちょっとへたばった様子で、ウチらが会話しているさにゃかも、ぼけぇっ、としたまま。聴いているのか聴いていにゃいのか、それすら判然としにゃかった。にゃもんで、よもや声までかけてくるとは夢にも思わにゃかったのにゃん。
化けネコたるもの、不意を突かれて思わず叫んでしまったのがにゃんとも悔しい。
「そう。それならいいんだけど」
ミストにゃんはそういって地面から両手を放すと、少し前のめりの姿勢をとったのにゃ。
「わたしたちもそれぞれ自分の棲み家に戻って探したほうがいいんじゃないかと思って」
「そうだな。オレもミスト殿の意見に賛成だ」
すぐさま手を上げたのはミストにゃんの右隣……ウチから見てにゃ……で膝を抱えて座っているミロネにゃん。口調や仕草がいかにも男の子っぽい。とはいえ、綺麗にゃ顔立ちと身体全身の曲線美が、自分が女の子であると無言で物語っている。あらためて性別を尋ねたことはにゃいのにゃけれども、いわゆる『男装の令嬢』という奴に違いにゃい、とミーにゃんとは良く話し合うのにゃ。
「ねぇ、ミアン。アタシもああなると思う?」
蹲っているウチの横っ腹に背中をもたれさせた我が親友が、そっと小さく呟くのにゃん。
「ミーにゃんはあれが理想にゃのにゃん?」
ウチも小声で聴き返したのにゃ。
「最終的な理想の形は、もちろん、イオラだけどね。当面の理想としてであれば」
「にゃあるほろ」
といってうなずいてはみたものの、イオラにゃんのどの姿に憧れているのかはさっぱりにゃん。
(霊蛇? 違うにゃろうにゃあ。霊魚? にゃら食べてみたいのにゃん。霊獣? 性格としては猛獣にぴったり、にゃのにゃけれども、好みじゃにゃさそう。ってことでつまるところにゃ。自分とおんにゃじ翅人かも。ああでも、これもパターンが多いにゃ。一体どれにゃろう?)
頭を悩ます問題はネコには合わにゃい。にゃもんで考える対象をもう一つのほうへと切り換えたのにゃん。
正直のところ、ウチの目から見ればミロネにゃんまでに至るのもにゃかにゃか大変そう。でもにゃ。ミーにゃんの夢は壊したくにゃいし、現実にそうにゃる可能性にゃってにゃきにしもあらず。にゃもんで取り敢えずは、
「それはミーにゃん次第にゃよ」と当たり障りのにゃい返事をしたのにゃん。そしたら。
「済まない」
ぎょっ!
いつの間にかミロネにゃんがウチとミーにゃんの顔を覗き込んでいたのにゃ。
「オレは一応、男の子だ」
そういうと、また自分が座っていたところへ、すたすた、と戻っていく。
「にゃってミーにゃん」
(まぁ、二つに一つはそうかも、ぐらいには思っていたのにゃ。
でもにゃとすると、あの胸の膨らみは……そうにゃ! 非常食を隠しているのに違いにゃい。あとで食べさせてもらうのにゃん)
それはそうと、隣が黙ったままにゃ。心配ににゃって振り返ってみる。
(ミーにゃん……。そんにゃにショックにゃったのにゃん)
ウチとは違って親友の思い込みは相当にゃものにゃったらしい。我が耳を疑うかの如く、口をあんぐりと開けたまま。でもって、やっとのことで口にした言葉は。
「ダ、ダマされたわん! 男の子にぃっ!」
(ミーにゃん。お願いにゃから、くれぐれも誤解されるようにゃ発言にゃけは慎しむのにゃよ)
「男装の令嬢……ねぇ。逆はないものかしらぁ?」
「逆ってにゃにを?」
「イオラったら、またまた変なことを考えているわん?」
「ミーナちゃん。『変な』はないでしょ?
ワタシが考えていたのはね。『男装の令嬢』があるのなら、『女装の紳士』というものがあってもいいんじゃないかってことよ」
「ああ、『おかま』にゃん」
「そうかぁ。『おかま』のことを考えていたわん」
「へぇ。おかまっていうの?
ふぅぅん。おかまねぇ……あっ!」
ぱん!
きらりん! きらきらぁっ!
「もしや……、ううん。『もしや』じゃない。ぴったりだわぁ!」
「にゃにが?」
「なにがわん?」
「ねぇ、ミアンちゃん。つかぬことを聴きたいんだけどぉ。
ネイルさん。今日、お暇?」
「……やめときにゃさい。嫌われるにゃけにゃんよ」
「そうそう。『年をとると、これだから』って、ため息を突かれるのがオチだわん」
「んまぁ!」




