失速の真相
小笠原が呆然とスタンド席に座っている
目の前のビジョンには最終レースのパドックが映し出されている
その画面をボーッと見ながらひとりごとをつぶやく
「なんてこった…あいつ、また当てやがった…」
天を仰ぐように空を見上げる
「おれも買えばよかった…だって、急に買い目変えやがるし…穴馬だったし…それに…買えばよかった」
「いやぁ、久しぶりに熱くなったぜ」
事務所からの帰り、源三がてんに話しかける
となりを歩いているてんがうんうんとうなずく
「これで当分、遊んで暮らせるぜ…」
てんが源三を見つめる、そして何かを思い出したようにニヤニヤと笑う
「ん? なに笑ってんだ?」
「いやー、おじさんも案外エッチだなって…」
「あ? なんのことだ?」
「だってー、クーゲルが生理中だって気づくんだもん、一体、馬のどこみてんだか」
「ばぁーろー、そんなんじゃねぇよ、パドックでは馬の細部まで見極める、これは
予想の鉄則だ、ほんの一滴のしずくも見逃さねぇ、常識だ!」
「はいはい、わーりましたっ、でも社長さんには悪いことしたかなぁー」
「ふん、いいクスリになったんじゃねぇか」
「でもあのお金どこから手にいれたんだろ?」
「従業員からだましとったらしいぞ」
「え!やっぱり」
「ああ、最初おれのとこに連絡した時に言ってた、発注ミスの責任とれって
出させたってな」
「やっぱし…そうか…」




