単勝1点 クーゲルセーラ!
社長のことばにてんと源三が凍りつく、そして
「けっ、頼みがあっるって…そんなことかい」
あきれたように源三がソファにのけぞり足を組み直す
「社長さんさぁ、競馬くらい自分で予想しようよ」
てんもかわいそうな子供に言い聞かせるようにたしなめる
「も・ち・ろ・ん、ただでとは言わねえ、おたくらに10万ずつあげよう、つまり
おれの持ち金は50万、これを100万にしてもらいてぇ、どうだ? あ、でも
はずれたら10万は返してもらうけどな」
「…どうする?」
源三がてんに尋ねる
「うーん、2倍でいいわけよね、だったら今度のあれかな?」
「ああ、おれもそう思った、あれなら2倍にはなるな…って」
「うん、だよね、あれだよね」
「おいおいおい、二人で納得し合ってんじゃねぇ、こっちにもわかるように説明しろや!」
社長がいじいじして叫ぶ
「今度の日曜日のレースだよ」
「そ、メインのな」
「一着はまちがいなし! クーゲルセーラ!」
「ク…クーゲルセーラ?」
社長がそばにあったスポーツ新聞を開いて見る
「たしかに、いいって書いてあるな、でもこれ2倍つくのか? 1.2倍ほど
になるんじゃないか?」
「牝馬だからそんなに人気にはならないよ、おそらく2倍ちょいかな」
社長がじっくりと何度もスポーツ新聞の競馬欄をチャックする
「おし! 決まりだ! 単勝1点50万 クーゲルセーラだ!」
そして次の日、てんが職員室にひょこっと顔を出す
小笠原が一人、机に座って仕事をしている
「センセー!」
「あ!的場てん!おまえ、この間はよくも、あの後たいへんだったんだぞ!」
小笠原が立ち上がりてんに言い寄る
「「まーまーまー、また、いい買い目、教えてあげるからさ、そのかわり…」
「馬券を買ってくれってか?」
「そ!でもさ今回は先生一人で競馬場へ行ってね、買い目は携帯で知らせる」
「…な…なんで?」
「だぁーってぇ、二人でいるとまた変なうわさ立っちゃうしぃー」
「お…おまえなー」
「ま…買い目はもう決定してるけどね、今度のは倍率は低いけど確実だから、
最終決定はパドックを見てからっていうことで、ね」
「…またすごい大金つぎこむのか?」
「うん、日曜メイン単勝1点10万円、このレース唯一の牝馬、クーゲルセーラ!」




