社長と末広父
末広父が現場で仕事をしている、明日の仕事の準備、工事機器の確認、使用材料 のチェックと一心に機材を確認しメモをとる、やがてふとなにかに気づきまわり を見回す
(誰も…いない)
駐車場に行くと送迎の車がない
(また置いてけぼりか…)
仕方がない、と歩いて現場から事務所に戻る、事務所には社長が一人、待って いた
「よう、おつかれー、待ってたよ、ま、座って休みな」
ソファにふんずりかえっていた社長が、手前のソファを指さす、歩きくたびれた 末広父が力なく座ると社長が話を切り出す
「ところで…あれだ…この間の発注ミスのことなんだが・・」
「は?」
末広父がいぶかしげに社長をみつめ反論する
「 社長、前にも言った通りあれは私の責任では…」
「わーってる、わかってるって!…だがな」
社長が末広父に顔を近づける
「おれはな…おじさんのことある意味、尊敬してんだよ」
社長も自分より年上の末広父を(おじさん)と呼んでいる
「大企業で営業をしてた経験もあるし、おれより頭もいいし…な、ゆくゆくはおれの参謀、相談役になってもらいてぇんだ」
話のすじがが理解できず末広父が黙り込む、社長が続ける
「でもよ、でもよ、そうなるとおじさんはほかのやつらよりも上の存在になる言ってみりゃあNO2だ、そうなると部下のミスの責任も取らなきゃあいけない立場ってことになる」
「…責任?」
「そーさ、そこでこの間の発注ミスだ、あのけじめをおじさんがつけてくれりゃあ
あいつらも納得する、おじさんのいい部下になるってもんだ、どうだ?」
「で…わたしにどうしろと?」
「100万ほど出してくれねぇか!」
「えっ!」
「なーに、くれとは言ってねぇ、今の急場をしのいだら返すって」
「いや、ムリです、とても100万なんて…」
末広父がはげしく首をふって拒否する
(すこし額が大きかったかな)社長が一瞬考えて
「じゃあ…70万出せるか?」
「…70万…」
「おし、それで行こう!70万で手をうとう、な!」
「いや、社長、待ってください、やっぱしお金ではムリで…」
「出さねぇってんなら、どうなるか、おじさんへの風あたり、今以上になっちまうぜ」
社長の声がドスのきいた声に一転する
「…わ…わかりました…」
末広父がうつむいて答えた




