ほのかの居場所
「ここ、ここ!ここが本命の所なのよねー」
てんが二人を案内したところは校舎の裏の物置のうら、古ぼけたプレハブ、看
板には(アニメ同好会)と掲げている
「え!こんな建物、学校にあった?それにこんな同好会知らないよ!」
「うん、非公認の団体だから、でもかなり古くからあったみたい、何年も前か
らここにあったみたいだけど」
「え!知らない、聞いたことない!」
「ひかるさんは裏の世界のこと知らなさすぎるんだよ、とにかく入ってみよ」
てんがドアを開ける、ギシギシと言いながらドアが開く、中は薄暗い、思った
より広い、壁には一面アニメのポスター、そして無数のフィギア
「ね…ここ、怪しいって、出ようよ」
ひかるがてんの腕をひっぱる、が、かまわずてんは部屋の奥に入ろうとする
「大丈夫、大丈夫…あ!」
部屋のすみに人影、コロンと太めの男子、 目は細い、髪は長め、無心の
パソコンをいじっていたが近ずいたてんたちに気ずきおどろく
「うわ!…た、た、た、大変だー」
立ち上がり奥の部屋に逃げるように飛び込む、奥の部屋から声がする
「大変だ!生徒会長、竹宮女史が来たぞ!」
「なに?本当か」
「一体、なにしに?」
ひかるがきょとんとてんの顔を見つめ
「…てん…あたし…女史って呼ばれてる…」
「うん、これが最初で最後かもねっ」
奥の部屋から数人の部員が現れる、太めを筆頭にメガネをかけたおかっぱ
の男子、太めを少ししぼませたようなやや小さめの太めの男子、そして女子が一
前髪が長い、表情が見えない、はっきり言って、みんな怪しい
(だめだ、ここ、危ない、とてもほのかさんにはムリ)
ひかるがほのかをふりかえる…あれ?、ほのかの姿が見えない?
「こ…これは…」
奥のへやからほのかの声がする、ひかるとてん、怪しい連中と中に
フィギアが一体、等身大、精悍な顔の年配の紳士、それをほのかが見つめてい
る
「ア…アガペンさま…」
(え!これが!あのアニメのキャラクター?)
「ほう、驚いた」
「われわれのほかにこのフィギアの価値がわかるものがいるとは…」
「君…誰?」
怪しいやつらがほのかに興味をしめす
なにもいわずほのかがそばにあったペンをつかむそして描き始める
目の前のフィギアを足から描いていく、足、胴体、腕最後に顔
「こ…これは」
「動画サイトで見たのと同じ描き方!」
怪しいやつらが感嘆の声を上げる、やがてほのかが別のキャラクターも
描き始める
「なんてクオリティーの高い!」
「か…神…」
怪しいやつらのボルテージが上がる、そして太めが改まりほのかに言った
「あなたのような方、ぜひともわが同好会に入っていただきたい、一緒に語り
合いたい」
ペンを止めほのかが笑顔でふりむく
「はい、わたしも…いっぱい、いーっぱい話したいです
ほのかの満面の笑顔、そして5人が意味不明な会話で盛り上がる
「てん…帰ろっか…もう、ほのかさん、大丈夫だよ」
ひかるが楽しそうに微笑むほのかを見ながらてんにつぶやく
「うん…帰ろ、でも…一つ言っていいかな?」
「え?」
てんが一呼吸、息を吸い込み叫んだ
「能勢ほのかぁ!」
ほのかたちの会話が止まる、てんを振り返る、かまわずてんが続ける
「今回はあたしたちがあなたの居場所を見つけた、でもね、でもね、これはほ
んとはあなた自身がやること、あなたが一人でやらなきゃいけないことなんだ
からね!学校が楽しくない?つまらない?ふざけたこと言うんじゃねぇ、自分で楽しくしなきゃあ、自分でおもしろくしなきゃあ、でないとずっとつまらないまま
だよ!わーった?」
ほのかがなにもいわずてんを見つめる
「ひかるさん、帰ろ」
言うだけ言ったてんが部室を出ていく、ひかるもおろおろしながらてんに続く
その背中に向かってほのかが叫んだ
「あの…ありがとうございましたー」