第一話 かわいい顔した放火犯
「リーン・カンパニュラ。キミとの婚約を破棄する!!」
え、これあれじゃん!!
今流行りの悪役令嬢断罪ものじゃね!?
気づけば知らぬ男の腕の中。
そんな状態だけど、目の前の断罪劇のが気になった。
「シルヴェスター様、わたくしが何をしたと申されるのですか?」
「この状況でシラを切るのかリーン。キミはこの可憐なニアをいじめていたんだろう?」
グッと身体を引き寄せられ
「もう大丈夫だよ、ニア」
至近距離で微笑まれた。
え? ニアってあーしのこと!?
「え!? あーし!?」
「あーし……?」
「つーかあんた!! 婚約者がいるのに他の女に手ぇ出すとか、貞操観念どうなってんの!?」
やっぱりよくある悪役令嬢ものだ!!
ボンクラ王子が唆されて、婚約者を悪役令嬢に仕立て上げる。
そして断罪して、最後にヒロインがざまぁされる系のやつっしょ!?
「って、これだとあーしがざまぁされるんかい!!」
なんもしてないのにそんな目に遭うなんて、ぜーったい嫌だ!!
「ちょっとあんた!! どーしてこの子がいじめてたって思うわけ!? 証拠はあんの!? 証拠!!」
「え、証拠って……。リーンにいじめられている、そう相談してくれたのはキミじゃないか」
「あんたさー、ぽっと出の女の言い分聞いて、婚約者の言い分聞かなかったわけ!?」
「い、いや……聞いたところでやった本人が頷くはずないだろう?」
「なんでやったって決めつけんの!? あんたの婚約者でしょ!? 護んないでどーすんのよこのボンクラが!!」
腹立つ〜〜〜!!
こんな馬鹿たれの言い分が正しいはずがない!!
よく見る悪役令嬢ものもそうだもんね。
やってないのにやったって、罪着せられてるのがオチ!!
ボンクラ王子を振り払い、悪役令嬢にされている子の元へと向かう。
「ニア!!」
馬鹿たれに多分呼ばれたけど、ガン無視して女の子の手を握った。
「あんた、本当はやってないんしょ!?」
「え……?」
「だーかーらー! 本当はやってないのに、あのボンクラ王子が勘違いしてるんしょ!?」
きっと怖かったはず。
こんな大勢の人に睨まれて、コソコソなんか言われて、指さされて。
あーしが味方だってわかれば、この子も違うって言いやすいはずなんだ。
だけどその子は、ドレスの裾をギュッと握ったままで一向に口を開かない。
「あんさ、あーし? が多分あいつに嘘教えたんしょ? で、やってもないのにあんたが疑われた。違う?」
「…………した」
「うん? ごめん聞こえない」
「…………ました」
「ごめん、まじで聞こえない。あと、あーしだけじゃなくて、みんなに聞いてもらった方がいいと思うよ?」
多分ニア? とかいう元のあーしが元凶なんだろうから、断罪は待ったなしかー。
あーあ。異世界転生始まった途端に終わりかーい。せめて島流しならワンチャン……?
自首したってことで、ギロチンだけは勘弁してくんないかなぁ……。
命だけは助かりたいと考えていると、突然その子が大声を上げた。
「わたくし、ニア様をいじめましたの!!」
え……?
「いや、やったんかーい!!」
*
いやいや、そこはさ
『わたくし、本当はやっていませんの!』
じゃないの!? やってるの!? やっちゃったの!?
「え!? やっちゃったの!?」
思わずその子の肩を掴み、ぐわんぐわんと身体を揺らす。
「本当にやっちゃったの!? ねぇ!?」
「あ、あの……手を止めていただいても……」
「あ、ごめん!! 気持ち悪くなった!? 大丈夫!?」
明らかに顔色が悪くなったその子の背をさすると、微かに震えてるのが伝わってきた。
——本当にやったの? この子が……?
「……ありがとうございます、ニア様」
「大丈夫? 座る?」
「いえ、問題ございません……」
「そっか、ごめんね急に揺らして」
口元を押さえながらも微笑むその子。
人をいじめたりなんてしそうもないのに。
「あんさ、本当にやったの?」
「……はい、わたくしがやりました」
「なんで? あーしがなんかやった?」
「いえ、ニア様がシルヴェスター様をお慕いしていると伺って……」
なるほど! ヤキモチね!!
そら婚約者があんなんじゃ不安だよねぇ……。
実際、こうやって公衆の面前で婚約破棄するような男だし……。
「なるほどねぇ、それで? なにやったの?」
あーしは気づいたらここにいた。
だからこの子がニアにやったことは一つも知らん。
きっと、物隠したり汚したり、そんなもんじゃない?
「……教材を隠したのも、大切にされていたドレスを汚したのもわたくしです」
ほら、まぁそうだよね。
それぐらいなら……
「あと、帰宅途中に馬車が燃えたことがあったと思いますが、火をつけたのはわたくしです」
「いや急に過激すぎん!? 危ないよ!?」
「はい、危険だとわかっててやりました」
「いやいや!! そら婚約破棄されるでしょ!!」
何この子!? かわいい見た目してんのにそんなことすんの!?
つーかボンクラ一家大丈夫!? なんでこんな危ない子を婚約者にしたのよ!!
お宅が王家で大丈夫ですか!? あーしは心配だよこの国がさ!!
「……それで、よかったのです」
「は? どゆこと?」
「わたくし、シルヴェスター様に婚約破棄していただきたかったのです」
「はい?」
——いや、意味わからんから
こういった作品は初めてなのですが
楽しんでいただけますと幸いです( ✌︎'ω')✌︎




