表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第23章 ラテニア侵攻 後編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

864/1066

第813話 接敵


◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「では任せた」


「へいへい、命令とあらば行ってくるよ」


「貴様! 閣下に向かって何という口の利き方をしている!」


「こりゃあどうもすいませんね。生まれがゴミ溜めみたいな場所だったもんで、ごてーねーな言葉を知らねえんだわ」


「き、きさまーーー!」


「よい、きっちり任務をこなすのであれば、多少の態度の悪さも気にせん。そしてこの男はこれまできっちり成果を上げてきた」


「で、ですが閣下……」


「もう行けルボル。準備の時間も余りなかろう」


「へへぇ、では失礼をば」


 そう言って部屋を退室するルボル。

 ルボルは現在北方面軍の第7旅団長に任命されているので、軍の中でもかなり立場が上の人物である。


 しかし先ほど面会していた閣下と呼ばれていた人物は、今回のラテニア大侵攻の総指揮官である四将軍のひとり、ルドヴィーク・マトゥラであった。

 正規軍とはまた所属が異なるが、立場的には旅団長などよりは断然上になる。

 そんな相手にも遜った態度を取らないルボルは、昔から上の人間には疎まれ、部下からは慕われている……そんな人物だった。


 本人としては大隊長くらいで満足していたのだが、妙なカリスマがあるせいで部下が必要以上に頑張って成果を上げてしまい、そのおかげで出世を繰り返して旅団長の位置にまで上り詰めている。


「ったく、ままならねえもんだぜ」


 小さく文句を言いながら、ルボルは与えられた任務を果たす為に部下の下に向かう。

 今回ルボルに与えられた任務は、騎兵隊の大半を率いてラテニアの各地を襲撃するという内容だった。


 根絶やし作戦と名付けられたこの作戦には、ルボル麾下の北方面軍第7旅団12000と、傭兵を中心としたおよそ65000の騎兵部隊が割り当てられた。


 長い間戦争中ではあったが、帝国も対ハベイシア同盟も敵国の調査は昔から行われている。

 最新の情報をすぐに入手できるかと言えば、情報を入手する場所や情報の規模によっても異なるのだが、地理的な情報であれば数年おき位に更新はされる。


 そうして得られた情報を基に、100以上の小集団に分かれてラテニア各地の町や村を根絶やしにする。

 まさにヴェリアスやレイミーが恐れていた事を、実行に移そうとしていた。


「それに作戦内容もひでえもんだ。大まかな指示は出されちゃあいるが、『高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変にしろ』なんて、結局のところ行き当たりばったりって事じゃねえか」


 元々言動がよくないと言われるルボルだったが、先ほどのルドヴィークへの態度の悪さは、与えられた任務に不服があったという理由が大きい。


「しかもその大まかな指示の内容ってのもな……」


 四将軍相手に不遜な態度を取るルボルも、流石に言ってはマズイ事は理解しているので、ここで口を噤む。

 その代わり、心の中で言いたかった事を続ける。


(相変わらず妖魔を魔族扱いし、獣人は完全に奴隷枠だ。エルフやドワーフは準優良種としちゃあいるが、ヒューマンってのが優良種だとは俺には到底思えねえんだけどな)


 それは帝国人としては異端の考えであった。

 だが人としては極まともでもある。

 このような考えを持つ者は、全帝国人の1割にも満たない。


 ルボルがこのような考えを持つのは、彼の生まれ育った環境が一番の要因だ。

 またその後の軍人となって以降の経験も、今の価値観を押し固める事に繋がっている。


「……だが、今更仰ぐ旗は変えられねえ。ここまで来ちまったら、あとは突き進むしかねえな」


 それは声に出す事で、自分に言い聞かせているようでもあった。

 その後、部下が待つ詰め所に向かったルボルは、急ピッチで準備を進め、約7万5千の兵を引き連れ出陣する。


 ディルダグを陥落させ、戦争街道を進む騎兵の大軍の情報は、すぐにラテニア側にも伝わった。

 この騎兵部隊の狙いに気づいたヴェリアスは、呪いによって一時的に魔術が使えなくなっていたレイミーを残し、精鋭部隊を引き連れ出陣する。


 両者がぶつかったのは、ディルダグとヴロブリックの街の間を走る、戦争街道沿いだった。






◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ヴェリアス様、配置が整いました」


「分かった。そのまま待機……いや、休憩を伝えてくれ」


「よろしいのですか?」


「敵の動きは常に監視している。すぐに目の前に現れる事はないから、今の内にしっかり休んでもらわないとね」


「承知致しました」


 帝国騎兵隊の迎撃に出たヴェリアスであったが、兵数には数倍の差があった。

 また精鋭を引き連れてきたとはいえ、これまでの戦いの中で多くの兵が失われている。

 そのため精鋭と呼ばれる兵も大きく数を減らしていた。


「地の利がある今の内に、少しでも数を減らさないと……」


 深刻な表情でヴェリアスはまだ姿が見えない、敵が襲ってくる方の街道の奥を見つめる。

 この辺りの街道はガークラック川沿いに敷かれているが、実はこの辺り一帯は広大な湿原地帯になっている。


 ラテニア連合国は、北東部の森と平野が多い地域に吸血鬼種族が。

 河川や水場の多い中央地域にラミアやリザードマンが集い、高地の山岳部が多い南西部にオーガ種族。

 そして平野部が多い南東部にオーク種族が多く住んでいる。


 しかし800年ほど前までは、北西部の湿原地帯を中心にフロッグマン氏族が多く暮らしていた。

 だが帝国の大侵攻によって、現在のディルダグの街の手前まで攻め込まれ、フロッグマン氏族は壊滅的な被害を受けている。


 その後、生き残りのフロッグマンと他のラテニアの氏族は一致団結し、失地回復するだけでなく、逆に帝国領にまで侵攻する程の逆撃に成功した。

 ただその一連の流れでフロッグマン氏族は大きく数を減らし、それ以降に取り戻した北西部地域には、他から寄り集まった雑多な種族が暮らす土地となる。


 そんな歴史があるこの地だが、数百年の月日が過ぎようと湿原地帯は未だにそこに在る。

 基本的にはぬかるんだ泥沼の場所が多く、水が溜まっている場所もせいぜい膝に浸かるくらいの深さくらいであり、そのほかにも小さな池や水たまりがそこかしこに散在していた。


「ここならいかに魔獣を駆る騎兵隊といえど、動きは鈍る。奴らを止めるにはここしかないけど、それは相手も承知の上……だろうね」


 ヴェリアスは今回の迎撃部隊に、精鋭とは別に地の利を生かせる種族の兵を多く連れてきている。

 空を飛べるハーピーや翼人族。

 湿地帯や水場を得意とするラミアやスキュラやリザードマン。


 ゴブリンやオーク、オーガなどといった種族は今回精鋭以外では殆ど編成されていない。

 そして精鋭達は街道付近に布陣し、湿原を得意とする種族を左右に展開させて、帝国兵を待ち受けている。


「帝国兵の姿を発見! 偵察隊の報告通り、7万以上もの騎兵部隊です!」


 交代で空を飛んで見回っていたハーピーから、帝国兵の姿を確認したとの報告が齎される。

 物資や人員を輸送する為、戦争街道は昔から整備され続けてきた。


 この湿原地帯は道を作るにはかなり手間がかかるが、何百年という年月を経て馬車が通行するのに適した道が敷設されている。

 ただし、流石に道幅は広くはないので、進軍している帝国兵たちも余り左右には広がらず、縦に長い戦列を作っていた。


 帝国兵の駆る魔獣は、いかに大国である帝国といえど、種類が統一されてはいない。

 勿論生産しやすい魔獣の方が数は多いのだが、帝国各地から寄せ集められているので、各々の地域に適した魔獣が一堂に会している。


 中でもリザード系の魔獣などは、比較的こうした湿原地帯での移動を苦にしない。

 体高が低めなので、深い沼地などではかなり動きが制限されるが、逆に体高の低さと手足の造り的に、硬い地面を移動するよりは負担が少なく済む。


 それに対し馬系の魔物は、足元が柔らかく地面にめり込んでしまう湿原地帯の移動が得意ではなかった。

 他にも巨大なガチョウのような陸を走る鳥系の魔獣もいるが、こちらは湿原でもそれなりに移動が可能だ。


「ディルダグを捨てて、時間を稼いだおかげで血は十分集められた。部下たちもかなりやられてしまったけど、かき集めた吸血鬼氏族の者達もいる。ここでどうにか一矢報いねば、ラテニアに未来はない!」


 戦いを前に、覚悟を決めるヴェリアス。

 その視線の先には、迫りつつある帝国兵の姿が微かに映っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

完結しました! こちらもよろしくお願いします! ↓からクリックで飛べます!

どこかで見たような異世界物語

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ