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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第22章 ラテニア侵攻 前編

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第809話 凶悪な範囲攻撃魔術


◆◇◆



 ハムサを打ち破ったリュシェル達は、その後も左翼部隊の帝国兵を次々と蹴散らしていくと、ガルダ達同様に後は他の奇襲部隊に任せ、自分達は中央部へのカチコミに加わった。

 左翼と右翼への奇襲はほぼ同時に行われはしたが、エントを暴れさせたりヨイチによる弓攻撃などもあって、中央部に割り込んでいったのはこちらの方が早い。


「ころす……ころす……」


 中でもシャウラの力の入れようは鬼気迫るものがあり、普段の物静かな印象は鳴りを潜めている。

 それでも無駄に全力で暴れ回れない辺り、これでもまだ怒りに我を忘れているという程ではなかった。


「何かえらい剣幕だな」


 現在リュシェル達は左翼部隊を突破して、中央部隊の方へ向かっていた。

 移動中とはいえ、戦場での僅かな休息時間であるのだが、シャウラだけは気を落ち着ける事なくブツブツと物騒な言葉を繰り返している。


「あなたにも説明した通り、シャウラの家族は帝国兵に殺されていますからね……」


 いつもと違うシャウラの様子に、リュシェルは痛ましそうな表情を浮かべる。

 まだ付き合いが短いヨイチも、いつもの調子のいい兄ちゃんといった顔ではなく、渋い表情を浮かべていた。


あっち(環大陸)だと、どこでも見られた光景なんだけどなあ……。こっち来てからは、本格的な戦争だとか気が狂った集団とは遭遇してなかったが、やっぱ場所が変わろうと人は人ってことか」


 ヨイチもこれで300年近くこの世界で生きてきた。

 しかも話に聞く限り、環大陸では昔っから争いが絶えない場所なのだと言う。


「でも皆が皆そういった奴ばかりでもないでしょ。あたしも里で暮らしていた時は、ルーキーズ以外の人間なんてみんな人攫いに見えたもんだけど、エイジやカレンみたいな人もいるって今では分かってるわ!」


「そう……ですね。シャウラもその事に気づいてない訳ではないのでしょうが、それでも帝国への憎しみは別なのでしょう。シャウラの事も気になりますが、今は帝国兵の処理が先です。どうやら味方が守備に徹しているせいか、敵後方にまで味方の兵は攻め入っていないようです。今なら範囲攻撃魔術で味方を巻き込む心配はありません」


「3人共、いいですか? 中央部隊に攻め入る前に、私達で範囲攻撃魔術を放ちます。魔術は2回使用しますので、あなた達はその後に攻め込んでください」


 始めに左翼部隊に奇襲をかけた際、エントの召喚は別としてリュシェルは魔術ではなく剣で戦っていた。

 ティアも治癒用の光魔術以外は魔術を控えているので、魔力にはまだ余裕がある。

 ヨイチもクラスⅩまでの風魔術や、クラスⅨまでの植物魔術を使用出来るが、それよりも飛びぬけた弓の腕をメインにしていたので、こちらも魔力は潤沢だ。


「では行きますよ! 【荒れ狂う不可視の茨】」


「あたしもとっておき行くわよ! 【大気落】」


「森ん中だと効果が分散しちまうが……【荒れ狂う風の尖刃】」


 強力な範囲攻撃魔術を一斉に放つ場合、出来るなら術者同士が距離を取って、それぞれ別の地点を狙うのが好ましい。

 単体向けの攻撃魔術とは違って威力がばらけたりもするが、仕留めきれなくてもダメージを与えるだけでも十分効果はあるからだ。


 リュシェル達も、それぞれ分担を決めて魔術を発動させている。

 この中で一番クラスが低いのはリュシェルの【荒れ狂う不可視の茨】だが、それでもクラスⅧの魔術だけあって、広範囲に不可視の茨の鞭が振るわれた。

 並の革鎧程度なら切り裂く威力がある上に、目に見えないので対処のしようがない。

 無防備な頭部を庇おうと両腕で庇った所を、がら空きになった腹部に茨の鞭が振るわれる。


 ティアの使用した【大気落】はクラスⅨの風魔術で、上空から圧縮させた大気の塊を落とす魔術だ。

 物理的に見れば、大気など相当圧縮しないと物を押しつぶす程の力は得られないだろうが、こと魔術においてそのような物理現象は関係ない。

 圧縮された大気の塊は、半径150メートルほどの円状の空間を押しつぶす。


 範囲内にあった樹木は軒並み潰され、中心部には重い物が落ちてきた衝撃で小さなクレーターが出来上がっている。

 追突の衝撃ダメージもそうだが、へし折れた樹木が衝撃で飛ばされ、それをまともに食らった帝国兵もいた。


 最後にヨイチが使用した【荒れ狂う風の尖刃】は、流石クラスⅩの風魔術とあって、【大気落】以上の惨劇を生み出した。

 半径数百メートルにわたり、鋭い風の刃を生み出したのだ。


 これはクラスⅡの【風の舞】、クラスⅤの【大風乱舞】の正統な上位進化版の魔術であり、クラスが上がったことで範囲と攻撃力が大幅に増している。

 実際にどれほどの威力かというと、鉄の鎧をも切り裂くほどだ。


 この魔術の範囲内にいたものは、生物非生物問わず、風の刃でずたずたに切り裂かれた。

 森とはいっても、中にはちょっとした人より大きいサイズの岩などが転がっている事もあるが、そういった岩をもバラバラに切り裂いている。


 効果範囲内ではあちらこちらで血のシャワーが飛び交い、大地を血で濡らす。

 これら3人の攻撃魔術だけでも相当な被害を与えているのだが、そこに更に追撃で同じ魔術がもう一度放たれると、中央部隊後部の大半が戦闘不能に陥った。

 それも重傷者の数より、死者の数の方が多いという大きな被害だ。


「行くぞ!」


 2回目の魔術の発動を待って飛び出していくガンテツ。

 シャウラは既に何も言わずガンテツより先に走り出していた。

 ガンテツとエカテリーナも、慌ててそのあとを追う。


 リュシェル達の魔術によって、森の一角に平地が出現した。

 といっても地面が凹んでいたり木や瓦礫が散乱した、足場の悪い状態になっている。

 そこを元々身軽なシャウラやエカテリーナだけでなく、鈍重そうな体型のガンテツまでもが散らばった岩や木片をスイスイと避けながら進む。

 帝国側は、この突然の災害のごとき現状に混乱をきたしていた。


「な、なんだ!? 一体なにがあった!!」


「敵……、魔物だっ! 魔物が迫ってくるぞ!」


「魔物だって? なんでこんな所に魔物がいんだよ!」


「そんなの俺が知るかよ! あそこを見ろ! トレントが数体迫ってきてんぞ!」 


「あれってただのトレントなのか? 妙にでけえ気がすんだが……」


 突如戦場に乱入してきたように見える魔物に、帝国兵が慌てふためく。

 中央部隊には東方面軍の正規兵が多く配置され、ガークラン方面侵攻軍の司令官であるリヒャルト連隊長も、この中央部隊にて指揮を執っていた。


 それも中央部隊の中でも後方の位置から指揮を執っていたので、最初の範囲攻撃魔術に巻き込まれ、早々に命を落としている。

 その為混乱の収拾もなかなかつかず、これまで徐々にラテニア側の本隊を押しつぶしていた勢いが、いっきに崩壊していった。


「今だ! 今が好機だぞ!!」


 浮足立った帝国兵に、これまでずっと守勢に回っていたラテニア部隊が攻めに転じる。

 更に後方からは僅かな数ではあるが、一騎当千のドラゴンアヴェンジャーが突撃を掛け、劇的に帝国兵はその数を減らしていく。


「ふっ! はぁぁぁっ! てやあ!」


 気合の入ったシャウラの声が聞こえてくる度に、帝国兵の命が刈り取られる。

 暴走機関車の如く、ひたすら前へ前へと突き進むので、ガンテツや後衛のリュシェル達も、シャウラが孤立しないように共に敵陣深くまで踏み込む。


 その際少しでも頭数を増やす為、リュシェルは魔術で荒れていた地帯を抜けるや否や、追加でトレント系と土魔術のゴーレム系魔術で各種ゴーレムを生成する。


 樹木系は、エントにエルダートレントにトレントの3種。

 ゴーレム系はロックゴーレム、アースゴーレム、マッドゴーレムで、これまた計3種だ。


 これらの魔術は、最大で術者の最大同時詠唱数と同じ分だけ生成出来る。

 リュシェルの最大同時詠唱は3つまでなので、18体もの数をリュシェル1人で生み出したことになる。

 ついでにヨイチも、トレントとエルダートレントを3体ずつ生成していた。


 正直トレントやアースゴーレム、マッドゴーレム辺りは強さとしては微妙なのだが、壁役としては十分使えるし、数が多ければそれだけで相手に威圧感を与えることも出来る。


「…………」


 そうして強引に敵陣を突破していくリュシェル達に、ひとりの男が立ちはだかる。

 その男は聖なる暴虐団の団長を務める、ワーヒドゥであった。


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