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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第21章 戦乱の予感

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第772話 更なる奥へ


「………………」


 影治達に武器を向けた、ミスリル級冒険者パーティーの血に飢えた野獣たちは、あっさりとレイスブラッドによって撫で切りにされた。

 中層では脅威度Ⅴ~Ⅵの魔物しかでないので、このエリアではミスリル級冒険者というのはピラミッドのほぼ頂点に位置している。

 この場では誰も逆らえる者がいなかったのだが、それをあっさり返り討ちにしてしまったことで、周囲の冒険者達は唖然とした様子だ。


「あ、あんた……いや、あなた様は本当にアダマント級冒険者だったんですね!」


「おら、たまげただ! あんな綺麗な動き初めて見ただよ」


 最初は唖然としていた冒険者達も、影治が血に飢えた野獣の戦利品を漁り始める頃にはある程度落ち着きを取り戻した。

 その内半数以上は影治の強さについて褒め称えるものだったが、それ以外に心配の声も交じっている。


「なあ……。お前が強いってのは分かったけどよお。こいつらはただ強いからってのさばってた訳じゃあねえんだ」


「そうだぜ。それだけだったら、数だけはいる俺らでも抵抗出来たかもしれねえ。こいつらが厄介なのは、ツォルキン様と密接な繋がりがあるからなんだよ」


 血に飢えた野獣は、今回影治に絡んできたように日ごろからここにいる冒険者にたかっていたらしい。

 しかし背後にいるツォルキンのせいで、泣く泣くたかられても獲物を渡したりしていたようだ。


「ツォルキンの事なら心配はねえ。奴はもう死んだ」


「……へっ? そりゃあどういう意味だ?」


「どういう意味もヘチマもねえよ。ついこないだ、ヴェリアスとレイミーの奴が兵士を連れてズライロッジに攻め入った際に死んだんだよ。俺もその場にいたからガセやデマじゃあねえぜ」


 影治がそう言うと、その場にいた冒険者たちはこれまでになく大きく騒ぐ。

 四魔君主という存在は、ラテニアで暮らす者達……特に妖魔にとっては雲の上の存在だ。

 そう頻繁に入れ替わる訳でもないので、四魔君主の座に空席が出来るとそれだけでお祭り騒ぎになる。


「一体全体、なんでそんなことになってんだ?」


「それはだな……」


 詳細までは話さなかったが、大まかに事の経緯を説明すると、すぐに周囲の冒険者達に情報が共有された。

 そのせいで、あちらこちらから話し声が聞こえてくる。


「騒がしくなっちまったな。ま、こいつらの事は気にせず、俺らはさっさと飯くって寝るぞ」


 血に飢えた野獣の所持品を回収し終えた影治は、そう言って仲間たちの所に戻るといつも通り野外とは思えないような料理を作り始める。

 影治と離れて行動していた期間があるので、リュシェルやエカテリーナなんかも多少の料理が作れるようになっているが、それでもまだ影治にはかなわない。


 先ほど回収した所持品の中には、ホルス乳やミノタウロス肉なども入っていたので、早速それらを使った料理が作られた。

 今回はさっさと作りたいので、作り置きの具や乾燥パスタを使ったカルボナーラをメインとして、他に幾つかのおかず。そしてデザートに牛乳プリンを用意した。


「んーー、おいひい!」


 獣人のせいか、甘いものよりは肉が好きなシャウラではあるが、デザートの牛乳プリンを美味しそうに頬張っている。

 他にもティアやカレンなど女性陣には好評で、ゆっくりと少しずつすくいながら食べるカレンに、いっきにたくさん頬張るエカテリーナなど、食べ方にも性格が出ていた。


 そうして食事を終えると、いつものようにウルザミィやピー助が見張りに付き、就寝の時間となる。

 散々実力を見せられているので、影治達のテントを襲うような馬鹿はいないと思われるが、精霊であるウルザミィやピー助なら眠らなくても支障がない。

 何事もなく朝を迎えた影治達は、軽めに朝食を取って早い時間にこの場を後にした。










「……結構朝早い時間に出たつもりだが、やっぱこの階層だとまだ人が多いな」


「そうですね。10層までの地図はあるのですから、先に進んでしまいましょう」


 リュシェルの進言通りに先へと進んでいく。

 6、7層は6層から転移してすぐだし、9、10層も11層から降りてくればいいので、8層が一番人が少ない。

 そうして8層までやってきた影治達だが、他の階層より少ないとはいえ、やはりこの階層でも冒険者パーティーが幾つか探索していた。

 最初に6層で話しかけてきた連中のように、混雑を避けて敢えてこの階層で狩りしてる連中だろう。


「どうします? ここにしますか?」


「……いや。どうせなら更に上を目指そう」


 適度な量の魔物を狩るだけなら、この階層でも十分ではある。

 大食いのメンバーがいるとはいえ、ここで何日か籠って狩り続ければ、それなりの量の食材を確保できるだろう。


 だが影治は先にこのダンジョンの奥の情報を仕入れている。

 深層を超えた先の最深層には、ホルスタウロスクイーンやその他上位のミノタウロス系の魔物が徘徊しており、それらの魔物がドロップする食材は、通常のホルス乳やミノ肉を超えるという。


「ホルス乳の時点でこんなに美味ぇんだ。それがクイーンの乳となれば、更に格別なもんになるだろ」


「おにくっ! おにくっ!」


「ぴぃっー! ぴぃーーーっ!」


 昨夜はメインのカルボナーラとは余り合わなかったが、ミノ肉を簡単に焼いた肉もおかずとして出されていた。

 それは通常種のミノタウロスの肉だったのだが、ただ軽く下味つけて焼くだけでも、ご飯が何杯でも進むくらい美味しい。


 またミノタウロス系は、通常ドロップとして肉を落とすのだが、これがまた何気に種類が多い。

 バラやサーロインなどといった、部位ごとに分かれているのだ。

 影治の知る牛肉は当然4本足の家畜のものだが、2本足で歩くミノタウロスとなると、同じ部位でも肉質は異なる。


 ただタンは通常の牛のものと食感なども近く、影治は喜んで塩を振って食べていた。

 ちなみにタンやテールなどはドロップ率が低い割に、冒険者からの評価が低い部位だ。

 持ちきれなくなったら、まずまっさきに捨てられる部位でもある。


「最深層には脅威度Ⅹのキングタウロスも出るようだからな。ぜひともこいつのタン塩を味わってみてえ!」


 この世界では、基本的に脅威度の高い魔物の食材は美味しくなる傾向にある。

 だがその傾向とは別に、元々食用とされてる動物と同系統の魔物ともなれば、同じ脅威度であっても更に美味しいものが多い。


 もっとも、これは1つの傾向であって全てに当てはまる訳ではない。

 ゴブリン系統の肉は非常にマズイ事で有名だ。

 ゴブリンキング位の上位種になって、ようやく食えない事もないというレベル。


 それに比べてオーク肉は基本種のオークであっても、普通の豚肉のような感じで十分豚肉の代用となる。

 なおこれらの肉は妖魔たちも気にせず食うし、牛人族も気にせずミノタウロスの肉を食う。

 転生者の中には、2本足の生き物の肉を食う事に抵抗を覚える者もいるが、割とこの世界ではその辺を気にする人はいない。


 ただし、これらの話は大前提として魔物肉であるという注意書きが必要だ。

 妖魔として暮らしている魔物ではないオークを狩って食肉にするなどは、ハベイシア帝国のような特殊な国以外では行われていない。

 それとは逆に、妖魔側も人族を襲って食らったりということはない。


 ともあれ、食欲に押されたドラゴンアヴェンジャー一行は、そのまま8層を通り過ぎて更なる肉の深淵を目指す。

 10層、15層と出現するボスをタン塩! の号令の下ねじ伏せ、最深層入り口である16層にたどり着いたのは、6層のセーフティエリアを出発してから、9日が経過したあとだった。


 直近の15層のボスには、1本角のバイタウロスが待ち受けていた。

 脅威度Ⅸのこの魔物は、ミノタウロス系にしては珍しく、魔術を使ってくる。

 

 クラスⅧまでの闇魔術を使ってくるので、ここはセルマに【闇耐性大強化】を使ってもらって、魔術攻撃に対抗した。

 ボスとして登場しているので、通常のバイタウロスよりも強かったのだが、魔術に力を振っている分、身体能力は抑えめだ。


 シャウラとガンテツを中心とした、物理戦を中心にHPを削っていった結果、順調に勝利することが出来た。

 そうして16層にたどり着いたのだが、その先の転移碑があるセーフティエリアには、誰も人がいなかった。


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どこかで見たような異世界物語

― 新着の感想 ―
>直近の15層のボスには、1本角のバイタウロスが待ち受けていた。 割と話の筋に関係ないことではあるのですが、一本角なのに「バイ」タウロスなんですか? 一本だとユニコーン、二本でバイコーンになるのでち…
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