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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第6章 ヴォーギルからの客人

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第248話 ティアの焦り


「エイジ様。ティアの魔術訓練はこの辺にしたほうがよろしいかと」


「――ッ! どーしてよ!? あたし、まだまだやれるわ!」


「自分でも分かってるのではないですか? 魔力酔いの症状が出ているじゃないですか」


「――っ」


 マジックポーションというのは、その青色の液体に魔力成分が含まれている。

 そしてそれを服用することで魔力が回復するのだが、服用して一気に回復するのではなく、5分くらいかけてゆっくりと魔力が体内に吸収されていく。

 なので、通常は5分ほど間隔を開けて飲むものとされている。


 ここで間隔を開けずにマジックポーションを服用した場合、間隔を開けた場合とと比べ魔力酔いが発生しやすい。

 短期間にアルコールを摂取しすぎた際に、急性アルコール中毒になってしまうのと似たようなものだ。


 だからといって、5分開ければ幾ら服用しても良いという訳でもない。

 間隔を開けて飲んだとしてもアルコールはアルコールであり、大量に摂取すれば酔ってしまうのと同じだ。


 魔力酔いというのは、体内に自分のものでない魔力を大量に取り込むことによって発生する。

 人によって酒の強さが違うように、魔力量の多い者ほど魔力酔いへの耐性が高くなるのだが、元々の最大魔力量を超えるような魔力を取りこめば、魔力容量が多くても魔力酔いの症状が出てしまう。


 フェアリープリンセスのティアは元々の魔力量は多いのだが、こうも魔術を連発してマジックポーションがぶ飲みを繰り返せば限界も訪れる。

 魔晶石であれば、バッテリーから電力を取り出すように魔術使用時に魔力を取り出すだけなので、魔力酔いの影響は出ない。

 だが魔晶石は大量に用意出来るものでもないので、すでに先日買い漁った分は使い切ってしまっていた。


「ティア、今日は一旦ここまでにするぞ」


「だから……まだ行けるんだってば!」


 4人の魔力が切れるまで魔術を撃ち返していた影治は、マジックポーションで魔力を補給することなくまだまだ魔力に余裕があった。

 しかしそれは影治の異常な魔力量のおかげであり、そのことを影治も十分理解しているので、ティアに訓練の終わりを告げる。


「無茶をしても体を壊すだけだぜ。続きはまた明日やればいい」


「だから無茶じゃないって言ってるでしょ!」


「グィィィ……」


 声を荒げるティアに、影治の声は響かない。

 それも仕方ないと言える。

 こういった場合、持つ者の言葉は持たざる者にはそうそう届かない。

 大声で喚くティアに周囲の騎士たちの視線が向けられ、心配そうなチェスの声が聞こえてくる。


「あた……しは、まだやれるんだから……」


 フラフラとしながらも、更にマジックポーションを呷るティア。

 だが既に大分無理をしていたのか、その体からしたらかなりの量を飲みほしたティアは、そのまま意識を失って倒れてしまう。


「おい、ティア! ……リュシェル、魔力酔いってのぁどうすりゃ治るんだ? ティアは大丈夫なのか?」


「マジックポーションでの魔力酔い程度でしたら、休ませれば徐々に回復していきます。今日は大分無理をしてましたから、このまま休ませてあげましょう」


「分かった。そんじゃあカレン、俺たちは宿に戻ることにするよ」


「……分かりましたわ。ティアをしっかり休ませてあげて下さい」


 必死な様子のティアに、カレンも何か思う所があったのだろう。

 一瞬口ごもっていたが、すぐに言葉を返す。

 そして影治たちは軽く挨拶を済ますと、訓練場を後にする。


「ティアは大分焦っているようですね」


「んな焦る必要なんてねえんだけどなあ」


 帰りの道中、広い領主の館の敷地内を歩きながら、影治とリュシェルが言葉を交わす。

 そこでの影治の発言を聞いて、リュシェルは苦笑いを浮かべながら返す。


「……エイジ様を間近で見ているからでしょうね。正直、私も彼女の気持ちが少し理解出来る気がします」


「ああん? そりゃあどういう……」


 館内を移動していた影治たちが、正門前に辿り着く。

 リュシェルの言葉を聞いて、どういう意味なのかと問い返そうとした影治だったが、丁度正門から中に入ってくる一行を見て、途中で発言を止めた。


「おや? エイジじゃないか。またウチの騎士に訓練を付けてやってくれてたのかな?」


 先頭を歩いていた相手も影治のことに気付いたのか、親しげに話しかけて来る。

 それは最近姿を見なかったカレンの兄、バルベルトだった。

 見たところ服装には気を使っているようだが、長旅をしてきた者特有の汚れや疲れなどが窺える。


 貴族の次男であっても、街の外を移動する際には川でも近くにない限りは水浴びなどは出来ず、濡らした布で体を拭くくらいしか出来ない。

 そしてその旅の名残というべきものは、バルベルトの背後に並ぶ同行者たちにも共通して見られた。


「いや、今日は魔術訓練をしていてな。ああ、そうそう。お前に教わった雷魔術も、ようやくクラスⅡが使えるようになったぞ」


 本日新たに覚えたのは植物魔術であったが、今回の護衛依頼の期間中に密かに雷魔術もひとつクラスを上げていた。

 クラスⅡだとまだまだ攻撃用としては頼りないが、雷属性の初級強化魔術である【攻雷】は大分有用だ。


 この魔術は、使用した相手の「物理攻撃力」を強化する効果がある。

 火属性の【滾る火の力】は、筋力を上げることで結果的に攻撃力を増してくれるのだが、【攻雷】はまさにゲーム的に攻撃力そのものを上げるのだ。


 これがまた不思議なもので、例えば同じ強度の鉄板にメイスで殴りつけたとする。

 その場合、【滾る火の力】では使用前と後とで凹み具合が変わるのだが、【攻雷】では凹み具合に変化がない。


 だが対象が魔物や生物などの場合、【攻雷】使用前では一発で倒せなかった相手が、使用後には一発で倒せたりする。

 その際の打撃跡そのものは使用前と後で変わらない。


 しかも【攻雷】は【滾る火の力】と効果が重複するので、2つ併用することで総合的な相手へのダメージが大分強化される。

 こうした特性を持つのは他に氷属性の【保護せし氷】があり、こちらは物理防御力が強化される魔術だ。


「流石はエイジだね。この調子だとすぐに追い抜かれそうだ」


「いやあ、まだまだだぜ。他に鍛えたい属性もあるしな。っと、それより今帰ってきたとこなんだろ? 足を止めさせて悪かったな」


「ははっ、気にすることはないさ。でもちょっとばかり疲れたのは確かでね。失礼させてもらうよ」


 そう言って爽やかに影治の脇を抜けて、館の奥へと向かうバルベルト。

 父親には似ず、母親似のバルベルトは去り際までさやわかイケメンだ。


「――――」


 ふとその去り際、影治はひとりの男が気になって視線を固定する。

 それはバルベルトと一緒に同行していた内のひとりで、一目見て影治はその男に視線を釘付けにされてしまう。


「――――」


 すると相手の男も影治の視線に気づいたのか、先を進むバルベルトに続いて歩きながら、影治に視線を送ってくる。

 両者見つめあった時間はそう長くはない。

 影治はその場で足を止めていたとはいえ、相手の男は止まることなく歩き続けていたからだ。


 まず影治が気になったのは、その男の服装だ。

 濃紺色を基調とした布製の服を着ているのだが、心臓付近などの重要器官の辺りの布の皺などからして、部分的に革か金属の防具を身に着けていると思われる。

 また服の袖などの部分には金糸で縫われたのか、黄金色をした部分が模様のように広がっていた。


 腰に下げた剣も西洋的なソレではなく、日本刀に近い。

 だが通常の日本刀と比べると刀身が短く、また日本刀独特の反りが殆どない。

 また鍔の部分が大きく角ばっており、鞘から伸びる下緒(さげお)と呼ばれる紐が大分長い。

 前世の頃から武器マニアであった影治は、それが普通の日本刀ではなく、忍者刀と呼ばれるかつて忍びが使用していたとされる武器だと見て取った。


 実は日本刀自体は、この世界でもそれなりに存在している。

 セルマから過去に転生者がいたという話を聞いていたが、そうした者達が伝えたのか、日本っぽいものがこの世界では随所に見受けられるのだ。


 日本刀もそのひとつだ。

 実際影治もこれまでに1度だけ見かけたことがあるのだが、忍者刀に関してはこれが初めてだった。


 更にその男は忍者刀の他に口元を布で覆っており、人相が分かりにくい。

 そして足元は革製のブーツではなく足袋のようなものを履いていた。

 これについては今まで他では見たことない履物だ。


「エイジ様、どうされましたか?」


「……いや、なんでもない。宿に帰るぞ」


 全体的に和風というか忍者風な服装ではあったが、過去に転生者が存在したからには、そういったスタイルが残っている地域があるのかもしれない。

 元日本人として気にならないでもなかったが、バルベルトに案内されていたということは、今慌てて接触しなくても会う機会はあるだろう。


 最後に気になる男と出会いながらも、影治は気を失ったままのティアを連れて、未知との出会い亭へと帰って行った。


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