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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第6章 ヴォーギルからの客人

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第243話 魔導具講座


 リュシェルとシリア、二人の案内で魔導具を取り扱っているというブルックナー商会へと向かう影治。

 その道中、同行することを決めたティアが質問する。


「それにしても、エイジって魔導具に興味あったの? 武器マニアだってのは知ってたけど」


「俺個人としても興味あるし、冒険者としても魔導具ってのは大事だろ」


「そうね。普通の冒険者は、エイジみたいに色々な属性の魔術を使えない。だから、それなりに稼げるようになった冒険者は、水を生み出す魔導具や火を灯す魔導具なんかを揃えたりするのよ」


「そっかあ。あたしもエイジのおこぼれでそれなりに報酬貰えたし、なんか良いの売ってるといいんだけど」


 影治が今回魔導具を買おうと思ったのは、大きな報酬がドンと入ったからだった。

 オーク退治の報酬として、1500万ダン。

 更にはピュアストールに帰還し、ダンフリーから護衛依頼と特別報酬を合わせて500万ダン。

 直近の報酬だけで、2000万ダンもの大金を稼いでいる。

 これだけあれば、浪費しなければ数十年は遊んで暮らせる金額だ。


 だが影治は前世の頃からお金には余り執着しない性質で、それこそ宝くじの当選金額で無人島を購入してしまうほどだ。

 今回もその時と同じようなノリで、良い魔導具があれば買い求めようと思っていた。


「エイジ様は何かお目当ての品があるのですか?」


「いんや。つうか、魔導具っつってもどんなもんがあるのかすらよく分からん」


 これまで影治は全く魔導具に触れてこなかった訳ではなかったが、積極的に調べたことはなかったので、その辺には疎い。

 多属性の魔術を扱えるせいか、あまり必要なかったという理由も大きいだろう。


「そんなんで魔導具を買いにいくつもりだったの? ある程度欲しいものを絞っていかないと、気付いた時には私みたいに『水を雪に変換する魔導具』とか買う羽目になるわよ」


「……それって、この辺りの気候だとすぐ解けて水に戻るんじゃねえか?」


「そうね。1度に変換できる量も大したことなかったわ」


「なんでそんなのを買ったんだ?」


「だって、雪って実際に見たことなかったんだもん」


 頬を膨らませながらシリアが言う。

 そんな子供のような仕草を見せるようになったのも、それだけ影治との関係性が変化した証だ。


「だもんって……。大体雪なんてのは振ってる時は綺麗に感じるかもしれねえけど、降り積もった雪は邪魔になるし微妙だろ」


「ふうん、そんなもんなのね」


「私がフロウヴィウムで暮らしていた時も、綺麗なんて思う余裕はなかったですね」


 ただでさえ南国生まれのリュシェルには、北国の環境はきつかったようだ。

 最初に見た時は綺麗だと感じたかもしれないが、今のリュシェルには降り積もる雪と寒さに苦しめられた時の情景が、ありありと頭に浮かんでいるのだろう。


「で、魔導具にはどんなもんがあるんだ?」


「そうねえ。魔術でもそうなんだけど、基本的には戦いに関係するものが多いわね。それからさっきも言った水を出したり明かりを灯したりといった、生活に役立つものもそれなりにあるわ」


「その辺は大体間に合ってる。他には?」


「そう慌てないで。そもそも魔導具といっても、大きく分けて2種類あるのは知ってる?」


「2種類? 戦闘用と日常用とかか?」


「そういった分類もあるかもしれないけどね。私が言ってるのは通常の魔導具と、迷宮遺物のことよ。まあ普段はあまり迷宮遺物って言い方はしないんだけど」


 饒舌に語るシリアの表情は楽しそうだ。

 魔術関連の話をしている時は大抵この表情を浮かべ、相手が段々としらけ顔になっていくのも気にせず、魔術話を垂れ流し続ける。


「迷宮遺物ってのは、ダンジョン内で手に入る魔導具のことか?」


「そうよ。魔導具はどこかしらに魔法陣が刻まれてるもんなんだけど、迷宮遺物にはそれがないの」


「それって同じ効果のもんでも、性能に違いがあったりすんのか?」


「うん、そうね。基本的に迷宮遺物の方が優れてるものが多いわ。でもそうそうダンジョンで魔導具なんて見つからないものよ。私が持ってる魔導具の多くは、通常の魔導具になるわね」


 影治もそれなりの期間獣の牙に潜っているが、ポーション類ならともかく魔導具は1度も発見していない。

 すでに探索しつくされたような階層でも、ダンジョン内には宝箱が湧いたりする。

 そうした宝箱から魔導具を入手できる可能性もあったが、やはり中層程度だとなかなか成果には恵まれない。


「でまあそういった迷宮遺物なら、冒険者たちから買取してる何でも屋の方が実は扱いは多いの。でも通常の魔導具に関しては、ブルックナー商会が一番という訳」


「なるほどな。品揃えを求めるならそっちのが良い訳か」


「魔導具のことあまり詳しくないエイジには、こっちのがいいでしょうね。大体迷宮遺物って、同じ効果の魔導具の10倍くらいの値段するのよ」


「10倍……それは結構するな」


「でしょ? 実は普通の魔導具には使用回数があったりするんだけど、消耗した魔導具は修復をすることで、回数を戻すことも出来るのよ。だから大抵の人はそっちを選ぶわ」


 そう言ってシリアは魔導具の修復について説明を始めた。

 人工の魔導具というのは、どこかしらに魔法陣が刻まれている。

 そして使用する際に光を発するのだが、使用限度が近づくとその光が弱まっていくらしい。


 その状態になってから付与魔術師に修復してもらうことで、使用回数が回復するという。

 ただし元通りの上限までは戻らない。

 最初に100回使用可能だとして、1度修復すると次は90回。

 そこから更に使用して再度修復すると、75回……といった具合に、どんどん最大使用回数が減っていくらしい。


「大体5~6回くらいまでは修復して使いまわせる感じね。でも付与魔術を使える人って少ないから、いちいち修復しないで売り飛ばす人もいるわね」


「私もフロウヴィウムで錬金魔術は修得出来ましたが、付与魔術はまったく適性がないようでダメでしたね」


 魔導具の使用回数を修復するには、最低でもクラスⅣの【簡易付与修復】が使えなければならない。

 そもそも適性のある者が少ない付与魔術なのに、最低でもクラスⅣまで上げないといけないとあって、修復しようと思っても出来ないケースは多い。

 商人の中にはそうした魔導具を買い取り、付与魔術師のいる街まで持って行って、修復してから売るなんて商売をしてる者もいるくらいだ。


「私もちょっと挑戦したことはあったけどダメだったわ。まあ、そこまで時間かけてはいないんだけどね」


「その点、ブルックナー商会には専属のヴァンという凄腕の付与魔術師がいるんですよ。ですので、カウワンにある本店ほどではないですが、魔導具の品揃えがいいんです」


 ブルックナー商会は結構大きな紹介らしく、本店があるカウワン本国にいくつか支店を構えている他、他国であるガンダルシア王国のピュアストールの街にまで支店を展開している。



「ふうん、付与魔術ねえ。今はまだそっち方面に手を出すつもりはねえけど、いつか取り組んでみたいぜ」


「エイジが付与魔術を覚えたら凄いことになるわね!」


「ええ。付与魔術というのは、それ単体だと真価を発揮できません。物品に魔術を付与するには、付与魔術師自身が他の付与したい魔術を発動する必要があるからです」


「そう考えると、エイジならいろんな属性の魔術が使えるし、付与魔術の恩恵は大きいわね」


「む、そう言われると使いたくなってくるな」


「練習すればいいんじゃない? これまでの感じからして、エイジなら3か月後くらいに使えるようになっても驚かないわよ」


「ぬうううん……。いや、ダメだ。やっぱ付与魔術は後回しだな」


 影治がそう判断したのは、高ランクのオークたちと戦った時に、今のレベルだと魔術だけでは高レベルの魔物に致命的ダメージを与えるのが難しいと感じていたからだ。

 ピー助のようなクラスⅨ魔術はまだまだ先になるだろうが、クラスⅧ……せめてクラスⅦくらいの魔術は使用できるようになっておきたかった。


「あ、着いたわよ」


 魔導具についてあれこれ話しているうちに、目的のブルックナー商会に到着したらしい。

 外観だけだと分かりにくいが、それなりに広い建物の1階部分が店舗となっているようだ。

 目立つ看板が掲げられており、入口の扉は影治からすると見上げるほどに高い。


「では参りましょう」


 シリアとリュシェルは何度かこの店を利用したことがあるようで、先に扉を開け中へ入る。

 その後を影治やティア、ピー助たちがあとに続いた。



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