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女貴族に買われた少年が厳しく可愛がられて、養われます。  作者: beru


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第四十七話 主に会いたくて強硬手段に出る使用人

「はあ……」

 実家に帰らされたポールはその日の晩、自室のベッドにくるまりながら、溜息を付いて塞ぎこむ。

 セシリアの屋敷に使用人として来てから、彼はずっと幸せな日々を送っており、それがずっと続くと信じて疑わなかったが、何故こんな事になってしまったのかと、悪い夢を見ている気分になっていた。

「うっ、えぐ……セシリアさまあ……」

 セシリアの顔を思い出すと、ポールの目に涙が自然に出てきて、泣きじゃくる。

 どうして、セシリアが自分を追い出したのか、彼はまだ理解出来ずにおり、理不尽

 一人前になって欲しいというセシリアの願いが、彼には全く受け入れられず、何故あんなことを言い出したのかもわからなかったのだ。

「うう……きっと、セシリア様も意地張ってるだけだもん」

そう言い聞かせて、ベッドで横になり、そのまま眠ってしまったのであった。


「ポール、帰ってきたんなら、収穫手伝いなさい」

「はーい……」

 朝になり、ポールは母親に畑仕事を手伝うように言われたので、一緒に畑へと行き、しばらくぶりの農作業を開始する。

 使用人としての仕事も決して、楽とは言えなかったが、実家での農作業はやはりきつく、久しぶりだってので、ぎこちない手つきで、ジャガイモの収穫作業をしていったのであった。


「休みはいつまでなの、ポール?」

「え? えっと……来週の月曜には……」

「そう。ま、男手があるのは助かるわ。お父さん、今日は市場に行って居ないから、」

 夕飯になり、母親にそう聞かれ、気まずい表情でポールは答える。

 彼は一週間だけ休暇を貰い、家に帰ってきたと、親に告げており、その間に何とかして屋敷に戻らねばと考えていたが、どうすれば戻れるのかわからずにいた。

「明日、セシリア様のお屋敷に行ってみよう」

 まずはセシリアに直談判してみようと思い立ち、ポールは翌日、彼女の屋敷に出向くことに決める。

 きっと、カっとなっただけに違いない。

 ポールはそう信じて、ベッドに入り、一夜を過ごしたのであった。


「あ、あの……」

「何ですか、ポール?」

屋敷の門を叩くと、使用人の女性が扉を開けて出て来たので、

「セシリア様に会いたいのですけど……」

「生憎ですが、今は留守です」

「え? 居ないんですか?」

「はい。ご用件があれば伺いますが」

彼女とは特に親しくはなかったが、あまりにも他人行儀の応対であったので、ポールも何だか知らない人と会話している気分になってしまい、使用人女性の冷たい視線を見て怖くなってしまっていた。

「その……いつ頃、帰ってきますか?」

「夜には帰って来ると思います」

「わかりました」

夜中には帰って来る――取り敢えず、その言葉を信じて、また出直すことにした。


そして、その日の夜にもう一度、屋敷に出向くが、

「ポール、何ですか、こんな夜中に?」

「あのー、セシリア様は……」

「セシリア様はお休みです。何かご用件は?」

屋敷の門を叩くと、今度はメイド長のアンジュが出て来て、先ほどの使用人と全く同じ素っ気無い態度で同じことを聞く。

「え、えっと……大事なお話が」

「なら、私の方から伝えておきます」

「あの、直接お話したいんですけど……」

「駄目です。今はお休み中だと言ったでしょう。大体、あなたはもうこの屋敷の使用人をクビになったのよ」

「っ! く、クビって……」

アンジュにそう宣告されて、改めて背筋が凍りつく。

クビになった――それは、もうこの屋敷の使用人ではないという事。

セシリアからは『しばらく休め』と言われていたが、他の使用人には解雇したとセシリアは告げており、アンジュの言葉を聞いて、ポールはハンマーで頭を殴られたような衝撃を覚えて、目眩がして、気を失いそうになってしまっていた。

「私に言えないような用件なら、取次ぎは出来ません。もうこちらから話すことはないので、失礼するわ」

「あ、ちょっ……」

バタンっ!

アンジュが重い扉を一方的に閉めて、暗がりの中、ポールが一人、玄関の前に取り残される。

まさか、本当に解雇されていたとは思わず、ポールは放心状態になりながら、門の外まで歩いていくのがやっとであった。


「うう……うわあああん……」

屋敷の門を出た後、ポールは彼女の屋敷の塀にもたれかかって、蹲り、泣きじゃくる。

どうして、ここまで拒否されてしまったのかと、ポールは訳もわからず、泣くしかなく、もう二度とセシリアに会うことも出来なくなるのかと、最悪の事態が頭を過り、気がおかしくなりそうになっていた。

「嫌だ嫌だ嫌だ、セシリア様に会えないの嫌だあ……」

 まるで幼子の如く、ポールは泣き喚くが、誰も応えることはなく、ただ虚しく彼の泣き声が木霊するのみであった。

 本当に拒絶されてしまったのかと思ってしまうと、気が狂いそうになってきてしまうので、必死に打ち消していたが、どうすればまた使用人としてあの屋敷に戻れるのか、ポールは全くわからずにいた。

「またセシリア様に会いたい……」

 会ってまた彼女と触れ合いたいという気持ちは高まるばかりであったが、それを拒絶しているセシリアに次第に憎悪に似た感情が沸き起こる。

 だが、とにかく会って話をしたいと思い、明日から毎日、屋敷に出向くことにした。


「ポール、あなた、またこんな時間に出かけるの?」

 今夜もセシリアの屋敷に行こうとすると、母親が訝しがな顔をして、呼び止める。

 実家に帰って、既に四日経っているが、それから夜になると、毎日セシリアの屋敷に行っていたので、母親も不審に思い始めていた。

「ちょっと散歩に行くだけだよ。すぐに帰るから」

「あ、ちょっと待ちなさい」

 引き止めたは母親に素っ気ない口調で告げた後、ポールは家を出てしまい、またセシリアの屋敷に向かう。

 もう秋も深まり外はかなり冷え込んでいたが、そんな寒さも今は気にならなくなる位にセシリアに会いたい気持ちでいっぱいになっていた。


「セシリア様、居るかな……ん?」

 屋敷の近くまで来ると、前方から馬車が走ってきたのが見えた。

「セシリア様の馬車だ!」

 見間違える筈はない――あれは、自分も何回も乗車したセシリアの馬車であり、こちらに向かって来る馬車に走っていった。


「うわあっ!」

「きゃあっ! な、何よ急に!」

 御者がポールに気付いて、馬車をすぐに止め、その反動で中に居たセシリアとアンジュも転倒しそうになる。

「すみません、急に誰かが飛び出して来て……おい、危ないだろ! あ、あれ?」

 飛び出して来て相手を御者が怒鳴ろうとしたが、既に姿はなく馬車から降りて、ランプで夜道を照らして辺りを伺う。

 気のせいか? と

「もう、何があったの?」

 何事かと思い、アンジュと一緒にセシリアも馬車を降りて、辺りを探る。

「セシリア様は馬車にお戻りを……暴漢の可能性もあるので」

「なら、三人で一緒に居た方が安全じゃない。馬車に一人で居る方が怖いわ」

 アンジュが丸腰で外に出て来たセシリアに馬車に戻るよう促すが、セシリアは一体何処の不届き者がやったのかどっちめでやるとばかりに外に出て、辺りを見回していた。


(ああ、やっぱりセシリア様だ)

 何日かぶりに見た月夜に照らされた主の姿を近くの茂みに隠れながら、拝み感激するポール。

 これから舞踏会に行くのか、セシリアは着飾っており、あまりの美しさに見惚れていたのであった。


 ガサガサ

「にゃ、にゃあ」

「ん? 猫?……きゃっ!」

 ポールが隠れている茂みの前にセシリアが通ると、猫の鳴き声と共に茂みが蠢く音がしたので、何か居るのかと覗き込むと急に伸びた手に腕を掴まれ、茂みに引っ張られる。


「ちょっ、何なの! 無礼よ!」

「セシリア様……」

「なあっ!? ポール!」

 茂みに引っ張られたセシリアが何事かと抵抗すると、ポールが潜んでおり、彼に抱きつかれてしまう。

「な、何を!」

「セシリア様に会いたかったんです」

「あ、会いたかったって……は、離してお願いだから……」

 引き離そうとするが、ポールは彼女の胸に顔を埋めて離そうとしない。

 これから大事な舞踏会に行くので、着ているドレスが汚れないように気を遣っていたセシリアを絶対に離さないとばかりにポールは抱き締めていたのであった。



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