一人目の転生者④
脱線しすぎたので次回か、もう一個先で戻すかもしれません。
スキルは才能に見合った物を条件を満たした時に手に入れる事ができるもの。
魔法などは才能などが無くても魔力さえあれば覚える事ができるもの。
[ファイアボール]とファイアボール、その程度の違いだ。
しかし、この威力に関しては全く違う、たとえファイアボールが半径50cmの大きさだったとしても、相手が[ファイアボール]を使ってきたとしたら、互角、もしくは[ファイアボール]が飛んでくる。
でも、[ファイアボール]を打つ物が未熟者だった場合はファイアボールで打ち消し、喰らわすことも可能だろう。
だが、基本的に戦う時は強者しかいない、だから[ファイアボール]を打ってきたときは、別の技で返すのが得策である。この場合は水系の魔法か土系の魔法が効くだろう。
と、これが本で読んだスキルと魔法の違いだ。
話を現状に戻そう、俺は今土の魔神様の家系の御子息様に御相手(喧嘩)を申し込まれたワケだ。
「ミレイラ、あいつ等どこ行った?」
「おそらく中庭かと、この会場からは・・・あの扉を出ていけば行けるはずです」
「な・・・中庭なんかあるのか?」
「はい、戦う為に作られたんじゃないかと思うほど多きい中庭が」
「へぇ・・・」
俺はどんな場所なのかドキドキしながらミレイラの言われた通りに歩き、中庭に出て行った。
リリーナはお手並み拝見と言いながら付いてきて、セラは気を付けてと一言、なんだ?これは俺にフラグが立っているのか?こんな経験初めてだぜ。
親父と土の魔神の親父さん?は二人一緒に付いてきていた、いつの間に。
中庭への扉を開けると、暗い世界が待っていた、身体が疼き、血が沸騰しそうで、今にも暴れたいと思う衝動。
真ん中で土の魔神の御子息様が仁王立ちしていた。
「勝負だ!待ったは無し!行くぞ!」
聞く耳持たずと先手必勝される俺、いや客観的に言ってもしゃーないけど。
中庭に出ると、周りには観客っぽいのが、中庭にいるというわけではなく、室内から見れるようになっているのだ。
だからといって歓声などは起きず、俺達の実力は如何ほどかと品定めしている目がほとんどだ。
「ミレイラ、どうやらあちらの御子息様は俺と戦いたいみたいだから・・・あの執事頼むわ」
「分かりました」
「んじゃあ・・・やってくか!」
俺はブラッディ・スピアを出し、構えた。
☆――――――――――☆
sideミレイラ
イヴ様は見る見るうちに強くなっていく、槍の扱いについて稽古を付けてほしいと申し込まれ、断るワケにもいかず、全身全霊を込めて真摯に教えてきた、するとどうであろうか、吸血鬼という種族もあってか、槍の扱いに関してはプロ並だ、今にも追い抜かれそうで少し怖いと思ったりするけど。
打って変わって魔法は苦手なようだ、自分の血に魔力を流し込んで形を作るのは得意のようだけど、炎の初級魔法、ファイアボールが安定、少し大きさを変えて打てるようになっただけで、それ以外は打てないのだ。
斬の特性を持つ魔法は意識せずに使っているようだ。
驚かせるのはこれだけじゃない、時々、異様に力が強くなったり、目に見えない程素早い動きをしたり、まるで速度強化の魔法を使ったのか・・・もしくは薬を使ったのかと思ってしまうくらいに。
一度聞いてみようかと思ったが、やめておいた、理由は無いけど。
正直言って、十歳としてはかなりの実力を持ってる、土の魔神の御子息、十二歳でランスというらしいが、おそらく、いや、絶対負けないと私は思う、断言できる、イヴ様は負けないと。
生活面に甘い部分があるのは・・・できれば直してほしい。
☆――――――――――☆
「うおおおおおッ!」
土の御子息様は俺に向かって魔法で作った岩を投げてくる、名前は・・・そうだな、ロックスローなってどう?あ、ダメ?ごめんよ。
「[ATKUP Lv7][SPDUP Lv5]」
Lv1ごとに0.5倍上乗せ、Lv7なので4.5倍くらいだろう、SPDは3.5倍。
さっさとドーピングをかけ、飛んでくる岩を見据える、そして
「そぅ・・・いや、ちょ、ミレイラ・・・」
「申し訳ありません・・・」
飛んでくる岩を見据える、ここまではよかったんだ。
ミレイラがパッと前に出てその岩を真っ二つにしてしまったのである、ザンッ、ドシャァァという音を立てながら。
スタッと着地し、槍を構え立つミレイラ、凄いけどさ、うん、執事の方頼むわ。
「ファイアボール(もどき)三つくらいで、ほいっ」
俺は真っ暗闇の空に三つの火球を作りだし、御子息様へ打った。
御子息様は土の壁を作りだして簡単に打ち消してしまった、oh...
「その程度かよ!おい!・・・おい何やってる!さっさと片付けてこっち来い!」
御子息様は良い気になっていた所、執事と2:1で俺を叩きのめそうという魂胆だったらしい・・・が、
俺のメイドに勝てるとでも?
ミレイラはわざと、そう、わざと執事に合わせている、何故か、もし執事を速攻で叩きのめしたりなんかしたら2:1になってしまう、でもミレイラを休ませて1:1でやったら何かいちゃもんを付けてくるに違いない、だからこうしてある、というかこうしてもらっている。
「余所見はいけないな、御子息様?」
「えっ」
俺は本気で踏み込み、懐まで潜り込んだ、喰らっとけ吸血鬼(ドーピング済み)の腹パンチ。
ドゴォッ
「うぉぇッ・・・!」
俺の拳は見事鳩尾に入り込み、鈍い音を響かせる、なんとなく嗚咽が聞こえた気がするけど、どうでもいい、このまま・・・
バキィッ
折れたか?思い切り回し蹴りをかましてやった、御子息様は垂直に吹っ飛び壁に激突する。ドガシャァァァンってな。
ミレイラはこっちが終わったと判断すると、相手の執事が持っている剣を弾き飛ばし、首に槍の切っ先を当たるか否かのレベルの近さで止めた。
やっぱミレイラすげぇ。
「う・・・」
御子息様に歩み寄って見ると、まだ意識があるようだ、伊達に魔神の家系じゃないという事ですね。
「まだだ・・・!このォ!」
まだ御子息様はやる気のようなので、俺はミレイラに腕を出し、斬ってと頼んだ。
「それはどういう?」
「血、使うから」
「分かりました」
ザシュッと腕の一番血が沢山出る所を斬る、流石ですね、分かってらっしゃる。
俺は魔力を込め、ブラッディ・スピアを大量に作成、刃の向き先は全部御子息様だ。
残った血を手に纏わせ、指の先が鋭い大きな、悪魔を連想させる手を作った。
「お前の負けだ、お疲れ」
その血を動かしうねうねと遊びながら言う、御子息様は言い返す気力も無いのか、気絶してしまった。
俺はこれで満足だろうと納得し、観戦していた奴等を一目見てから、中庭を出た。
「ミレイラ、お疲れ様、凄かったわ、惚れそうなくらい」
「ありがとうございます」
チッ、告白を軽くスルーか、守りが堅いな、色々と。
「中々やるじゃないの、これほどとは思わなかったわ」
「凄かったです、あんな簡単に倒してしまうなんて」
リリーナとセラが待っていた、まぁやっぱり観戦してるよね。
リリーナはへぇ、といった感じで、セラは目を輝かせ、褒めてくれている。
俺は適当・・・いや、丁寧にあしらった。
何故かって?おま、火の魔神様と、ここに呼ばれる様な奴等だぞ?それだけ偉いに違いない、なら御機嫌を取っておいた方が後々良さそうだと思わないか?そういう事だ。
・・・と、あしらったつもりだったが、会場に戻らないといけなさそうだったので、最終的に二人とも一緒に行動するという事になった。
「良い動きだったぞイヴ」
そしてまた戻ってきました会場、動いたせいで腹が減ったので、ミレイラに料理を頼む。
その間に親父が俺の元に来た。
「ありがとう、んで何であの御子息様は俺に喧嘩売って来たんだ?ちょっとそこだけ説明してもらいたいよ」
「ああ・・・それがな」
親父は額に指を置き、ゆっくりと話し始めた、めんどくさいので簡潔に言うと・・・
あれだ、自慢だ、親父は俺の事を土の魔神に話し・・・俺について色々言ってたらしい、しかも途中からリリーナとかセラとか寄ってきたもんで、こいつら無駄に綺麗だから、尚更って感じか。
それで、御子息様がその事を耳にして・・・というオチだ。
「嫉妬みたいなもんか」
「そうだな」
「いやいや、元はと言えば父さんが俺の事言わなきゃ良かっただろうに」
「これだけ育ちが良いと自慢もしたくなるだろう」
そういうもんなのか、親の気持ちってのは分からん。
育ちが良いのかもあまり分からん、まぁ人外らしく人外の動きはできるからいいと思うけど。
ドーピングかけたら尚更だな。
「イヴはさっきの喧嘩でファイアボール使ってたけど、他に炎の魔法使えるの?」
リリーナが聞いてくる、ちなみに自己紹介の方は先程済ませておいた。
でもリリーナさんや、親父との会話中に入り込んでくるとは、流石です。
「いや、ファイアボールしか打てないね、あんまりそっち系には慣れてない」
「そう、他には何かできるの?」
「血と・・・斬魔法ができた様な気がするんだけども」
と、ここでリリーナの教えが入る
「いい?魔法にも種類があって・・・」
面倒なので簡潔化させていただく。
魔法には三つの種類があり通常魔法というのが、炎、水、風などなど、これが基本的な魔法だ。
もう一つは特性魔法、斬、痺、毒などなど、武器や何かに纏わり付かせる魔法。
そしてもう一つは独創魔法、これは通常魔法とする事に変わりは無いが、作りだすものが違う。
通常魔法は魔力を使って水魔法を発動させる、独創魔法は魔力を使ってその人特有の魔法を発動させる。すなわち、発動させる本人にしかできない魔法が出るのだ。誰でも使えるワケでは無い。独りで創る魔法。
それで、俺は珍しく、全種の魔法を使えるのだ、独創魔法はそれのみだが、通常、特性はどれか一つでも使えたなら、他のも使える可能性があるという事、といっても今は通常が炎、特性が斬、独創が血しかできないが。
「だから、鍛えれば色んな魔法が使えるわよ?」
俺の言葉では約九行で終わったが、リリーナ先生の御教授は二十行は越えているだろう、俺の簡潔化、ドヤァ?
「そうですか」
あまりに長々しいものだったので、途中からセラは話を聞いていないし、ミレイラはずっと俺を見てるし、親父も立ち止まったまま、うん、何も知らない俺には役立つけどね、長すぎたんだ。
「イヴ、貴方ってすぐ帰るの?良かったら私が炎魔法について詳しく教えてあげるけど?」
「というのはどのくらいのレベルで?」
「腕一振りで焼け野原が作れるわ」
「是非御教授頂きたい!」
「イヴ・・・」
親父がおいおいという顔で見てくる、いいじゃないか、どうせ暇だろ
俺が、えぇ~という顔で見つめてやると、少し考え込み、うんと頷き・・・。
「ならお前をここに一度置いておくとしよう、一度でも一人暮らしを経験させておきたかったしな、大丈夫だ、住む家も一時的に必要な金も全て用意してやろう、俺は仕事で絶対に戻らなきゃいけないから、迎えに来る時には立派になってろよ」
「マジっすか」
どうやら許可が出た模様、一人暮らしか、自分で料理とかいつぶりだろう。
俺がまさかの一人暮らし!?ってウキウキしていた所、リレイラが
「私はどうすればいいんでしょうか?」
「どうって・・・ああ、そっか、どうしようか」
「ああ、そこは勝手にするといい、別に残ってもいい、話はつけておく」
なんと!一人暮らしなのにメイド付きとはこれいかに!
まぁ残ってもいいなら当たり前のように・・・
「なら残ってもらっていいかな」
「分かりました」
「しかもここなら魔物討伐も経験できる、殺す事を学んでもいいだろう、その為にはおそらく魔法学校に一時通う事になるが・・・いいか?」
魔法学校?ああ、そうか、そこらへんの物は人間から学んだんだったっけ、なら学校があってもおかしくは・・・ないか。
まさかの学校かー、あんまり乗り気にはなれないな・・・。
学校という響きが基本的に嫌いだ。
「ああ、はい大丈夫、うん」
「ならもう明日には家と学校に話は入れておく、早ければ明後日、遅くても一週間以内に通えるだろう、その時にはもう俺はいないから、困ったときにはミレイラを連れて行け」
「了解致しましたよっと」
親父は魔王様と少し話したらもう戻るというので、俺もさっさと帰ろうとしたのだが・・・
「へぇ?学校行くの?」
捕まった
☆――――――――――☆
「へぇ、家っつっても集合住宅みたいになるかと思ったけど・・・うん、家だな」
「家ですね」
現時刻は朝の十時くらいだろう、早速親父から連絡が入り、家の場所を言われ来てみれば・・・
立派な一軒家があったとさ、という感じだ。
場所は街の一角、学校にもそれなりに近く、生活はしやすいだろう。
親父はもう学校に俺の入学手配を出し、帰っている途中である。
「へー、ここがアンタの家かー」
「立派ですね」
「・・・なんでいるんだ」
俺の後ろにいたのはリリーナとセラ、何故ここにいるのが分かったし、おまいらもしかしてのストーカーとかいうオチじゃあないだろうな。
「リヴェスト家っていうでっかい看板を隠せると思ってるの?探せば一発よ」
「マジでか・・・」
がっくりと、俺は肩を落とした。
ん?あれ、おかしいな。
「何で二人ともいるんだ?帰ったんじゃないのか?」
「私は魔法学校に通ってるのよ」
「私もです」
「マジでか・・・」
「それ二回目」
後々面倒事が起きそうな気がしてならないぜ、・・・待てよもしかしたら。
「あの土の魔神も学校に・・・」
「ああ、ランスの事?アイツもいるわよ」
ぐぉぉぉぉッ!やっぱいるのか!絶対目の敵にされるって!こりゃあ、明日以降が不安でならないな、初めての事にあまり希望を感じないってのはちょっと嫌だけどなぁ・・・。
「大丈夫よ、基本良い奴だし、面倒なのは雷の所のヤツね」
雷?雷の魔神か、やっぱ電気系の魔法なのだろうか
「頭は普通くらいだけど、戦闘とか魔法に関しては色々とずば抜けてるから、軽く威張ってるのよね、見てて何かむかついてくるわ、しかも何かにつけて喋りかけてくるし、気持ち悪いっての」
リリーナが喋る喋る、こういうの聞かれて大丈夫なのか?
いや絶対大丈夫じゃないだろうな。
「ま、アンタの実力だったら、相打ち・・・そこらへんまでいけるかもね、無駄に目を付けられるかもだけど」
「そういうのは御免だな」
そんなに強いのか・・・、つっても土の魔神・・・ランス君との戦闘じゃあそこまで本気は出してないけども、だってブラッディ・ツェペシュとリスティクションとか・・・あとドーピングかけてただ殴るだけとかそういう・・・。
「・・・そんなに強いのか?」
リリーナはニヤリと笑ってこっちを見た。
「知りたい?なら自分で喧嘩でも売りに行けば?――――――――――ほら、あそこに」
「?」
リリーナが指を指した先には三人のガードマンっぽい人達に囲まれた青年がこちらを見・・・睨んでいた
うわぁ、早速敵対されちゃった・・・。