第199話 あのとき何が起きたのか
「マサヤさん!」
レフィカルを倒して。
俺が階段を降りるように下に降りたとき。
リスリーが抱き着いて来た。
俺は咄嗟に引き剥がそうと思った。
俺自身が高熱になっているはずだと思ったからだ。
だけどリスリーは別に火傷を負わなかった。
どうも魔法効果が終わっているらしい。
そういえば、黒い炎がもうない。
(途中から、高熱部分が自分の魔法由来だと気づいて魔法を切ったのか)
俺は地上に落ちてうつ伏せで呻き声を上げているレフィカルを見てそう思う。
どうもまだ生きているようだ。
俺としては殺してしまってもしょうがないと思い、全く手加減をせずに全力でぶちのめしたんだが。
死んでいなかったことに少しホッとした。
だけど……
俺は大谷さんの方を見た。
大谷さんは変わらず苦しみ続けていた。
頭を抱え、悲鳴をあげつつ床で悶え苦しんでいる。
(こいつを……レフィカルを殺せば大谷さんが助かるかもしれないよな)
その可能性は零じゃない。
生かしておいても大谷さんが助かると思えないから、やるしかないのか。
そう思い、俺が覚悟を決めようとしたとき。
「マサヤ!」
……この場の俺の関係者の最後の1人。
ソウジの奴が俺に駆け寄って来たんだ。
「ありがとう。よくやってくれて」
そう言って俺に近づき、俺の肩を叩いた。
本当は抱き着こうとしたけど、リスリーがいるから止めたのか。
ちょっと目が複雑に泳いでいた気がする。
俺は
「……どうして復活できたんだ? それにその格好……」
さっきまで戦いで忙しくて訊ねられなかったことを口にした。
突然の復活劇。
俺のその問いに
少し痛ましい表情で
「……この国の国王のスキルが『口寄せ』だったんだよ」
『口寄せ』
それは任意の死者を冥界から呼び寄せるスキルらしい。
呼び寄せるには、その死者を認識している必要がある。
国王は俺の話からソウジの存在を知り、そのスキルを使用し
冥界からソウジを呼び寄せた。
そしてソウジは国王に訊ねられた。
自分が死んだときの状況を。
ソウジがそれに正直に答えたら
国王が責任を感じ、1度しか使用できないこのスキルの奥義を使用した。
それが「死者蘇生」だ。
それは「自分の命を絶つことで、自分の残りの寿命分の命を口寄せした死者に与え、自分の肉体を器として蘇らせる」というもので。
国王はソウジに対してそれを使ったんだ。
自分の家臣の不始末で、理不尽に命を絶たれた人間が出た。
ならばここで使わないならいつ使うんだ? と。
(やっぱり、高潔な人物だったんだな)
国王の選択に何かを言う奴が出るかもしれないけど。
俺はそれには黙れと言いたかった。
俺は国王には感謝しかしない。
ソウジを蘇らせてくれたんだ。
感謝するしかないだろ……!
そしてソウジは
「で、蘇ると同時に俺もスキルに目覚めた」
さらに説明してくれた。
あのとき、ソウジは何をやってくれたのかを。
ソウジのスキルは……
『支援者』
任意の誰か1人の抱える問題を、1つだけクリアするスキルだ。
なので俺はあのときの問題「動くことが出来ない」をクリアしてもらい
……こうなった。
だったら……
俺は
「ソウジ、大谷さんを助けてやってほしい」
ソウジに事情を説明する。
大谷さんがレフィカルの策略で脳内に寄生虫を抱えていて、そのせいで命の危険に晒されていると。
俺の話を聞き
「分かった」
ソウジは厳しい表情で頷いて
「……でも」
倒れている瀕死の男……レフィカルに視線を向け
「……悪いが、先にあの男を殺さないとお前へのスキル効果を切れないから、不可能だ」
そう固い声で言った。
……だよな。
そんなうまい話はないか。
俺は今、ソウジのスキル効果で「行動不能」を打ち消して貰っているから動けるけど。
大谷さんを助けるためにソウジのスキルを使うなら、俺にスキルを使用することを止めなければいけない。
……ここは覚悟を決めなければいけないかもしれないな。
俺は大きく息を吸い込んで
「レフィカル、覚悟しろ」
そう言いながら、一歩踏み出そうとしたとき。
突然、大谷さんの悲鳴が止まった。




