第17話 メノッドの街
ここに来るまではリスリーしかいなかったから、会話は日本語で行っていたんだけど。
ここからは街に入るからそれではまずい。
まだ俺は王国でお尋ね者にはなってないみたいなんだが(トオルに確認を取った)いつまでそうなのかは正直怪しいと思ってる。
俺が勝手な動きをして、あのハゲをぶちのめす力を手に入れようとしていることがバレれば、多分放置はしないだろ。
スキルが有用だからアイツは俺たちをこの世界に拉致したんだ。
だったらどんなスキルでもあの男は軽視しないはずだ。
だからなるべく自分の所在を宣伝するような行為は避けたい。
街中で日本語しか喋らない奴がいたら目立つだろ絶対。
かといって、この世界の言葉を覚えるのはそうそう簡単にはできないし。
生憎俺は天才じゃ無いからな。
なので俺はこの街に入ると喋れなくなるんだ。
リスリーが街に入るための手続きを俺の代わりにしてくれて。
俺はその様子をただ後ろで見ていた。
……何か後ろめたい気分になる。
まるでヒモ野郎みたいじゃないか。
でも俺は何も出来ないし……
「ウオーヤムスサップ」
「ドーツレドヌ」
彼女の門番相手の手続きが終了したらしく。
俺は彼女に手招きされてついていき
街の門を潜った後。
彼女に小声で訊ねる。
「ねぇ」
俺の呼び掛けにリスリーが俺に目を向けたので
後を続けた。
「ドーツレドヌってどういう意味?」
ドーツレドヌ。
前にも何回か聞いた覚えがあったので、なんとなく訊ねた。
リスリーは少し考えて
「理解、納得、把握……日本語で言うところのそういう意味でしょうか」
慎重な口調でそう返し。
続けて
「マサヤ様、ノーザリアの言葉にご興味があるのですか?」
俺に、少しだけ弾んだ声で訊ねて来た。
俺はその言葉に頷いて
「いや、分かんないとどう考えても不便だろ。だったら少しでも覚えて行かないと」
「素晴らしいと思います」
褒められた。
……なんか、すごく嬉しかった。
当然の問題解決法を口にしただけなのに。
戸惑う俺にリスリーは
俺に対する伝達事項を囁く。
「マサヤ様、我々の一応の設定として、マサヤ様は私の護衛対象、そして私は冒険者という立ち位置でこの街の門番には話しています」
……冒険者。
ゲームにはよくある職業だよな。
「冒険者って存在するんだ? この世界」
「ええ。国が解決に手を回せない雑多な厄介事を解決するための仕事です」
……そのリスリーの言い方。
何だか事務的で。
俺はそこから
(ああ、この世界では冒険者ってあまり良い仕事と思われて無いんだな)
彼女の抱えている想いを察した。
出来れば「冒険者です」なんて、彼女は名乗りたくないんだろうな、って。
メノッドの街は王都ほどの規模は無かったけど。
それなりに栄えている街らしく。
人が沢山いた。
道は石で舗装されているし。
そこに露店だとか屋台だとかがあって。
あと、住んでる住民の衣服のレベルも高い気がした。
そんな街を歩き続け。
リスリーに連れて来られたのは、1軒の宿屋っぽい建物だった。
どの程度の宿屋なのか良く分からないんだけど……
おそらく、最高の宿屋では無いと思う。
客層がさ……
身なりのいい紳士ばかり、って風に見えないんだ。
かといって、ガラの悪い人間ばかりにも見えない。
だから最低の宿屋でも無いと思う。
リスリーが宿屋のマスターみたいな人と会話を交わして。
戻って来る。
……その顔は少し渋かった。
「えっ、どうかしたの?」
不安になる。
俺には右も左も分からないのだし。
彼女は思案顔で俺に目を向け。
言い辛そうにこう言った。
それは……
「……どうも私の従姉は……出ているようです。かなり長期で」
問題の人物の不在。
ええと……?




