第16話 目指す場所は魔王領
今、俺たちは魔王領を目指している。
魔王領……魔族っていう、人間以外の知的種族が支配している土地らしい。
この国の建国の話にも登場する魔王は、最強の魔族に与えられる称号だそうだ。
リスリー曰く、魔族とは……
体格は人間と同じくらいだけど、筋肉の量が凄まじく。
人間と比較して倍以上の開きがあり。
手足が短い種族らしい。
……イメージとしては背の高いドワーフか?
文明は原始的だけど、戦闘能力が高く。
生活圏内に魔法を使える魔物がいる関係上、魔法を使えることが普通。
で、最も特徴的なのは
法の概念が無いらしいんだ。
自分でその行いの責任を取る気があるなら、何をやってもいいと考えているそうな。
種族全体が無法者。
そういう種族なんだよ。
相互にメリットのある契約……所謂「約束」を結ぶことはできるけど、一方的に頼るようなことはできない。
力の論理しか無い連中だから。
そんな連中が支配している土地を、俺たちは今目指している。
……理由は、俺が力を手に入れるためだ。
魔王領には先天的に魔法を使える生き物……魔物が普通にいる。
そして倒してその脳を食べれば魔法を使う素養が手に入る。
この世界で魔法を使えるようになるには、真っ当に修行を重ねて「五大精霊」の声を聞き取る能力を獲得し、そこから精霊に気に入られて魔法を使う能力を得る方法と。
もうひとつ。
魔物の脳を食べることで五大精霊のいずれかの声を聞き取る能力を得て、魔法を使えるようになる方法がある。
地道な修行の方は現実的では無い。
1年や2年では利かないらしいし。
それに、最初から根本的な才能が無い人間は、いくら修行しても五大精霊の声を聞き取る能力は獲得できないらしいし。
だから俺が魔法を取得するには、魔物の脳を食べる方法一択なんだよ。
俺が魔法習得を目指す主な理由。それは
魔法を使えるようにならないと、俺はあのハゲ野郎の前に立って戦いを挑むことすらできないからだ。
今のままだと、即燃やされて終わりになるそうだ。
……どうも、あのクソ技は「相手が魔法の素養を全く持っていない」ことが前提らしいんだよ。
実行するには相当高度な魔法使いとしての実力が必要らしいから、誰でも出来る魔法ではないらしいけど。
だから魔法の素養さえ手に入れば、クソ技の対象外になるから、そこでやっと俺はあの男へ戦いを挑むことへの切符が手に入るわけだ。
……不意打ちによる暗殺は考えていない。
そんなの駄目だ。
必ず、正面からぶちのめし、地に這わせて謝らせてやる。
自分が全て悪かった、涙ながらに申し訳なかったと言わせてやる。
そのためなら、俺は魔王領に入り込める覚悟が出来ていた。
危険極まりないという、魔族が支配する混沌の世界に。
「マサヤ様、そろそろ目的の町に着きます。私に話しておきたいことがあるなら、先に話して下さい」
リスリーの言葉で、俺は我に返る。
思考に入り込みすぎて、周りが見えなくなっていたみたいだ。
街道を歩いて、ずっと来たけれど。
やっとか。
途中、乗合馬車なんかも使って……4日くらいかな。
目的地がようやく見えて来たらしい。
魔王領との国境近くの街「メノッド」に。
ここにいるらしいんだ。
リスリーの母方の従姉が
その従姉は変わり者で。
魔物研究を趣味にしてて。
家としては自分にスペアのスペア以上の価値が無いのをいいことに、好き勝手生きているらしい。
それで、魔王領にもこっそりと侵入を繰り返しているとのこと。
無論、違法な手段で。
褒められたことでは無いんだろうが……
今は、この人物に頼るしかない。
だから、ここまで歩いて来たんだ。
その人物が住んでいるというこの街に。
「分かった。街に入ったら俺は黙るから、交渉事は頼んだリスリー」
「はい」
俺の言葉にリスリーは頷く。
……こうして
俺たちは、メノッドの街に足を踏み入れた。




