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異世界にクラス転移で召喚された男子高校生、目の前で親友を殺されたため召喚者国家に反逆す  作者: XX
第8章:下剋上

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第140話 俺だけが悪者と言うなら

(おそらく、コバルが本来受けるはずだったダメージが、全てゴワケが引き受ける構図になってる)


 多分青いイヤリングを装着した方が受けたダメージが、赤いイヤリングを付けた方に転送されるんだ。


 だから今のコバルには、自爆扱いの行為によるダメージが狙えない。

 先にこの構図を破壊しないと。


「クソッ! 何で今ので左手を骨折しないんだ!?」


 取り合えず俺は、コイツのカラクリに気づいていないふりをする。

 俺たちは何も知らないと思わせれば、隙も生まれるはずだ。


「お前とは鍛え方が違うんだよッ!」


 俺の言葉にコバルが凶暴な笑みを浮かべる。

 自分が優位だと確信したのかもしれない。


「クソ共! 思い知らせてやるよッ! どいつもこいつも俺の邪魔ばかりしやがってッ!」


 そしてまた大ぶりの攻撃を連続で繰り出して来る。

 俺は回避に神経を割きながら


「何が邪魔だ! お前たちが自分勝手に振る舞ってるからそうなるんだろうが! そんなことも分からないのか!?」


「だから大谷さんに猿呼ばわりされるんだよッ!」


 コバルからまともに思考する余裕を奪わないといけない。

 だから俺は挑発目的でそう言った。


 俺のその言葉は


「うるせえ!」


「最初に邪魔をしてきたのはお前らだろうが!」


 多分、コバルのスイッチを入れてしまったらしい。

 完全に発狂状態になって、より激しい攻撃を繰り出して来る。


「嘘吐け!」


 より発狂させるために俺はそう返す。

 すると


「何が嘘だふざけんな! お前らの汚い真似は全て許されて! 俺のは1つも許されないってか!? ゴミがッ! クズばっかりだよ人間なんて!」


 そしてコバルは攻撃を続けつつ


「俺はな! 元々陸上の特待生であの学校に来たんだよ!」


 自分の身の上を口にする。

 俺がこれまで謎に思っていた、コバルがあの学校に居た理由を。




 コバルは元々、陸上の特待生で俺たちの学校に入った。

 だが


 入学後、陸上部に入る前にスカウトに来た顧問の教師から


 小原コバル、悪いが陸上入りは諦めてくれ。


 そう言われた。


 コイツはそれがワケが分からなかった。

 なので理由を問い質したが


 諦めてくれ、としか言われない。


 意味不明。

 当然納得も出来ない。


 だけど


「小学校時代に万引きをしていたようなヤツ、伝統あるこの陸上部には入れられないでしょ」


 そんな会話を陸上部の部員がしているのを聞いてしまったらしい。


 どうもコバルが陸上部入部を断られたのは……

 コバルが小学校時代に万引きを繰り返していたことが入学後に発覚したせい。

 だから特待生で招きながら、入部を断られた。



 確かにコバルは小学校時代に万引きを繰り返していた。

 食べるものが無かったからだ。



 ……コバルの両親は離婚していて。

 コバルは母親に引き取られた。


 そしてコバルの母親は派手な生活を好む女で。

 離婚の原因も多分そこら辺にあったんだろう。


 その流れでコバルの母親はコバルの養育費を使い込み。

 あるとき、コバルに食事をほとんど与えなくなった。


 今月厳しいから食事を我慢しろ。

 腹が減ったら水を飲め。

 そう言い放って。


 そしてコバルはどうしたか?


 ……近所のコンビニで、パンを盗んで飢えを満たそうとしたんだ。

 それがコバルの万引きの理由。


 何回かそれを実行した後。

 とうとうコバルは捕まって。


 そのときの犯罪歴を、誰かが密告したらしい。


(ひでえな、それ)


 正直そう思った。

 密告者がコバルを何故密告したのかは分からない。


 コバルが陸上部入りすることで、自分の地位が脅かされると思ったのか。

 それとも単純に犯罪歴が明るみに出て陸上部が叩かれることを恐れたのか。



「俺には陸上しか無かった! 陸上でなら、俺は上を目指せる! そう思っていたんだッ!」


「それを何だッ!? 汚ねえ真似しやがって! いつもいつも、俺だけを悪者にしやがって!」


 雷の槌を振るうコバルは泣いていた。

 感情が昂り過ぎたのか。


 これは自己憐憫の涙じゃない。

 怒りの涙だ。


「だから望み通りになってやっただけだ! 勝手にアホ丸出しの正義面で喚いてろカス共ッ!」


 こいつはそうやって社会を憎み、憎い社会の敵になった。

 だからコバルはそうなのか。


 コバルの連続攻撃を冷静に捌きながら、俺はそう思った。


 そして


「殺してやるからな村田ァ!」


「あの世で正井(マサイ)のアホと再会させてやるッ!」


 目を血走らせたコバルがそんな言葉と一緒に、俺の頭を叩き潰そうと大金槌を振り下ろして来たとき。

 俺はギリギリまで引き付けて


 体捌きでそれを回避し。

 大ぶりのその一撃で生まれた隙を突き


 俺はコバルの左耳を掴んだ。

 力いっぱいしっかりと握り込む。


 そして


「触んなッ!」


 怒り狂っているコバルは、そのまま頭を振るようにして強引に外そうとした。

 その瞬間だった。


 みぢっ、という嫌な音がした気がした。


 同時に


「ぐああああっ!」


 コバルの悲鳴が轟いた。

 ドクドクと血液が流れる。



 コバルの左耳が


 ……千切れていたんだ。

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