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リリスに説明をする。
まずは、想造力について。
次に、エルに想造力があることを。
さらに、エルが暴走をしないように見張るために来たことを伝える。
ついでに放火予告が噓であることも伝えた。
最後に、SOEFという組織について説明をする。
「そう、そうなのね。理解は…できていないわね。」
「ええ、信じられない気持ちも分かります。」
「いえ、私は信じてはいるのよ。理解ができないのは私のせい。よく頭が固いと言われるもの。」
「誰でもそうですよ。私は想造力があるのに理解に時間がかかりましたから。」
「ねぇ、もしかしてエルが暴走したのなら貴方はどうしたのかしら。」
「もちろん、殺しはしませんよ。ただ最悪の場合、気絶はしてもらうかもしれません。」
気絶させる前に想造力を止めさせるのが理想ではある。
母によれば、覚醒直後でも想造力のオンオフを切り替えることができる人もいるそうだ。
もしくは、エルのイメージしたことを私のイメージで塗りつぶすか。
どちらも無理なら気絶により、強制的に思考を停止させるほかない。
「あの、ご相談があるのだけれど。」
「何でしょうか。」
「エルは私がしつけたわ。だから、想造力の使い方についても教えられると思うのよ。私ならエルに言葉を伝えることができるの。」
言葉を伝えることができる。
確かに、初めて会った時もエルはリリスの言葉に従っていた。
想造力についても教えられるとは大した自信だが、強ち不可能でもなさそうだ。
ちょうど、どうやって想造力の使い方を教えるか困っていたところだ。
リリスが教えてくれるというのならば、それが一番かもしれない。
「確かに、誰がエルに想造力について教えるかが課題だったんです。リリスさんが教えてくれるというのは我々としても助かります。」
「私にできることがあれば何でも協力するわ。だから…」
だから、私からエルを奪わないでくれ。
そう言っているようだった。
リリスの家族はエルしかいない。
「ええ、リリスさんがエルに想造力を教えたとなれば、エルとリリスさんはその後もコンビになると思います。訓練はSOEFに泊まり込みにはなるでしょうけど。」
暗に「離れ離れになることはないよ」と教えてあげる。
リリスの顔が明るくなった。
リリスは家から離れるのは気にしていないのだろう。
とりあえず、説明も終えて一段落したところで、岩本さんから連絡が入った。
「中央の広場に武器を持った男が出現。想造力を持っていることも確認された。波崎ではないが、真理さんが直接向かった。天菜はエルを連れて急いで本部に戻れ。三ヶ里と私は広場の周りを見張る。天菜はSOEF本部で待機だ。」
外を見れば、警察が慌ただしく動いている。
この家の見張りは最低限に広場へ向かうのだろう。
リリスには状況を説明したし、この家にいる意味は既にない。
「リリスさん、少し早いですがSOEFに行きましょう。どうやら、広場の方で問題が起きたみたいです。エルのこととは関係はないですが、リリスさんに説明もできましたしタイミングがいいので。」
「分かったわ。使用人たちに説明したらすぐ行きましょう。」
「よろしくお願いします。」
そう言って、リリスは使用人に「しばらく出かける」と伝えてきた。
どうやら非常用持ち出し袋的なバッグを持っていくつもりのようだ。
リリスのバッグが一つ、エルのバッグが一つ。
エルのバッグはエルが自分で持つようだ。
というか、私がリリスから受け取ろうとするとエルが横から奪い取ってきた。
本当にしつけがしっかりされすぎている。
私たち二人と一匹はSOEFに向けて歩きだした。
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時は少し遡る。
真理は朝からモニターを監視していた。
「ああ、やっぱポテチ美味しいわ~。もうすぐ無くなっちゃいそう。」
棒読みで真理が言う。
暗に三ヶ里に買って来いと言っている。
「いや、流石に食べすぎなんじゃ…」
すでに20袋のポテチを買ってきている三ヶ里が言う。
近所のコンビニからは買いつくしてしまっている。
それどころか、大型スーパー2店舗が犠牲となった。
このままではこの街からポテチが消える。
「そうね、流石に飽きてきたわね。次からは何を食べようかしら。」
この調子で夜まで監視を続けるのだろうか。
この街に限らずこの国のお菓子を食べつくしてしまいそうだ。
お菓子メーカーと直接契約した方がいいのではないだろうか。
「あら、想造力が使われたわね。」
「どこですか?」
「中央広場よ。広場の映像は…」
広場の映像が拡大された。
そこには斧のような物を持った男が映し出されていた。
周りの人々が逃げまどっている。
何やら叫んでいる様子。
「岩本!すぐに広場に向かって。」
「はっ!」
真理と同じく映像の監視をしていた岩本さんが現場に向かう。
「さて、私も行くとしますか。」
そう言うと、真理はコーラのペットボトルを一本持って歩き出した。
そんなにゆっくりしていて大丈夫なのだろうか。
「三ヶ里は…そうね。周辺の人が広場に近づかないようにしといて。」
「分かりました。真理さんは…」
「それじゃ、先に行って待ってるわ。」
次の瞬間、真理が足元に吸い込まれるように消える。
真理がゆっくりしていたので油断してしまっていた。
てっきり波崎の捜索を続けて、広場は岩本さんに任せるのだと思っていた。
三ヶ里も急いで広場へと向かう。
というか、そんな移動手段があるのであれば教えておいて欲しかった。
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広場にぬるっと現れた真理は男の目の前に行く。
かなりガタイがいい。
真理の身長よりも30㎝ぐらい高いうえ、体は筋肉の塊だ。
ただの想造者かもしれないが、元を含め軍属以外の想造者が能力を使って暴れるケースは少ない。
覚醒後に軍から逃げ続け、能力を操れるようになるなど、並大抵の人間にはできない。
よって、この男は高天原関連だという予測がつく。
「ごきげんよう。随分と元気がいいのですね。」
「なんだぁ?女?おい。まさか、お前が鹿島真理とかいう奴か?」
「あら、ご存じですの?」
「そうか!俺様の方が強いことを証明してやる!おっと、その前に聞くことがあるんだったな。」
やはり、この男は高天原関連のようだ。
にしても、強いことの証明ね。
やってみればいい。
私に勝てるものならね!
わーはっはっは!
それはそうと、殺さないように気を付けないと…
「質問だ!!軍は解散するのか?」
「しませんわ。」
「そうか、ならば、皆殺し!!!」
言い終わらないうちに男は行動に移る。
男が巨大な斧を振り回して、真理の首を狙った。
「あら、怖いわねぇ」
真理が片手で受け止める。
否。
斧が消えた。
さらに正確に言えば、真理に触れた部分だけが削り取られるようになくなっていた。
消しゴムで消したかのごとく、触れた部分だけが綺麗になくなっていたのだ。
「貴様!何をした!何の能力だ!!」
「さぁ?体験してみます?少しチクッとしますよ~。」
真理がニッコリと笑って、男の胸に手をかざす。
男は呆然としていたが、手が自身に触れるギリギリのところで後ろに飛びのく。
あとコンマ一秒でも遅ければ、心臓が消えることになっていた。
頭は悪そうだが、感は鋭いらしい。
まぁ、全部消す気はなかったが。
「そんなに逃げなくとも。私はあなたに聞きたいことがあるだけですわよ?」
「噓をつけ!!殺す気だったじゃねぇか!!」
「あらあら、私は殺すだなんて野蛮なことはしませんわ。」
真理は『真理ボックス』と同じような透明な箱を大量に作り出す。
そして直方体に伸ばしたその箱を男に向けて飛ばす。
次々と投げられるその箱は、スピードこそないものの確実な殺意が詰め込まれている。
男も危険だと悟り、すぐさま避ける。
が、物量に押され左腕にかすってしまった。
「くっ!!」
ほんの少し、ほんの少しかすっただけだ。
だが、その箱に当たった部分は綺麗に切り取られていた。
威力では測れない。
触れたら消える。
触れたら死。
「さて、まだ戦うのかしら。それとも降伏するのかしら。私としてはまだ戦ってほしいわね。」
「くそっ!見せてやる!神より授かったこの力を!!」
「神…ねぇ。」
男はそう言うと斧を作り出した。
先ほど壊れたものよりも巨大である。
真理の身長の1.5倍ぐらいの刃がついている。
だが、
「あら、大きい斧ね。じゃあ私も。」
と大きな箱を作り出す。
男の斧とは比較にもならない大きさだ。
広場よりひと回り小さいくらい。
この広場は一般的な体育館の四倍の広さはある。
とんでもない大きさである。
その広場の上空にくるくると振られた賽子のように回転している。
「やめろ…そんなのどうやって…」
「あら、逃げるの?」
男が混乱をしている。
自分の強さに揺らぎが見えたからだろう。
この状況から逃げるということは私よりも弱いことを認めるということなのだから。
「一分後に落とすわよ。それまでに私を倒して見せなさい。」
「き、貴様!貴様の能力は何なのだ!!」
「”空間”。場所と場所を繋げる。ただそれだけの想造力よ。」
わざわざ教えてやることもない。
だが、何となくカッコつけたくなってしまったのでカッコよく自己紹介をする。
ついでにカッコいいポーズもしておこうか。
左手を首の後ろに回し、顔を左側に傾ける。
右手は腰に。
その状態から相手を見下す。
うん、カッコいい。
「ふざけやがって!!その程度の能力で、どうやって物を消しているんだ!!!」
うーん、流石にそこまで教えてやる気にはなれない。
それに、その程度って。
あなただって斧を作り出すだけじゃない。
「そのぐらい自分で考えなさいよ。それと、あと十秒…」
「くそっ!!死ね!!!」
男が大きな斧を真理に向かって振り下ろす。
「あら、さっきより速いわね。”空間の壁”」
”空間”の応用。
壁を作れば、そこを通ろうとするモノは消える。
消える…うん、まぁ消えるでいいか。
男の斧も綺麗に消えた。
「うおおぉぉぉぉぉおお!!」
今度は男が斧を大量に作り出してきた。
私の”空間”投げを真似しているのか。
相手の技をすぐに自分の技に昇華できるのは評価できる。
「多いわねぇ。”空間の槍”」
先ほどの”空間”の箱のゴリ押しではない。
”空間”の箱を鋭く研ぎ澄まし、高速で飛ばす。
全ての斧を破壊する。
私に物理攻撃はほぼ通用しない。
斧しか攻撃手段を持ちえないこの男に勝ち目はない。
「う、噓だ…」
「さて、時間ね。”空間の宇宙”!」
真理は右手の人差し指を天にかざす。
その瞬間、上空の”空間”は回転を止める。
そして、指を勢い良く地面に向けて振り下ろした。
「えいっ!」
「えいっ」などと年甲斐もなく可愛い声を出して攻撃をする。
”空間の宇宙”は地面につくと弾けるように消えた。
そして後には何も残らなかった。




