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心からネコを信じなさい〜眠る前の優しい物語〜  作者: 地野千塩


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神の国と正義を求めよ

 凪子は、キリスト教系列の高校で教師をやっていた。


 元々熱心なクリスチャンだった。将来の夢は牧師と決めていたが、色々と壁にぶつかり挫折した。今はこうして高校で数学を教えて十年。担任のクラスも持ち、もうベテランといってもいい時期にきたが。


「先生、鈴木がいじめやろうしてます」


 生徒の一人から密告があった。


「まさか」


 その鈴木は、優等生だ。成績もよく、教師の目からみて何の問題もない。むしろ密告している生徒こそ、髪の毛を染めたり、反抗的な面があるのだが、LINEのスクショを見せられた。鈴木は陰で一人に生徒を無視するいじめする計画を立てているらしい。


「先生、何とかしてくださいよ」


 そう言われても、どうしよう。


 長年、教壇に立つうちに、こういう問題は見て見ぬフリをするのが、一番楽だと知っていた。暴力行為のないいじめだし、放っておきたいのが本音。そもそも人手不足で多忙な仕事。スルーしたいといったら、教師失格か。


 そんな自己嫌悪に陥りながら、家に帰る。食前のお祈りも身が入らず、夕ご飯をほとんど残し、SNSを見てしまった。


 どこにキリスト看板の画像が目に飛び込んできた。聖書関連のアカウントを見ていたら、キリスト看板を紹介するアカウントがオススメされたようだ。


 キリスト看板は、聖書のメッセージが書かれた看板で、日本の田舎によくある。黒と白のデザイン、目入れ口調のメッセージで、クリスチャンの中では賛否両論。ネットではネタにされ、ネコバージョンのものが生まれたりしているらしい。


 凪子は、脅しのような印象を与えるキリスト看板は、あまり好きではなかったが、何となく見てしまう。確かに迫力とインパクトは一番ある。


 その中の一枚の画像が目に止まる。どこか古い物置小屋に貼ってあるキリスト看板。蒼い空とボロい物置小屋が何とも長閑な田舎な風景だった。


「神の国と正義を求めよ、か……」


 画像の中のキリスト看板は、そう書いてあった。今の凪子へ向けたメッセージみたい。「このままいじめをスルーする事は、神様の前で正義ですか?」と問われているみたい。


 思えば、神様のことより、自分の正しさばかり追求してた気がする。「神は愛です」なんて事もSNSで投稿しているが、仕事のいじめ問題すら対処出来ない自分は、本当の義なのか分からなくなってきた。


 神様だって間違った事には怒っていた。信仰心がぬるい弟子や神殿で商売するものに厳しかった。甘くて優しい愛を語る事だけが、義じゃないはず。


 そう思うと、やることが決まった。


 まず、SNSのアカウントを削除した。そして次の日、鈴木を呼び出し、注意した。


 最初は鈴木も嘘をついていたが、根気よく話し合い、いじめをしようとしてた事を認めた。原因は嫉妬だった。友達が部活で活躍し、無視していじめようとしていたらしう。想像以上に鈴木にも罪悪感はあったようで、反省していた。


 こうして問題は解決した。


 もうSNSはやらないが、あのキリスト看板の画像を見たのがきっかけだった。見た目はホラーだ。クリスチャンの間でも賛否があるが、少なくとも凪子の心には変化をもたらしていたようだった。

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