真の神を信じなさい
最近どうも鬱っぽい。季節の変わり目のせいか、仕事のプレッシャーのせいかは謎だ。
そんな勝子は、クリスチャン。アラフォーだが、婚活中に知り合った友達に誘われてクリスマス礼拝に行ったのがきっかけ。教会に行けばクリぼっちになる事はないし、イメージと違ってかなり放任主義。礼拝や聖書勉強なども強制ではなく、全部自由参加だった。
「って事で、最近どうも鬱っぽくて、やる気もしないんだよねー」
日曜日、教会に行くと、同じクリスチャンである野中翔太に愚痴っていた。翔太は中学生。アラフォーOLと何の共通点はないはずだが、同じ神様を信じているもの同士、時々愚痴り、相談し合っていた。
ちなみに教会もイメージと違って超地味。最初は図書館かと勘違いするほどだった。クリスマス時期になると、ツリーやリースで華やかだが、それ以外の時は、お花ぐらいしか飾っていない。
「だったら、この本がいいよ!」
てっきり翔太は、聖書関係の本をオススメするかと思ったが、違った。意外な事に筋トレの本をオススメしてきた。帯には「筋肉を信じなさい」とある。教会でこんな本を持ってきて良いものだろうか。
「筋トレ?」
「鬱の時こそ、運動した方がいいよ。ほら、聖書でいう悪霊って動かない人や目標が無い人もターゲットにするじゃん」
「確かにそんな感じね」
はっきり聖書に書いてある情報ではないが、確かにそんなイメージだ。まあ、悪霊=鬱病でもないし、運動が悪霊祓いにもならない事はよく知っているが。
「ま、気分転換で筋トレやってみるか」
「おお、いいね!筋肉を信じなさい」
「それ、ここで言っていいセリフかなー?」
家に帰り、目標を作って筋トレしていたら、鬱っぽさも軽減されてきた。この鬱っぽさは単純に運動不足が原因だったようだ。本には、朝散歩も良いとあるので、試してみた。
朝、六時ごろに起き、近所を散歩する。秋の少し冷たい風が心地よいものだ。まだ、通勤や通学の人もいない。人も少なくて、空気が軽い気がする。
「あ、キリスト看板じゃん」
民家の塀には、キリスト看板があるのが見えた。確か黒と白のホラー風の看板だ。聖書のメッセージも書かれているが、やはり怖い印象が上回る。
それでも朝日を浴びたキリスト看板は、何だがキラキラして見えた。
「真の神を信じなさい、か。うん、筋肉もいいけど、やっぱり私は神様だな!」
勝子は笑顔を見せ、再び歩き始めた。




