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心からネコを信じなさい〜眠る前の優しい物語〜  作者: 地野千塩


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人の道も行いも神は見ている

 高島未来は、見た目は完璧な優等生だった。成績は学年トップ、部活もサッカー部のマネージャーをこなしながら、生徒会もやっていた。


「マネージャーさ、カバンの中、グチャグチャじゃね?」


 そう指摘された。


 部活に帰りだ。サッカー部のエース、野中翔太と偶然一緒になり、途中まで一緒に帰るところだった。


「私、見た目は優等生っぽく見えるけど、掃除とか片付けとかって苦手なんだよね……」


 未来は正直に告白する。勉強も一度熱中すると、とことん追求してしまう為、成績も良かったのだが、その分、掃除や片付けが苦手だった。


「いや、だって。誰も見てないし」

「マネージャー、本当残念だよ。見た目も成績も悪くないのに」


 翔太は呆れていたが、誰も見ていないところなので、見えないところは、ついついショートカットしてしまっていた。今みたいに翔太に指摘されているわけだが、やっぱり他人に言われると恥ずかしい気持ちもある。問題は苦手な掃除や片付けをどう克服していけばいいのか。


「あれ、見てよ」


 ふと、翔太はある民家の塀を指差した。そこにはキリスト看板がある。よく田舎にある聖書の一文が書かれた看板だ。デザインは黒っぽく雰囲気が怖い。ネットでは「ネコと和解せよ」とかパロディが生まれているようだが。


 そこには、「人の道も行いも神は見ている 聖書」とある。なんとなく「未来よ、掃除や片付けできていないのも全部見てるからな」と神様っぽい何かに言われている気がしてきた。もちろん、未来は無宗教だ。それでも死んだ人の悪口とか言えないし、神様っぽい存在はいないとは言い切れない。無宗教だが、無神論者でもない立場だった。それに英会話教室のイギリス人の先生に日本人は無神論者であると言うと、首を傾げられた記憶がある。世界的には無神論者はマイナーらしい。別にどっちが上とか正しい事はないだろうが、意外と自分は完全な無神論者でもなかったと気づく。


「神様に見られると思うと、掃除とかできない?」

「うーん、でも私、自信ないなぁ」


 そういえば翔太はクリスチャンだった。試合前とかよく祈ってるし、敵の事もよく褒めている。そんな翔太をお見ると、やっぱり少しぐらいは彼の指摘を聞いても良い気がしてきた。


「このステッカーやるよ。これ、部屋に貼ってたら、掃除のやる気が出るんじゃね?」

「えー、何このステッカー」


 それは、キリスト看板をモチーフにした手のひらサイズのステッカーだった。あのキリスト看板と同じく「人の道も行いも神は見ている」とある。こうしてみると、やっぱりちょっと怖いのだが。


「ありがとう。もしかして、翔太が作ったの?」

「うん。他にもあるぜ。ネコバージョンも作っているのだ」


 翔太は一応サッカー部のエースで、イケメンの方だと思うのだが、こんなステッカーを作っていると思うと、「残念イケメン」という言葉が頭に浮かぶ。


「まあ、お守りがわりに部屋に貼ってみるよ」


 このステッカーがち何か力があるわけは無いが、一枚部屋に貼っていると、汚い部屋の様子にイライラとしてきて、結局、綺麗に片付けてしまった。


 これを見て両親は号泣していた。というのも、未来があまりにも掃除や片付けができないので、何かの障害を疑い、病院に連れていく予定もあったという。


「いやいや、単なるズボラなだけで、障害ではないから」


 泣きじゃくる両親を見ながら、やっぱり、部屋を片付けて良かったと思う。


 部屋やカバンの中なんて誰も見てないけどね。


 いや、やっぱり神様が見てる?


 すっかり綺麗になった部屋は、今もあのステッカーが堂々と貼り付けられていた。

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