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心からネコを信じなさい〜眠る前の優しい物語〜  作者: 地野千塩


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ニセモノを警戒せよ

 俺は結婚詐欺師。婚活パーティーに侵入し、言葉巧みに女性を騙し、貢がせていた。


 もちろん、本当に結婚なんてしないぜ?


 結婚はいつかすると詐欺して、何回も口座から引っ張らせる。俺の本職はこんな仕事。医者とか弁護士とか、全部嘘だからね? ちなみに前職はホストだけど、男性にも気を寄せられるようになってしまい、辞める事になった。いやぁ、イケメンは罪だね。


 最近は地味な事務職な女をターゲットにし、二千万円を貢がせる事に成功した。どうやら会社のお金を使い込んでいるらしいが、知った事ではない。


 っていうか、あの女。俺を本気で彼氏だと思い込んでいるし、現実を知ってもフツーに許しそう。カルト信者も教祖が詐欺だと気づいても、そのまま信仰を続けるらしい。いや、健気だねぇ。全部ニセモノなのにさ。


 あの女のような地味な女は田舎の方が多いかもしれない。今日は田舎で開催される婚活パーティーに侵入する予定だ。


 髪も黒くし、きちんとセット。地味女が好きそうなTL漫画を参考に、いかにも誠実そうなエリートサラリーマンの格好をしていた。格好というか、コスプレみたいなもんだけどな。このルックスだけ見たら、詐欺師には見えないだろう。


 やっぱり外見って大事だ。中身がいくらニセモノでも誤魔化せるからねー。


「さて、今日も地味女ターゲットにするか」


 鼻歌交じりに呟きながら、田舎道を歩く。婚活パーティーの会場は駅から離れた辺鄙な場所にあり、少し歩く必要があった。


 海辺の小さな田舎町。古いボロボロの家が立ち並ぶ。中にはカルトと関係の深い政治家のポスターを貼っている家も多く、ここはカモが多いかもしれない。俺は政治家のポスターにウィンクしたくなった。やっぱり一度騙されているヤツから騙すのが最善だよな♪


 そんなご機嫌な俺だったが、ある家の前で足が止まった。


「ニセモノを警戒せよ。 イエス・キリスト」


 そんな文言の看板が貼ってある。黒地に黄色と白で書かれ、妙に迫力がある。というかホラーっぽい。


「ニ、ニセモノ?」


 どうせカルトの看板だろうと思ったが、冷や汗がダラダラと流れていた。俺もハリボテのニセモノだからな。やっば、誰かに見透かされている? イエス・キリストって西洋の神じゃなかったっけ?


 急いで逃げようと思ったが、やけに黒い看板が目につく。「神と和解せよ」とか「キリストはすぐにくる」とか怖いんですけど? これ、布教でやってたら完全に逆効果じゃね?俺だったら愛や許しとかお花畑なイメージで外面良くするが、ホラー系で推してるのが意味がわからない。


 心の中で毒づきながら、逃げようと思ったところだった。


「警察だ!」


 目の前に二人組も警察官がいた。


 地味女達は被害届を出していたらしい。俺が言うほどバカではなく、やる事はやっていたらしい。


 こうしてニセモノの俺はお縄となった。パトカーに乗り込む寸前、あの黒い看板と目に合う。「死後さばきにあう」とか怖い事書いてあった件。


 でもまあ、死後にさばかれる前に現世で捕まって良かったのか? そう思う事にして、警察には全てを自白してしまった。


 こんな俺だが、刑務所にいる時、牧師から伝道を受け、洗礼を受けた事は別の話。出所後は、すっかり改心し、元結婚詐師のクリスチャンとしてYouTuberになったりしてるんだから、人生何があるかわからないもんだな。ちなみにあのキリスト看板、「ニセモノを警戒せよ」については、偶像の神々や偽預言者の事をさす。結婚詐欺師について言っているわけではなかったが、当時の俺には充分意味があったようだ。

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