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心からネコを信じなさい〜眠る前の優しい物語〜  作者: 地野千塩


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あなたの造り主をおぼえよ

 2020年、初夏。


 疫病が騒がれ、家に籠る事が多かった。といっても家でやる事もない。大学も行けなくなり、ファミレスのバイトもシフトが大幅に減らされ、美紅は、とても退屈だった。


 ついついネットを見てしまう。SNSの中では、疫病騒ぎの中でもキラキラしている同世代が多く、どっと落ち込む。


「それに引き換え、私は……」


 SNS上のキラキラしている同世代を見るだけで、鬱になりそうだった。自粛中でも体型は痩せていたり、美人だったり、お金を持っていたり。中にはパパ活で稼いだというSNSも見かけ、コロナは怖くないんだろうかと思う一方、羨ましい気持ちも芽生えていた。


 このまま自粛を続けたら、鬱になる危険を感じた美紅は、近所に散歩しに行く事にした。


 自粛している人が多いのか、ショッピングモールなども閑散としていた。みんなマスクをしているが、正直ちょっと怖い。


 自粛が嫌だと思いつつ、マスクは嬉しい一面もあった。コンプレックがある顔を隠せるし、笑顔を作るエネルギーも要らない。子供の頃、同級生に笑顔がキモい、ブスと言われたのも心に残っている事を思い出したりする。


 元々自己肯定感も低かった。学歴、家柄、容姿。人が羨むものは何一つ持っていない現実が、辛い。それがあれば、自己肯定感もあがるのだろうか。


 そんな事を思いつつ、駅前から公園に入る。ここも自粛のせいか、誰もいない。子供向けの遊具がある小さな公園だったが、それらもコロナ対策で封鎖されていた。それだけでもディストピアな雰囲気があり、ちょっと怖い。


「にゃー」


 ただ、広場には野良猫が何匹か集まっていた。ぶち猫、三毛猫、ハチワレ、黒猫。


 猫達は日向ぼっこしていた。人間の疫病騒ぎなど全くスルーし、実に平和な光景だった。


 それにしても、猫といっても、一匹ずつ、タイプが違う。ぶち猫が目が細めで笑っているような福々しい顔。黒猫はシュッと美人。ハチワレは鳴き声は可愛いな。三毛猫はモフモフな毛並みが触ってみたくなる。全部個性的だ。


 こんな猫達を見ていたら、誰かが意図的にデザインしているんじゃないかと思い始めた。誰がデザインしているのかは不明だが、こんな個性が生まれるのは不思議で仕方ない。


 学校では進化論を習ったが、偶然、こんな個性が生まれたりするのだろうか。


 猫だけでない。


 野鳥もかなり個性的だ。美来は北海道のシマエナガが特に好きで、写真集なども持っていたが、偶然、あんな可愛い鳥が生まれたりするのだろうか。


 どうも誰かが意図的にデザインしていると思った方が納得する。その誰かはよく分からないが。


 美紅はしゃがみ、野良猫達をじっくりと観察する。人懐っこい子達で、三毛猫はモフモフな毛並みを触らせてくれた。


 もし、誰かが意図的にデザインして生物を生まれさせているとしたら、人間はどうなんだろう。人間も動物に劣らず、いろんな人がいる。


「そうか……」


 誰が生き物をデザインして生まれされているのかは不明だが、だとしたら、自分も誰かの個性や意図が反映されている存在? 


 もしかしたら、自分も他人と比べなくてのいいのかも? この猫達も上下などが無い。


 猫達を見ていると、他人と比べても無意味だと伝えているようだった。


 その誰かが分からないので、モヤモヤしてくるが、今日は日差しが温かく、暑くなってきた。


「今日はもう、いいか」


 美紅はマスクを外し、ポケットの中に入れる。


 まだ答えが出たわけでは無いが、こうして猫達と一緒にいると、鬱っぽさは消え、いつの間にか笑顔を見せていた。

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