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淫魔さんの人間暮らし  作者: 仲田悠
第十二話「淫魔さん、立ち上がる」
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01-救出に-

「申し訳有りません、アイラ殿!」

 オリハルコンゴーレムから助けた町のギルドで、顔馴染みの兵がボクに膝を折って謝った。

「気にするな。立って状況を話してくれ」

 合流するまでにここの冒険者達とは打ち解けてる。と言うかオリハルコンゴーレムを倒したところを見てるんで歓迎までされた。

 かなり返り討ちに遭ってて強い奴が軒並み死んでたり、まだ復興支援で残ってた兵からの擁護も大きかったね。

 それはともかく事情だ。

「恐らく部隊の者から聞いているとは思うのですが、復興支援中に王都から使者が来ました。先にミスリルを城へ運んだ事で、何故オリハルコンが無いのかと問われてしまったのです」

 それはバランも想定済み。

 強い冒険者が倒して持ち去った。本来ならその一言で片が付くはずだったんだけど。

 その冒険者を呼び戻して取り返せなどと王様や軍上層部がほざきだしたのが悪かった。

 バランとボクとが知り合いである事は勿論黙っててくれたんだけど、オリハルコンゴーレムを倒せる程の冒険者ならさぞ高名に違いないなどと気付いてしまったんだ。その冒険者も欲しがった訳だね。変に頭が回る無能が一番厄介だって良い例だよ。

 そして使者が送られ、復興の様子を見る。

「俺達も冗談じゃねえと抗議したんだがよ」

「バラン様に止められちまってな」

「皆のせいじゃない。間違った事もしてない。今のここに金は必要だった」

 順調に復興が進んでいる事にも気付き、金の事も話す羽目になったんだ。

 それに腹を立てた使者がバランとマークを城に連行すると言い出し、二人も大人しく従ったってのが連行された経緯。

「大顰蹙だったろ」

「ああ。それも町中でな」

「それだってバラン様が止めさせた。自分達は大丈夫だから、復興に専念しろって」

 バランらしい。

 マークも良く従ったよ。立派だと思うし、良い関係だとも思う。

「バラン殿も連隊長も、最後までアイラ殿の事を話しませんでした。知らぬ存ぜぬを通し、それに業を煮やした陛下が謂われの無い罪を着せて連隊長から地位を剥奪した上で二人を投獄したのです」

「「なにいいいいいっ!?」」

 そんなとこだろうと思った。

 投獄するには口実が必要だしな。

 バランの場合は除隊した身で部隊を勝手に動かした罪ってとこだろ。

「なんでお二人が牢屋に入れられなきゃなんねえんだよ!」

「アイラさん!まさか知ってたのか!?」

「予想は付いてた。落ち着け。だから面倒事に巻き込まれたと話したんだ。これを解決出来るのはボクだけなんだから。皆には引き続き復興に専念して貰う。町のヒトにも黙ってて。復興が最優先だ」

「「……」」

 二人が連行されたのは知ってるんで集まってくれたけど、面倒事に巻き込まれたとしかボクは話してない。

 復興の妨げになる様な事は話すべきじゃないからだ。

 潜入してるインビジブルエアからは死刑宣告まで行ってないと聞いてるし、これならちゃんと間に合うし助けられる。

「アイラさん!こんな事を頼むのは筋違いだって解ってるんだが、頼む!お二人を助けてくれ!」

「この国で頼れる兵隊はバラン様の部下だけだったんだ!マーク様が頑張ってくれてるからまだ俺達も頑張れてる!」

「げ。そこまで酷えのか。まあ、安心しろ。ちゃんと助ける算段をしてある」

「「うおおおおおおおおっ!!」」

 そりゃバランも愛想尽かすって。

 幾ら何でもやってられねえっての。

 留まって何とかするにしても限度が有る。

「バランの世話になった兵士は全軍の何割?」

「八割は固いかと」

「「うおおおおおおおおっ!!」」

 うわあ…。それなら後を託せる。

 と言うか部下からも送り出されてるな。

「いや、それほんと有り得ねえ。不甲斐ない上に大馬鹿だろ。バランに最高司令官を任せちまえば良かったのに」

「「うんうんうん」」

「小官達も、そうなってくれればと心から願っていました。しかし、バラン殿は平民の出です」

 特権階級も邪魔だなー。

 無能を要職につけるとかほんと無駄。

「とにかく解った。フィーナ、彼と彼の馬を回復させて。すぐに出る」

「はい!」

「ありがとうございます!」

「「うおおおおおおおおっ!!」」

 ボクが来た事は既に町のヒトが知ってるし、連れ戻すとだけ話して出発だ。

 ここからはユニコーンで行こう。来てくれた兵士に合わせて行かないと彼に迷惑が掛かる。


 王都には町を一つ超えただけで到着。

 まあ、オリハルコンゴーレムの討伐に貧弱ながらも連隊を間に合わせられたんだから近場だろうとは思ってたけどね。

 道中こそヒトの姿に変装したりユニコーンの角を隠したりしたものの、王都では元の姿に戻る。

「「なっ!?」」

「通せ!こちらはバラン殿の恩人のアイラ殿だ!オリハルコンゴーレムを討伐して下さった方でもある!バラン殿を助けたければ黙って通せ!」

「「はっ!!」」

 八割ってのも伊達じゃない。

 門番兵がそれだけで通してくれた。

 ここから城まではゆっくり進む。

 今回は怯えさせながら進んだ方が良い。

「聞け!この方は」

「このままで良い。納得させるのは事が終わってからだ」

「しかし!」

「ボクを信じろ。これも策の内だ」

「…は。本当に、申し訳有りません」

 擁護してくれるのはありがたいけど、これも作戦の内だからね。

「あれ魔族だよな…?」

「ユニコーンだぞユニコーン。初めて見た…」

「何で兵士が魔族を連れてるんだよ!」

「帰れよ魔族!ここは俺達の国だぞ!」

 うん、良い感じ。

 石も飛んで来たから兵士とフィーナに障壁を張って守ろう。

「アイラ殿…っ!」

「アイラさん…」

「策の内だよ」

 これで良いんだ。

 これが普通なんだ。

 あ、兵隊が来た。

「下がれ雑兵!勇敢にも私に歯向かおうとする姿勢に敬意を表し、抵抗しないでやるから通せ!」

「頼む、下がってくれ…っ!我等では絶対に勝てない相手だ…っ!頼む…っ!」

「私は勇敢な者を好む!故に諸君等を見逃そう!ここの王に用がある為に来たが、諸君等と諸君等が守る民草には用が無い!防衛に態勢を整えるのも良し、民草を避難させるのも良し!私に歯向かって命を無駄にするな!民草を守るが良い!」

 一先ずはこれで良いだろ。

 必要無いけど住民を避難するだの守るだのしてやってくれ。

「何故世の中はこうも理不尽なのだ…っ!これではあまりにも…っ!」

「良いんだ。今はあの二人の事だけ考えろ。泣くんじゃない」

「はい…っ!」

 ここで泣いても、まあ大丈夫だろ。

 ボクをここに連れてくるしかないから悔し泣きをしてると受け取れるしね。

 ボクの為に泣いてくれてるだけで十分さ。

「せめて、せめて城の中は…っ!」

「うん。流石に城の中は普通に進みたい。抵抗されたらちょっと怪我させるかもしれないけど」

「それで済ませて頂けるだけで御の字です…っ!」

 じゃあ、この調子で王城まで行こうか。


「開門!オリハルコンゴーレムを倒した方をお連れした!バラン殿を慕うなら門を開けられよ!」

「「おおおっ!!」」

 中々立派な城にも無事に入れた。

 ちょっと門番に頼もう。

「乱暴に入りたくないから、王様に急いで伝えてくれる?オリハルコンゴーレムを倒した奴が謁見を希望してるって。魔族だって事は話さなくて良いから」

「はっ!ただちに!」

 後はユニコーンから下りて歩こう。

 もうのんびりで良い。と言うか、のんびり行った方が迎える準備も出来るだろう。

「なっ!?」

「魔族!?」

「バラン殿のご友人でオリハルコンゴーレムを倒したお方だ!失礼無き様に願う!」

「「おおおっ!!」」

 入ってすぐはすんなりだな。

 話を聞いたヒトが奥に戻ったから、バランの息が掛かってる奴からは襲われないだろう。

 あー、流石に上へ向かう度に変わってくるな。

 留まってくれる者も居るけど、謁見の間が近付くに連れて襲う奴が増えてきた。

「邪魔だ雑兵。私の邪魔をするな」

「「ぐあっ」」

 でも魔力で硬直。魔法は使わず、魔力で直接硬直効果を生む。魔族便利。

「くっ!ここは通さぬ!」

「邪魔だ雑兵」

「「ぐあっ!」」

 片っ端から硬直させて謁見の間に到着だ。門番もおねんね。

 さて、開門と行こう。

――ギギギ…。

「「おのれ!」」

「身の程を知れ、愚か者ども」

「「ぐあっ!」」

 入った途端に襲われたけど、やっぱり硬直。

 耐魔性質を持った装備くらい用意しやがれ。

「陛下!お逃げ下され!」

「逃げるな小者!折角オリハルコンの事で出向いてやったと言うのに、憶して逃げるとは何たる醜態!一国の主として恥ずかしいと思わんのか!」

「ぐっ!…良かろう」

 逃げるなよー。

 話し合いに来てやったんだからさー。

 ここで逃げたら後が無いぜー?

「私はアイラ。見ての通りの魔族だ。今は故有って遠くの国でヒトと暮らしている。バランとは友人でな。私の事を話せば町の者や私自身に迷惑が掛かると考え黙っていた。バランとマークを連れて来い。話し合いをしてやる」

 だから連れて来い。

 手荒な真似をしてたら承知しねえからな。


「安心した。無事な様だね」

「ああ。本当にすまん。上手く誤魔化せなかった」

 バランもマークも無事だった。

 無理矢理吐かせる必要が無い状況だと解ったから大丈夫だとは思ってたけど。

 ちゃんと確かめられて安心したよ。

「バラン!どう言う事だ!」

「やかましいぞ小者!」

――ドゥンッ!

「「ひっ!?」」

 王様が怒鳴ったんで、黙らせる為に玉座の後ろの壁を破壊してやる。

 そのままマイルフィックを召喚だ。

【ほう。もう出番か】

「いや、ちと想定外で別の国の城だ。ボクとフィーナを肩に乗せてくれ」

【お安い御用だ、我が敬愛する偉大なる主よ】

 お、マイルフィックもノリが良くなったな。

 ちょこちょこ呼んでご馳走したり冒険者達と触れ合ったりで楽しんでくれてたんだよね。

「さて、小者よ。見ての通り、私はこのグレーターエビルを従えられる程の力を持っている。ここに来るまでにどれほど加減をし、配慮してきたか解っただろう?勿論民草には手を出していない」

「本当です、陛下!民に石を投げられても許し、兵には民を守る様にと促してくれています!」

「わ、解った。確かにそれで十分だ」

 解らない様なら殺して良いなー。

 害悪にしかならない。あ、でも国が荒れるからまずいか。周辺国も刺激するし。

「まず、バランとマークの枷を壊す。貴様がどれだけ小者かを更に見せてやる」

――バキンッ。

 解ったところで説教タイムと行こう。

 枷を外したらバランに持ってきたオリハルコンの剣を投げよう。

「ちゃんと仕上げてないからね。何が何でも帰ってきて貰うよ」

「あ、ああ!おおおおっ!本当にオリハルコンの剣だ!」

「「おおおおっ!!」」

 まずはボクがオリハルコンを鍛えられると見せる。見せなくても良いんだけど。

「悪いが早速酷使するぞ。近衛兵に叩き切らせてやってくれ。オリハルコンがどれだけ凄い金属なのかを見せつける必要がある」

「了解した!さあ、近衛兵長!これをへし折って見ろ!」

「わ、解った!」

 近衛兵長なら確実だね。

 オリハルコンの剣の腹目掛けてガシガシ斬りつける。ミスリルの剣だったけど当然無傷。

「で。この国の誰がオリハルコンゴーレムを倒せると言うのだ?」

「「……」」

 ぐうの音も出まい。

 オリハルコン武器を抱えてないってのは前にバランから聞いてる。

「倒してくれてありがとう、ならともかく。良くもまあ迎撃しようなどと考えたものだ。私は寛容な魔族だから許してやるがな」

「「……」」

 ばつの悪い顔になってろ。

 無能さぶりを徹底的に指摘してやるぞ。

「私を案内してくれた兵から全て聞いた。オリハルコンゴーレムの残骸についてだが、貴様はギルドを敵に回したいのか?バランはギルドから正式に依頼を請け、バランの仲間として私が倒し、ギルドの規定に基づいてバランが受け取った上で私に譲ってくれたのだぞ。それを無碍にすると言う事はギルドを敵に回し、ギルドがこの国から手を引くと言う事なのだが。私が貴様を小者と呼ぶのも解るであろう」

「ぬ、う…っ!」

 無能だよねー、ほんと。

 ギルドは世界中で手を広げてるけど、国営じゃなくて私営の施設。

 国からの命令で冒険者を徴兵させる訳にはいかないからだ。

 国であってもギルドの規定に従う必要が有る。

「私の友人を投獄する様な者と取引するつもりは無い。ましてや無能揃いの軍人が率いる軍の為に流してやるなど冗談では無いぞ」

「「なっ!?」」

 まだまだ説教したい事は有る。

 言いたい事を全部言うつもりで来てる。

「マーク、本当に良く頑張った。ゴーレム相手に重装兵無しの部隊編成なんて有り得ない。被害は確かに大きかったけど、あの脆弱な部隊編成で良く踏み止まった。正直、オリハルコンゴーレム相手に町も連隊も全滅しなかったのは凄いと思う。勲章ものの武勲だっつーのに、投獄されるなんて災難も良いところだよ。マーク達だってべスタリア救国の英雄だ」

「「う…っ!」」

「ははは…。ありがとうございます。でも、私より町の者達です。復興の様子はご覧になりましたか?」

「勿論だ。皆バランにもマークにも凄い感謝してたよ。詳しく話さないで出て来たけど、二人が投獄されたなんて聞いたら暴動になるだろうね。無能な軍人どもはあの規模の町をまともに助けようとしないどころか、謀反の芽まで植え付けた。おい小者。これで無能以外になんと呼べば良い?」

「ぐぬ、ぅ…っ!」

 ほんと無能揃い。無能ばっか。

「ゴーレムマスターにオリハルコンが流れてると言う点に憂慮すべきだろう。しっかり衛兵を働かさせんか。どうせ薄汚い商人が暗躍しているのだ。愚か者どもを逮捕して没収した方が効率的で有用だろうに。馬鹿ではないのか?」

「「あ…っ!」」

「あ…っ!確かにそうだ…っ!」

「いかん。私も抜けていた。国が綺麗になる上に名声まで稼げるじゃないか」

「アイラ殿は本当に凄い方ですね。確かにその通りですよ」

 お前等もか。頭使え。特にバラン。

 奴隷解放で稼げてるんだから思い付いても良かっただろうが。

「小者。自分がどれだけ無能な采配をしたか、理解したな?」

「ああ…。無礼な振る舞いを続け、申し訳無かった…。確かに貴殿の言う通りだ…」

【やれやれ。結局私はお飾りのままか】

「いやいや、ちゃんと見せ場も用意する。そこの無能な高級軍人にオリハルコンゴーレムの脅威と、どれだけの大罪を犯したか自覚させるつもりでもあるんでね」

「「うお!?」」

【おお!やらせてくれ!つまり私と主のオリハルコンゴーレムで勝負してみせろと言う事だな!?喜んでやるぞ!】

「「うおおおおおおおおっ!?」」

 だからコアの準備もしたんだよ。

 ちょっと訓練場借りようかー。

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