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淫魔さんの人間暮らし  作者: 仲田悠
第十一話「淫魔さん、武器を作る」
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05-急報-

 聖剣と護剣のウケはかなり良かった。

 物語に出てくる様な剣を本当に作っちゃったんだからね。特に男ウケが良い。当然と言えば当然なんだろうけど。

「マスカーニの聖剣か。アイラさん、どこまでも粋だねえ」

「超イカす。これでアルフレッド公爵様が武勲をお立てになられたら絵本描けそうだ」

「良いねえ。でも絵本になるなら剣を授けたアイラさんは女神で描かねえとな。淫魔の剣とかイメージがた落ちだし」

「「はははははははっ!」」

 あー、うん、確かにそうだ。

 格好付けて天魔とか名乗ったのは正解だったのかもしれない。

「なら、もし本当にそうなったら、私から作家にこう話そう。黒と白の鳥の翼を持った女神から授かったのだとね」

「「おおおおおおっ!!」」

「恥ずかしすぎるから勘弁!確かにそれなら後世まで残っても別人って言い張れるけどさ!」

「「はははははははっ!」」

 魔法薬を教え始めたんで、公爵一家も工房に出入りする様に。

 作れる様にはなってるから青ポーションを目標に魔法肥料で魔力を育ててるところだ。

 そろそろ家が完成する子爵も加わって楽しんでくれてるよ。

 アルフなんかは冒険者達と馴染んだくらい。

「それにしても、皆に神器をとは」

「二国跨いだ先の国でオリハルコンゴーレムが出ちゃってね。そこに仲間が居合わせてたんで呼ばれて倒しに行ったんだけど、せめてボクの仲間くらいはオリハルコンゴーレムを倒せる武器を持たせておこうかって。あれカモだし」

「ぷっ!?軍隊が必要と言われる脅威もアイラ殿にとっては形無しですね」

「「いやいやいやいや」」

 皆も武器さえ揃えればカモだと解ってる。

 事情を説明しよう。

 本物のオリハルコンゴーレムならメイドゴーレムみたいに普通の外見なんだよと。そうでないならデカいオリハルコン塊なんだよと。

「ぷっ、くくく…っ!成る程…っ!」

「被害者にゃ悪いと思うけどまた出てくんないかねえ?」

「なー。あれなら武器さえ有れば俺でも余裕だったぜ」

「俺も歩く国家予算を倒してみてえー」

「はははははははっ!歩く国家予算…っ!」

 もうあれは歩く国家予算で完全に定着。

 町の皆ですら言ってる。

「ちなみにミスリルゴーレムは歩く町予算」

「はははははははっ!」

 どっちもカモ。また出てこい。

「アイラさん、本物のオリハルコンゴーレムも作ってみてくんねえ?」

「あ、俺も気になってた。まともな奴なら余ってるので出来るんじゃねえか?」

「どんだけ強えか見てみてえよ」

「あー、無駄無駄。ボクが作ると並の悪魔族をサシで殺せるレベルになる。お前等じゃ目が追いつかないから作る時間が勿体無い」

「「うおおおおおおおっ!」」

 ボクの労力的に無駄だからやらない。

 ミスリルゴーレムでもサシなら中級魔族を狩れるだろうと思うし。

「フィルが見たがるだろうからその時かな。あいつの肩慣らしにはなる、と思う。あ、アルフ。フィルってのがボクの親友。今の魔王」

「魔王の肩慣らしに使えるレベルですか」

 精々肩慣らしだなー。

「反乱軍の軍資金の三分の一はオリハルコンゴーレムだね」

「「はははははははっ!」」


 アルフだけ先に帰った。団長なんで休暇日数を確保するのにかなり無茶をして来てたらしい。

 だから帰りはペガサスを貸して、預けたインビジブルエアに透明にして貰って飛んで貰ったよ。

 公爵夫婦はもう少し滞在。もう少しポーションを練習したいって建前で、出来る限りボクの研究を見てから帰るらしい。

 そんな事はつゆ知らずに公爵一家が帰る予定日に合わせて訪ねて来てくれたのが子爵の息子さんだった。

「いや、すまぬな。アイラ殿の英知があまりにも素晴らしい上に、アイラ殿と過ごすのがとても楽しくてな。帰るのが名残惜しくなってしまったのだ」

「どうかお気になさらず。公爵様がそこまで仰られる方となれば、私も色々と期待してしまうと言うもの」

「いやー。実は落ち着いたらビリヤード場を王都でもと子爵と話していましてね」

「なんと!?おい子爵。私も土地と金を出すから話に混ぜてくれ」

 これはこれで面白くなりそうだから良し。

 冒険者達も引退後の生活に関わるし、公爵とも随分親しくなってるから凄い乗り気。

 公爵もビリヤードを気に入ってくれてて、親方に台を作ってくれと頼んでるんだよね。

「これは面白い!アイラ殿、是非とも!」

「頼むよー。王都でも定着すればボクの生活も安泰だしさー」

 ちなみに子爵の息子は公爵のボクへの接し方を見てアルフと同じ様に接する事になった。

 ビリヤードも気に入ってくれたし、ロッソリーニ邸にも台を用意する事も決定だ。

「これデケえぞ。貴族の遊びになれば確実に定着だ」

「アイラさん万歳。老後の生活が約束された」

「王都のも手伝おうぜ。ほんとデケえ」

 冒険者達も凄い乗り気。

 さっさとボクの事情が落ち着けとまで言うようになったよ。老後も安泰って言葉は強い。

「よし、出来た」

「きゃーっ♪ありがとうアイラ!」

 そんなこんなで神器が揃った。

 エアリ達レンジャー勢も本人だけがしならせる効果を込めたオリハルコンでコンポジットボウを完成させたし、魔法職用もオリハルコンで更に増幅出来る魔石のネックレス、タリスマンと名付けた神器が完成。

 残るはバランの剣ってところまで来たよ。

「バランの旦那、頑張ってんな」

「ああ。早く戻ってきて欲しいぜ」

「会ってみたいものだ。話に聞くだけでも中々の御仁と解るし」

 公爵にもバランの話をしてる。

 騎士に叙勲されてれば騎士団にとも言ってくれたよ。バランなら騎士に叙勲されても不思議じゃない。今持っていかれると困るけど。

 なんて考えたり、皆で話してる矢先だった。

 バランのインビジブルエアが助けを求めてきたんだ。


【何卒!何卒我が主をお助け下さい!】

「落ち着いて。助けるから事情を話して」

 どうやらバランは窮地に立たされてるらしい。

 インビジブルエアは預かりっぱなしだからインビジブルエアも詳細は解らない。

 でも、バランからの報告頻度が日に日に減っていき、さっき契約の指輪も外された感覚を感知したんだそうだ。初めて知ったけど、外されると同族を呼べなくなると解るって話。道理だ。

「ふむ。アイラ殿。少々意見を出させて頂いても宜しいでしょうか」

「お願いします。公爵はどうお考えですか?」

「恐らくアイラ殿も察しておられるでしょうが、投獄されているのでは?」

【そんな!?】

「「うおおおおおおおっ!?」」

 流石。ボクも同意見。

 寝る時は外しても良い契約の指輪だけど、持たせた奴は緊急時の事を考えて着けっぱなし。

 特にバランはそう言う事に誰よりも気を遣う男だから、やむなき事情で外されたと考えるべきだろう。

 状況から考えて投獄されたが最有力。

「ボクのインビジブルエアとエアリーグルを出す。エアリーグルに運んで貰え。ボクのインビジブルと手分けして城内をくまなく探すんだ」

【ありがとうございます!】

 エアリーグルの方が速く飛べる。

 インビジブルエアを十匹呼び、マジックポケットに入って貰って先に出て貰ったよ。

「アイラ!どうせ助けに行くんだろ!?」

「俺達も連れて行ってくれ!」

「バランの旦那を助けてえ!」

「落ち着け。行くのはボクだけだ」

「「おい!?」」

 ここはボクだけで行くべき。

 公爵もボクを心配しながらも納得してる。

「べスタリア城で国王陛下と直接交渉をなさるおつもりですか」

「「うおおっ!?」」

「それしかありません。マルクスと衝突するのだけは回避しないと」

 正直どうでも良かったんで名前を出して来なかったけど、この国がマルクス王国。そしてバランの故国がべスタリア王国。

「フィーナ。ゴーレムのコアの作り方は見て覚えてるね?」

「勿論です。すぐ用意します」

「お願い。エメラルド達と同じ大きさで調合だけして。それを密封」

「はい!」

 時間が無い。

 急いで準備しよう。

「親方!バランの剣を作る!研磨の準備して!」

「おい!?調整はどうすんだよ!?」

「戻ってから調整してエンチャントすりゃ良い!普通に作る!」

「了解した!」

 剣も打とう。必要だ。

「助ける為の算段をもうお立てになられたか」

「「うおおおおおおおっ!」」

「何通りか。駄目でも何とかしますよ。バランは掛け替えのない友人です」

 算段は立てた。何とでもなる。

 最悪、脅してでも助ける。

 セルケナス武器を作った時にボクが調整してるし、それも踏まえた大きさで剣を打とう。

「後でその時のお話をお聞かせ願いたい」

「勿論です。マルクスの王様とどう交渉するのか見当がつくでしょうし」

「お頼み申す。まあ、陛下相手なら脅すだけで良いのでしょうな。国内であれば問題無いのですから」

 うん、その通り。

 外国だから慎重にと思うけど、国内なら全く問題無く脅せる。

 勿論トアイライトに迷惑を掛けない様にするけども。

 オリハルコンを鍛えながら更に綿密な計画を練っていく。

「師匠!調合終わりました!」

「ありがとう!旅仕度をお願い!」

「二人分用意します!」

 おいいっ!?

「一人分!」

「二人分です!譲りません!」

 フィーナも着いてくる気かよ!

 ええい、仕方ない!

「急いで二人分!」

「はい!」

 押し問答してる余裕は無い!

 連れて行く!ボクが守る!

「親方!出来た!頼む!」

「任せろ!」

 剣が出来た!

 後は研磨と準備待ち!

「処刑される事は無いでしょう。少なくともまだ少しは余裕が有る」

「私も同意見です。べスタリアの狙いはオリハルコン。そしてアイラ殿」

「「うお!?」」

 間違いないね。

 まずマークに何でオリハルコンを持ち帰らなかったと詰問するところから始まったはず。

 五億べスタの話も聞いてるかもしれない。

 あの町を復興してる最中に宮廷から使者が来たってところだろう。バランなら絶対復興支援から離れないから。

 インビジブルエアには順調だと話しつつ、バラン一人で抱え込んだんだろう。

「無能どもめ。そんなにオリハルコンが欲しいなら国内の取り締まりを強化しやがれってんだ」

「ふむ?どう言う事でしょう」

「そもそもゴーレムマスターを出す事が間違いなんです。薄汚い商人を野放しにするからゴーレムマスターなんて馬鹿が出る」

「成る程、確かに」

 正規ルートで集めるには金が掛かりすぎる。

 だから自然と悪徳商人を頼るしか無く、そうなると責任は取り締まる側にも生まれる。

「買い集めるくらいなら取り締まりを強化して没収した方が良い。国内が奇麗になって、名声も上乗せ。タダでオリハルコンが手に入る。まあ、公爵の様に個人で持ちたい場合は別ですが」

「仰る通りですなあ。本当にその通りです」

 ちなみに解ってる国はちゃんとそうしてる。ムスペルに近い国はどこもそうだ。手早く対魔族用装備を調えなきゃいけないからね。

 ムスペルから離れるにつれてそれが緩くなるから、反対側なこの辺りでは知られてない。でも思い付けよと思う。無能どもめ。

「そう言う無能どもは魔族と大差有りませんよ。頭を使う事を知らない。ヒトとはもっと素晴らしく尊い存在なのに、勿体無い」

「ふむ。落ち着いたら、その辺りの話もお聞かせ願えませんか」

「簡潔に話せますよ。魔族は強いだけで、逆に研究する事を知らない。しようともしない。生き物を消費するだけの魔族は知性ある獣でしかありません。でもヒトは違う。工夫をして何かを生む事が出来る。」

「それで…」

 無能どもは魔族と同じ。

 生産的な事を全くしない。

 ゴーレムマスターだって、ゴーレムの使い方次第で生産的とは言えない。ただの害悪だ。

「そんなヒトの中でバランは貴重な人材です。元は騎兵だそうでしてね。素晴らしいヒト達を守る為に率先して前に出る事が出来る奴です。バランを失う事は出来ません」

「会ってみたいものです。成る程、元騎兵。騎士の様な御仁と感じていましたが、騎士そのものではありませんか」

 叙勲こそしてないけど騎士だよね。

 何としてでも助けなきゃ。


「征ってくる!」

「「おおおおおおおおっ!!」」

 フィーナと一緒にアルトリアで出発。

 アルトリアに支援魔法を掛けて全速力だ。

【バラン殿は失えませんね!】

「ああ!まずはあの町だ!」

【御意!】

 出発前にインビジブルエアから報告があった。

 エアリーグルが全力で飛んでくれた様で、バランとも接触、更には一緒に投獄されてたマークとも接触出来たらしく、マークの部下でボクと面識がある兵をあの町のギルドに送って貰う様に頼んでおいた。

 やっぱりオリハルコンの事で問い詰められ、ボクの事を話さなかった為に投獄されたらしい。

 こうなるとますますボクがやらないとと思う。

【主上!見えましたよ!】

「ギルドへ!直接下りろ!」

【御意!】

 待ってろよバラン!

 すぐ助けてやるからな!

第十一話了

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