02-二つの朗報-
気を取り直してビリヤード大会。
この為に新しく広い空間を作り、ビリヤード台やダーツの的を揃えてイキシアの冒険者達に開放してる。サトウカエデの子猫ちゃん達にも開放してあげよう。寒い季節に畑仕事しなきゃいけないから少しでも良い思いをさせたい。
【ああ…♪なんて美味しいのでしょう…♪】
「ボクのインビジブルエア達も大好きなんだ。ここに居る間は色々と食べさせてあげるよ」
【真に御座いますか!?】
「うん。ボクの使い魔は皆そうなんだ。インビジブルエアならイキシアの町に行っても良くして貰える。ボクのインビジブルエアも町のヒトにご馳走して貰ってるってさ」
【羨ましい…っ!】
皆が盛り上がってる横でナイアムのインビジブルエアにプリンを作って出してあげた。
名前を付けて貰ってない、と言うか基本的に名前を付けないものなんで、勝手にクハルと名付けてあげた。
名前と餌付けですっかり懐いてくれたよ。
アイルとシャルルは見張りとして町に残してあるけど、イルルは居るから呼んでやろう。
「クハルって名付けた。クハルが呼ばれてない時に呼んであげて。クハルもボクに鞍替えしちゃえよ。手を回しておくからさ」
【なんとお優しい…。イルル隊長、何卒お願い致します。私も閣下の為に働きとう御座います。】
【解ったわ。ご主人様のとこは良いわよー。出番がある度に美味しい物をご馳走してくれるの】
頑張った分のご褒美はあげなきゃ。
魔力消費は仕事の対価じゃなくて交通費だとボクは考えてるからね。
同郷の同族をナイアムに紹介してるから、イルルがクハルに声を掛ける事も出来るのだ。
「クハル。ナイアムに伝えて。寄越すならインビジブルエアじゃなくてエアリーグルにしろって。国の為ならエアリーグルと契約するくらい安いもんだろって」
【直ちに!】
エアリーグルってのはインビジブルエアと同じように透明になれる大鷲の魔物。
運搬能力も飛翔能力も鳥系魔物の中でかなり高い位置に居て、秘密裏に長距離運搬する場合は最上級の魔物と言える。
インビジブルエアもそうなんだけど、身につけた物まで透明になるんだよね。
ただし見つけるのが絶望的に高難易度。常に透明なもんで、瀕死の状態で落ちているのを見つけなければまず見つからない。ボクも結構探したけど見付けられなかった。契約してれば一生遊んで暮らせるくらい重用されるレベル。困った事に今の魔族に契約した奴は居ない。
インビジブルエアも似た様なもんなんだけど、捕まえ方をボクが見つけた事で反乱軍は情報戦を制する事が出来てる。ほんと心強い。
【急ぎ探すとの事。何か良いお知恵はお持ちではないかとも】
「有るわけないじゃん。有ったら真っ先にボクが契約してるって」
【ですよね】
殆ど伝説扱いの稀少種だぞ。
情報が全く無いっての。見た事が無いから予測すら立てられないし。
「ふむ。そのエアリーグルと言う魔物はどんな魔物なんだい?」
あ、町長さん達。
イルルを呼んだんで気になったかな。
「長距離運搬が可能なインビジブルエアって考えてください。それと大鷲の魔物ってくらいしか情報が無いんです」
「それは凄いな…」
「だが、情報が無いのも無理はないだろう。アイルもアイルから姿を見せてくれたり肩に乗ってくれていないと全く解らんし」
「ふうむ。透明な大鷲の魔物か」
その大鷲ってのも本当か怪しい。
他の奴を出し抜く為に偽ってる可能性も有る。
「ふむ。アイラさんはエアリーグルと契約したいと思うだろうか」
「そりゃしたいですよ。役立つどころじゃ有りませんし、契約には捕獲が必要なので捕獲法も武器になりますから」
「そうか。鷲は高いところに巣を作ると聞いた事が有る。遠目がかなり利き、巣に居ながら獲物を探せるからだと」
おおおおっ!?
セシル町長さんから耳寄り情報!
「魔物とは魔力を持つ動物と聞いた。シャルルからインビジブルエアの話を聞かせて貰った事があるのだが、どんな魔物と例えられる動物の性質を残したまま、能力が飛躍的に上がった存在の様に聞こえたんだ」
「その認識で正しいです。現にエアリーグルと同様に伝説級と呼ばれ続けてきたインビジブルエアもそこから捕獲法を見付けられたので」
「やはり。であれば、かなりの高所、地表には開けた場所やまばらな林。鷲は肉食だから動物や魔物が良くいる場所。これ等の条件で場所を絞ってみるのはどうだろう」
おおおおっ!
「…本当にヒト言う存在は尊い。何かを知り、そこから学び、考え、大きな成果を生み出す事が出来る。セシル町長さん、ありがとうございます。一先ず隣国の山をあたってみますよ。鳥なら冬は動きが鈍るでしょうし、今が絶好の機会だ」
「アイラさんの役に立てるのは嬉しいよ。町の事は考えなくて良い。アイラさんの経験として探して見てくれ」
「はい」
本当に、ヒトって凄い。
何より温かい。
最強の武器を手に入れる為に頑張ろう。
楽しい大宴会も終わり、冒険者達や子猫ちゃん達は満足そうに帰っていった。
町長さん達のお持て成しでホームバーを開いてからクハルとフィーナを連れてボク達の部屋へ。
「さて。聞かせて貰おうか」
【御意。閣下が我が国を発たれた数日後、陛下の事を考え、閣下の居場所だけでもと我が主が私達を散策に出しました】
まあ、それくらいはしてくるだろうなと予想してた。だからインビジブルエアじゃ追い付けない速度を出して飛んだし、ここは故郷から大分離れてる。と言うか世界の反対側。
【それから暫くして同胞が異変を察知しまして】
「異変?」
【はい。恐らく気紛れだったのでしょう。付近の山の麓で幼体のレッドドラゴンが暴れていたそうなんです】
…え。
ちょっと、待った。
【幸い、その幼体はその国の軍によって討伐されましたが、燃やされた森にハイエルフの里が有った様で】
「え!?」
やっぱり!
幼体のドラゴンはドレイクと見間違え安い!
翼と知性が無いドラゴンがドレイクだから!
【生き残りが居ないか探せと我が主から命が下り、瀕死状態の女性を一人見つける事が出来たのです】
おおおおおおおおっ!
「あ、あの!その女性は助かったんですか!?なんと言う名前ですか!?」
【む?その話を聞いた陛下がエリクシールを持って急行した為、その女性は一命を取り留める事が出来ました。その女性の名はファンナ様と言い…フィーナ様!?】
「姉さ、良か…っ!ぁぁああああっ!!」
生き残りが他にも居た…っ!
【か、閣下、もしやフィーナ様は…】
「うん。その里から唯一無傷で逃げ出せたハイエルフだ。そっか、良かった…」
【なんと…】
話は一先ずここで止めて、暫くフィーナを抱き締めてあげよう。頭も優しく撫でる。
遠く離れた場所だけど、それでも生きているならそれに越した事は無い。
フィーナの為になら里帰りしても良い。
フィーナが泣き疲れて寝ちゃったんで、ちゃんとベッドに寝かせて居間に行く。
ホットミルクに砂糖とメープルシロップを混ぜてクハルに出してあげよう。
【御身自ら、申し訳御座いません】
「ううん。昔からこうだしね。何よりクハルは最高の朗報を持って来てくれた。…ここだけの話、フィーナは奴隷商人に捕まってね。ここに売られに来たのを運良く通り掛かって買い取ったんだ」
【左様に御座いましたか…】
さて、続きを聞こうか。
もうこの先は見えてるんだけどね。
「ファンナがあいつに一目惚れしたかな?」
【何故お解りに?】
「ハイエルフは心の純度を見極められて、心の純度で相手を決めるんだってさ。フィーナもボクに一目惚れしてくれてた」
【成る程。完治したファンナ様は陛下に尽くして下さる様になりました。最初は恩義を返す為にと陛下や我が主も考えて居たのですが、先月ファンナ様から想いを告げられたそうで。最初は陛下も一途に想ってきた閣下の事を考えて悩まれておられたそうですが、次第に陛下からもファンナ様を想う様になり、先週ようやく婚約を前提とした交際が始まったのです】
そかそか、あいつにも春がようやく来たか。
親方の言い分も解るけど、ボクからすれば思春期の男子かよとつっこみたかったとこだし。
本当の恋を理解出来ただろう。
…あー、むしろこれが原因か。
「あれか。ファンナに美味い物を食わせたいのに何でこの国には腕の良い料理人が居ないんだとキレる寸前だった訳か」
【お察しの通りに御座います。…我が主から報せが届きました。ファンナ様がフィーナ様の無事に大層お喜びになられ、フィーナ様がお作りになられたデザートにもお喜び頂けたとの事】
やっぱりな。
フィーナが泣いてる間にフィーナの事を報せる様に頼んだし。フィーナが作ったデザートを渡して正解だった。
ボクが離れた事が原因みたいな話をナイアムがしたけど、知恵袋としてより料理人としてのボクが必要だった訳だ。
【陛下からも言伝を。"近々行く"。以上です】
「了解。じゃあこう返して。"鷲探しに行くぞ"」
【畏まりました】
そう言う事なら久しぶりに旅でもしようじゃないか。
「インビジブルエアを胸ポケットに入れて丸ごと透明にして貰えばここまで楽に来れるだろ」
【おおおお。流石は聡明なる閣下。すぐお伝え致します】
「うん。あ、本人も解ってるだろうけど、ナイアムは絶対に着いてくんなと伝えて。ボクと親友の夫婦旅行にあんな変態を連れて行くとか冗談じゃない。魔王と宰相が揃って消えたら国が転覆するぞと脅してよ」
【ふふふ。畏まりました。…陛下からのお答えです。"明日出る"。との事】
あー、まあ、そう言う奴だよね。
ボクとしても早くフィーナをファンナと会わせてやりたいし。
面白そうだから町長さん達の帰りは少し待って貰おうか。




